日本脳炎について
一、媒介する蚊は小形赤家蚊(幼虫の発生場所は池、沼、水田)と稀に赤家蚊(下水、汚いどぶ、肥尿溜等)
二、病原体は濾過性病原体で日本脳炎ヴィルスと云われ病毒としては最も小さい方で二○ミクロンから三○ミクロンとされています(一ミクロンは一ミリメートルの一○○万分の一)
三、潜伏期間は四日から二○日(未だ判然としない)或は七日という説もある(不詳)
症状
一、前駆期・・・二四時間から四八時間の間
(イ) 頭痛・・・全頭痛(他の病気は大抵片頭痛が多い)
(ロ) 発熱・・・C三八度から四○度の間(他の病気は除々に高熱に達するもこのものは発病後一日又は二日で急に高熱を発する。)
高熱のまま四日から一週間続く、大抵の者は発病してから六日目位で参ってしまう。
運の良い人は六、七日目頃から体温は除々に下降して一○日若しくは二○日位で正常体温となる。
(ハ) 頸部強直・・・頸筋がこわばって頸部を曲げたら痛みや苦痛を感ずる(この症状は他の脳炎も皆同じ)
(ニ) 嘔吐や嘔気が時々起る
二、初期微候・・・期間は一日乃至二日間である。
(イ) 頸背部の強直・・・頸や背がこわばって曲げると痛みや苦痛を感ず
(ロ) 嗜眠状態に入る・・・或る一定の強さの刺戟を加えると反応し目をさます其の後精神混乱を来し或は感覚の阻害を来します。
(ハ) 言語に障害を来し判然と物を云えなくなる、何を云っているの分からない位で丁度酩酊様談話をなし即ちよっぱらいが話をしているようである。
(ニ) 無表情状態になる・・・即ち仮面を被った様な顔面表情をなす。
(ホ) 神経機能の障害を来す。
a ブルゲンスキーの反応を呈す。
仰臥位にして頭を胸の方へ曲げると股関節、肘関節に於いて下肢を曲げ又肘関節を曲げる。又腕の上昇運動を来す。
b バンビンスキーの反応を呈す
足跡の外側に近い所を強く、ゆっくりとこするとき母指の背届と同時に足跡側の方向に屈曲する
c ケルニッヒーの反応肢関節と下肢を曲げる状態で大腿部と下腿部との角度が一三五度以上に開くことが出来ない。
軽い場合は神経性変化は起らない或は瞬間的、短期間として過ぎる。
三、晩期
(イ) 嗜眠状態から亜昏睡又は昏睡状態に入るこれは如何なる刺戟を加へても中々目をさまさない状態です。
(ロ) 顔面筋肉の片衰弱と舌の筋肉の衰弱を来す斜視を伴う眠瞼下垂を来す。
(ハ) ひきつけを起し、よだれをたらすようになる。
経過
死亡する者は七日から十五日位迄に死亡し、全治する者は二○日前後が最も多い。