社会事業研修通信(第五号)
読谷村社協 副会長 知花成昇
研修第一期の二週間はずいぶん長い思ですごしましたが、第二期第三期はいつの間にかすぎて後二週間と残り少なくなってそろそろ「研修レポート」の準備や帰郷後の計画にとりかかっています。第一期の研修科目についてはすでにお知らせ致しましたとおり、社会福祉事業の基礎知識、社会事業行政論、社会保障論等でありました。第二期は社会事業関連科目として心理学と児童心理学、医学知識、社会調査、施設管理、コミュニティオーガニゼーションが主体で第三期は社会事業関係法の解説となっています。
二期三期の各科目については特別に通信として御知らせする事はありませんが特に興味のもてたのはコミュニティオーガニゼーションであります。舌をかむように言いにくい言葉でありますが、日本語訳にはまだ適当なものが確立されていないので普通そのままで使用されているそうです。
地域社会福祉事業とか、社会福祉組織事業、地域社会組織事業とかいろいろ定義されていますから、私達の社協活動もいわゆるコミニュティ、オーガニゼーションの分野に属するわけであります。それで今日は科目の説明は止めまして、第一期~第三期までを通しての研修を綜合致しまして「社協活動」を促進するためにとくに留意するべき点を書いて見たいと思います。文才がありませんので言いつくせないと思いますが現在における社協活動を反省しながら今後の活動方針はどうするか、という事を頭において綴る事に致します。
沖縄における市町村社会福祉協議会が結成されてから既に四ヵ年余を経過し、沖縄社会福祉協議会の熱心な指導援助があるにかかわらず、二、三の町村を除いては全般的にその活動が停滞し、看板刷れや、開店休業の現状であるといわれております。
その原因はいろいろ上げられるようですが、地域全住民の参加協力態勢が出来あがっていない事が最も大きい原因の一つではないかと思います。市なり町なり村なり或は部落なりの住民が社会福祉に関する住民自身の問題を自分たちで考え自分たちの手で解決できるものは自分たちの手で、団体や施設の力を要するものはその力によって、また政治行政の面で解決しなければならないものは社会行動によって、それぞれ解決に導く。そのために住民の代表者、社会事業専門家、非専門家が集まり、相談しあって、無理や無駄を避けながら、組織的に計画的に住民福祉を高める活動を続けてゆくのが社会福祉協議会の一番大切な役割であり、使命だとされてをりまして、社会福祉事業が単なる慈善事業ではなく、その地域の社会福祉関係者および住民が協力して、地域の実情に応じ住民の福祉増進をはかることを目的とする組織であるという理解から出発しなければなりません。このような働きを中心とする社会福祉協議会でありますから、
(1) 専門家や行政にたずさはる人ばかりの協力だけでなしに広く住民の参加を求めなければその役割も使命果すことは困難でありましょう。即ち市町村の実情に応じて、ひろく地域住民が自ら専門家と協力してその地域の福祉に欠ける状態を克服するように努めることが大切なことでしょう。役所、議会、農協、教育委員会、PTA、学校、青年会、婦人会等の参加は勿論、地域の篤志家福祉委員、保健婦、公看、助産婦、未亡人遺族、学童等のあらゆる団体個人各層の参加協力による明るい町住よい村づくりの全体運動としての組織でなければ名前だけの社会福祉協議会となっていしまい、反って荷厄介がられ「あらずもがな」のそしりを受けることになる。事実政府や上級団体にならい組織されている数多くの団体が市町村には結成されてをりまして、新生活実践協議会に生活を守る会、土地を守る会、子供を守る会、防犯協議会、消防協会或は婦人会、生活改善グループ、青年会、四Hクラブ等が市町村部落に結成され、相互において似かよった問題を持ちながら相互の連繁が充分でなかったり甚だしくは反目さえあるやに感ぜられる事例もあって活動も活発でない現状ですから、出来るだけ多くの違った分野の人々が集って多方面から地域社会福祉のニードを測定しなければならない執行機関である理事会や、評議員会や総会が一向に活動しないで一切合切事務局委せにならないように、各団体が相互に集り福祉活動を促進するよう連絡調整の場であってこそ全住民の協力参加が得られることでしょう。
