〔49号1ページの続き〕
す。
村長は予算原案をつくるに先だって自分の政策目標をいかに実現するか、そのために年度計画から本年度の予算編成のねらいをどこにおくかと一応自分の政策の再検討を行うのであります。経済発展と教育振興という基本的政策から出発した多くの問題の中から、前年度の実施状況や政府の予算編成方針とも照らしあわせ、予算編成方針をつくりそれを役所内各課係に充分理解せしめるために関係者を集めみずから説明し、また意見を聞いて討議を行い趣旨の徹底を図って各課係に予算要求書の作成をせしめ、要求書の査定調整を行い予算原案を作成するという順序になります。勿論予算編成は村長だけが持つ権限だといっても、自由奔放ではなく、いろいろな関係法令、条例、規則によらねばならない事は申すまでもありません。また住民の代表である議会の議決をうけなければ執行することが出来ません。
役所で出来上がった予算原案の審議を議会に御願いするにあたっては、いかなる基本的な方針で予算を編成したかという、いわゆる施策の方針を明らかにし、審議の資料として前年度の行政状況報告書や財産表、予算執行状況調その他資料を整えて議会への提案となるわけであります。
以上予算案の出来るまでの極く大まかな処を申し上げまして新年度予算の内容説明に入りましょう。
先づ才入説明から申し上げてみます。今年の才入予算は、総計予算主義の原則(総ての年度収入を総て年度収入として計上すること)に則って緻密な計算の基礎と前年度の実績に見合して総ての収入を才入として予算化したことで、これは前に述べました例年最終追加更正予算で追加計上しました戦災部落復興助成金とも関連する問題で特筆すべき事柄であります。そのような次第を前提としました才入予算を款別に説明を加えて記述してみたいと思います。一款の村税収入は村税条例の一部改正を提案して実質的な減税処置を講じました。皆さんも御承知のとおり軍用地の賃貸料を相当額増額になりましたので村民税の基礎控除額従来五○弗であったのを七○弗に、扶養、寡婦、老人、勤労学生、不具者、控除従来の二○弗を四○弗にそれぞれ引上げて、今迄の負担額位に(総体的)にとどめる考え方から税条例の改正をしました。ちなみに申し上げますと今迄の条例どうりにしますと、村民税だけで約一、二○○弗の増額が見込まれることになります。それで従来の税負担額との均衡或は税外収入等と比較検討した結果諸控除額の引きあげ改正案を提案しましたところ議会も本件には特に関心を寄せて慎重に御審議を戴き原案通りに議決をみて本案によって予算計上ができて総予算額一四○、一二五弗の内村税の構成比が僅かに八、五一%の示すとおり直接村民の負担額が少くて十四万余弗の事業計画が執行できることは皆さんと共に大変喜ばしいことだと考えています。
次に市町村交付税でありますが、その前に市町村交付税とはどういう性質のものであるかを極く簡単に述べてみますと琉球政府が一定の基準によって全琉各市町村毎の収入と必要な経費(支出)を計算して出してみるのであります。その方法で計算した収入額が、必要な経費に足らない額を「財源不足額」としてその不足した市町村に交付するものでそれを市町村交付税と云います。現行の市町村交付税法では右の方法で算出した財源不足額が本村の場合一七、○○○弗と云うわけであります。交付税額が大きいことは右のような訳で対外的には余り自慢にならない性質のものであることを付け加えておきます。
財産収入に移りますが、財産収入には有価証券の株式配当金が二、八○○余弗でその内訳は、琉球銀行、三和相互銀行の株券、琉球海運、琉球石油、沖縄配電、比謝川配電、各株式会社の持株分の配当金であります。琉球海運の五%を除いて各会社共一ヶ年間に払込み金額の一割二分の率で配当金を計上してあります。次は地所賃貸料でありますがこれは村有地で軍用地に接収されている土地の軍用地料で、一年間に二四、○○○弗あります。新土地計画によって契約しまして中断なく現在も支払い(リスト別)つつありますが特に今年は一ヶ年半分計上してあります。それに個人に村有地を貸してありますのでそれを加えて三六、五○○弗となっています。預金利子の三、○○○弗は毎年度剰余金があるときに将来の財政企画又は不時の災害等に備えて読谷村基本財産造成基金積立金条例に基いて積立ててある基本財産積立金が五五、○○○弗ありありますので、その預金利子の収入であります。本項は村有財産の収入で皆さんもとくと御諒知戴くために特に稍々詳しく述べました。それは又当然御知らせすべきものであり、それが皆さんの御理解を深めて御協力を得るゆえんだと考えています。四款の使用料及び手数料は行政証明の手数料と使用代価の使用料であって従来の実績から計上しましたので反復を避けて省きます。次に政府支出金でありますが、普通、一般財源と特定財源に大別されますが政府支出金はその区分上特定財源と呼ばれ政府から出されるもので何々に使いなさいと使途が決められているのであります。これは或る程度市町村から申請によって左右されますが、政府と市町村は会計年度区分は同じでも予算効力発生の時期(議決)の期日がアンバランスで、例年追加更正予算を編成して執行すると云う、止む得ない現状であります。
先にも述べましたように政府事業でなすべき問題については事業年度期間中鋭意努力する覚悟であります。繰越は今年九、○○○余弗計上してありますが残余の整理期間中に事務整理を完全に整えてまだかなりの剰余金があるけれども若干の余裕をもって年度中における予期しない急施の事業に備えておくのが適正な方法であるゆえんであります。
雑収入はその名の示すとおり多種多様でありますが、そこで特に申し上げなければならないのは、村預金利子と雑収入で受けている、俗に云う無地番の軍地料であります。村預金利子収入の二九二弗は才計現金といって才出予算の準備金であります。村の大きな台所のお金であり又公金でありますので、役所においてあるのは危険であり、また一日でも金融機関に預金して利殖を大きくするのが、より賢明な方法であります。そのように年度中、常に、二万弗のお金を普通預金にしておきますので、それの日歩四厘の一年中の預金利子の分であります。次は無地番の軍地料の五万三千余弗の金額であります。もっと具体的に申し上げますと、読谷村の無地番の軍賃貸料は、一年分で、五万三千二百二十八弗であります。無地番地料とは、軍用地内の道、溝、畦道、排下水路等で個人の所有の、田、畑、宅、山林、原野、池沼とかを除いた、誰のものでもない分、つまり所有者のない分の地料であります。
これは何れ次号で詳しく述べる心算でありますが、戦災部落復興助成金として、各字に出してあるのは、この無地番地料が財源であります。
以上才入について、御説明しましたが当初に記したとおり、総計予算主義で全収入をもって編んだ今年の才入予算は読谷村の限界の予算だと考えています。予算編成は先づ才入予算の規模によって才出予算をもっとも重点的に、且効果的に編成する建前でありますので、才出予算も亦絶頂迄到達したとは云えませんが大巾な才出規模といえると思うのであります。斯様に編成される六一年度予算の大綱を知って戴き、村民の全部が村治の要と云われる予算執行に参劃下さいまして本年度もまた限りなき村の繁栄を希う次第であります。話しが一寸それてしましましたが本号は才入説明をもって終わりまして次号から才出の説明に移りたいと思います。