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1960年5月発行 読谷村だより / 2頁

農業経営について

農業経営について
(農務課専門普及員眞栄里豊太郎氏の講義より)

 私は農業経営という題目をうけ皆様の望む話となるか、いささか心配であります。本旨に入るまえに、私達の農業技術が、どの様にして今日の域まで向上させたかということでありますが、これに対しては政治の問題、政府や農業技術家は勿論であるが、これ以上に働き実績を残したのは直接の農業実践者であられる篤農家の皆様であります。読谷村にしても数多くの実績があり甘藷の長浜や暗川佐久川、甘蔗の読谷山種等は読谷村又琉球の産業史上輝かしいものだと思います。
 農業技術発展は前途したように政治の問題、政府、技術家の力は勿論であるが農家自体の自発的行為によって得られる技術は実に大きく有望なものであるということであります。
(一) 琉球農業の現実の姿現実の琉球農業の姿はどうであろうか私達がなにごとの行いをするにも、足もとをよく理解することから始まります。琉球の現実の農業を日本や世界と比較して考えてみましょう。
 デンマークという国は世界で有名な農業国であり、農業が進んで酪農国となりそれを加工する工業が発達して工業国となっていることは皆知っているとおりであります。表に示すとおりデンマークは国土に対する耕地利用率は六○%で、沖縄一六%、日本一五・七%となっています。
 沖縄の場合、軍用地という特殊な条件でありますが耕地に利用出来る荒蕉地、原野がありますので耕地拡大に努力しなければならないと思います。
 デンマークが国土の六○%も耕地に利用し世界一の農業、酪農国となったことはどこにあるのかと申しますと政治、教育、宗教の三者共に農業を中心とした政治、教育、宗教でありこれが大きな原動力となっていると考えられている。
国土に対する耕地の利用率
デンマーク 六○%
イタリー 四九%
フランス 四一%
ドイツ 四○%
アメリカ 一八%
沖縄 一六%
日本 一五・七%
ソ連 一二%
カナダ 三%
豪州 二%

 表に示すとおり沖縄の耕地利用率が一六%という低い原因はどこにあるかと考えると、軍用地の問題は勿論であるが孤島にして自然的条件に恵まれず幾多の難点があるということであります。
 農家一戸当の耕作地の規模は戦前五反で戦後は四・三反に縮小されています。この規模の拡大は各家庭における労働力や地域による条件等でいろいろな問題がある。
 では沖縄の労働力について考えてみましょう。沖縄の農家の生産力を考えると一年に一人の生産力は日本の農林統計の資料によると生産力を主食に換算して、沖縄○・三屯、日本○・六屯、アメリカ十屯という数字が出ています。沖縄の○・三屯を一として日本の○・六屯が二となりアメリカの十屯は三三・三倍となって沖縄の生産力の乏しさ、労働力の低さを示すものである。
 この琉球農業の低位生産性の原因はどこにあるのでしょうか。その一つとして自然的条件に恵まれていないということである。三大暴風巻の一つの孤島で地型も沖縄という文字のごとく縄状になっているため水利に乏しく、かようにして自然的悪条件下にありながら今次大戦で国土は焼土と化し農業経営に大きな障害となっている。
 その二として農業技術の不振が上げられる。その原因として
(一) 科学を取り入れていなかったこと。
(二) 指導者が日本人で日本の土質、風土(自然的条件)とことなったため指導が適当でなかったこと。
(三) 地力が乏しいこと。
(四) 農家自体の自覚の不足
等が上げられる。
つづく
〃次号琉球農業の進むべき途〃

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