(2) 地域住民が切に要望している福祉活動は何か問題の所在をはっきりつかむ事が先決問題のようです。住民の福祉に欠ける状態は何か、即ち問題の所在をはっきりさせる事により、解決対策をたて解決の努力が進められる組織体制を整えねばならない。地域内で生活苦に悩む人のこと、永い失業で苦しんでいる人のこと、稼き手に死なれ病まれたりしている人、遺族や母子家庭のこと、また進んで児童不良化を防ぎ、或は輪禍から守るにはどうすればよいか、軍労働からはぐれる失業者のこと、児童遊園地の設置や保育所の設置等その地域には解決をしなければならない幾多の問題がたくさんあります。この数多い問題を重点的に計画性をもって実践に移さねばなりません。歳末たすけあい運動、年末取締、青少年不良化防止運動、長欠児童の調査と救護対策、生活改善、節酒運動、環境浄化、未亡人及遺家族援護、防火週間交通安全週間等種々の運動、週間の諸行事の連績を、行事内容のもつ目的使命を達成するためには相互機関連絡調整し理解ある協力が絶対要件になるようです。
(3) 町村社協の会員構成について
社旗福祉協議会を組織構成する会員を全地域住民とするか、それとも関心のあるものだけに限るか、についてはいろいろ議論があるようですが、地域から出来るだけの会員を獲得することが無条件に即社協の発展と見るのは余り理想論であり盲目的であるという考え方もあるようで、全住民会員制を単に会員徴収のための便利として採用するのでなく、地域住民が社会福祉協議会の会員であるとの自負をもつことにより「福祉に欠ける状態」を発見しその対策に協力するに、ある気安さをたかめるような血の通った組織に仕上げる努力が必要でありましょう。沖縄の場合は少なくとも地域内の公的団体及び私的団体は地域住民の支持の上に立つことを前提として地域の利害を代表し意志を代弁するため、関心を持つ代表者が総て等しく住民代表として参加すべきだと考えられます。
特に農村地域の社協の構成は特別に社会事業施設を存していないし、理事、評議員を以て会員を構成している現状であってみればなおさらの事であります。社会事業専門家としての存在がなく、福祉主事、福祉委員が加わっているにすぎないので役員は団体を代表し各職能を生かすことに狙をおいて各層各階の参加が望ましい。
(4) 社会福祉協議会は部会活動をもっと盛にしなければならないと思います。社会福祉協議会を一層活発化するためには社協内部の機構を組織化整備する必要があります。特に種々雑多の問題を持ち数多くの団体によって構成される社協においてはその必要性も増大しましょう。部会を社協活動の推進力として、それを通して社会福祉思想を昂揚し末端まで透参せさることにより相互研究し、連絡し合ってはじめて、かゆいところに手のとどく福祉活動たらしめることができるのでないでしょうか。
(5) 政治や行政の面で解決しなければならないものは社会行動によって解決に導く努力が必要であります。沖縄の社会状態は数多くの「社会福祉に欠ける状態」を持ち悩んでおります。しかもそれ等の多くが政治や行政の力でなければ解決出来ない問題ばかりであります。
一九五三年に生活保護法児童福祉法、身体障害者福祉法のいわゆる福祉三法が公布され、また最近は庶民住宅に対する特別融資を始め失業保険法が公布され一九五九年七月から施行される段階にあり、福祉金庫の新設など貧しい人達を対象とする政策なり構想なりがつぎつぎに発表されて誠に結構であるが沖縄におかれている特殊性はいろいろ未解決の問題を数多くかかえこんでおります。住民経済は見違えるほどに発展しつつあるのですが、基地経済という基盤のもろい不安定性は、依然として大衆のくらしは貧しく、生計費のヤリクリに追われている実情であります。琉球政府社会局の資料(古い資材ではあるが)によると生活保護をうけている者は約二万五千人で最低生活基準線スレ
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