読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1966年3月発行 読谷村だより / 2頁

式辞 

〔107号1ページの続き〕

できまして御来場の皆様に深く感謝申し上げます。
 尚本日は先ほどの審査報告や賞品授与が行なわれましたように、農家の皆様が過去一ヶ年間、よく研究しせつせと働いて作られた堆肥甘蔗、甘藷、馬鈴薯、煙草蔬菜、マシユルーム、手芸品加工品等の競作会や展示会を開きましたが、この共進会にたくさんの方々が参加されまして、明日の農業をめざして、とつくんでこられた皆様の御努力に対し深く敬意を表すると共に本日優秀な成績を挙げられた個人及び団体の皆様に心からお祝を申し上げます。
 さて農家の暮しをよくし村経済の振興を計るために一九五一年から産業共進会を催し、今年までに十六回目を迎えました。また砂糖の貿易自由化に伴い沖繩の農業はいやがおうでも構造改善をしなければならない時期に至りました。それで当村も農業振興計画を立てて、新しい農業への目標を立てたのであります。
そのような方針のもとに推進した振興計画もやがて二ヶ年を終ろうとしておりますか、今までの成果は上がつたが、どうかについて、この機会に検討を加えたいと存じます。
 先ず主要作物の目標については、甘蔗作面積が四六、八〇〇アールに対して今年は五一、〇〇〇アールで四、八〇〇アールも増えた反面収量においては一〇アール平均七、二五〇キログラムの目標が六、六〇〇キログラムの予想にして目標にずいぶん差がでておりますが、その原因は株出面積の増大によるものといわれておりますから株出の管理面に一層の御努力を要します。また甘藷、煙草のほうはまだまだ反収目標に達しませんからもつと努力して下さい。馬鈴藷のごときは主産地をめざして政策的な面でも力を入れてきましたが、今年は病害がひどく不作となり、私もその責任を痛感しています。
 とかく反収の引上げは、いかに耕動基準栽培を守りそれに向つて努力するかがかんじんですから、今一度農家各位の御努力をお願したいと思います。
 次に家畜の場合は、基準年次において、豚が五、二〇〇頭から九、九〇〇頭になつて本年度目標を突破いたしました。この調子なら終年次の一九六九年には、 豚価の著しい暴落がない限り一五、〇〇〇頭の目標達成は可能であり、豚の主産地として農家のふところを豊にしてくれるものだと思います。特に畜舎を改善し優良品種の改良増殖に力を入れ、多頭飼育と自給飼料による粉飼が増えたことは肉質を良くし生産コストを軽減する上から最もよろこばしいことであります。
 肉牛のほうは一昨年の一五八頭から現在も一六〇頭にも足りず今年次目標の二〇〇頭も達成できず、最終年次の五〇〇頭には、かなり困難性があると思われますので今後は政策面から、或は農家各位の経営面についても大いに研究を要する問題だと思います。
 次に近代化農業のあらわれとして、村内に酪農経営が始められたことは、特筆すべき事業であります。
 住民所得が増大するにつれて、食品の構造が変り動物性たん白質や乳製品の需要が大きく伸びて来て、酪農は有望視されておりました。それに着眼して、楚辺に酪農組合が誕生し、今年の新春早々、宮崎と鹿児島か四五頭の乳牛を導入していよいよ酪農経営が進められました。
 甘蔗の梢頭部は大家畜の飼料に使い、また成分の高い牧草を植え秀れた飼育法方を勉強されて、是非儲けてもらいたいと思います。
 次に今年から全村的に奨励した、マシュルーム栽培については新しい産業でるために、コンボストつくりから種苗植付、収穫に至るすべての技術を指導するのに予想以上の日時を要しました。そのせいか本年度目標の四〇〇〇坪に対し一三〇〇坪の実績にして栽培成績も好況とはいえませんが換金度の高い美味しい作物であり、堆肥原料は甘蔗の枯葉でよいし、管理は婦人のほうで出来ますし家庭の副業には最も適していますから、来年度は、こぞって栽培せられるようおすすめいたします。
 尚今のところ那覇の工場に出荷しておりますが、来年度から高志保バスセンター西側に工場が出来ますので本格的な産業にしていきたいと思います。
 それから一昨年来多幸山の村有地につくりました果樹園も、いよいよ計画化されつつあつて、ミカン、バンジロ、モモ、スモモ、ビワ、サクラ等の苗木も只今育苗中であり、村民の需要に応じて皆様の宅地に植える日も遠くはありません。
 また近いうちに果樹に適する土地を集団的に果樹園に変えて時代の要求する農産物の展示圃をつくって、団地造成の原動力にしたいと考えています。ここでいろいろの果物や花木類を育てて、宅地の利用を高め雑木林であつた村有地に果物や亜熱帯植物を作つて行く行くは村の財源をうるおし、人々の楽しめる産業観光地をつくりたいと考えております。
 さて農業振興の上で、一ばんの問題は軍用地内耕作地が多いことであります。黙認耕作というものは、農業基本施設もつくれず、毎年のように、農作物の撤去や、耕地の明け渡し、軍事演習時の立入禁止等の悪条件があつて農業振興上、大きな壁となつております。
 しかし農家の中には、祖先から受けついだ土地だから、耕すとか、守るとか、いつて荒蕪地にしたり、また四、五ヶ年も甘蔗の株出をつづけて、草畑か、甘蔗畑であるか見分のつかない畑もあるから困ります。
 その原因は手不足とか職業の関係等いろいろあると思いますが少ない耕地を高度に利用出来ないことは、村全体として大きな損失でありますから土を愛し農業を本職とされる方々に貸すか譲るかして、経営規模を拡大し農業収入を高めて貰いたいと思います。
 それではこのへんでは材財政と納税について、ふれて見たいと思います。
 まず本年度の予算総額は一般会計にして三五六、四四八ドル、水道事業特別会計で五九、八八〇ドル、計三一六、三二八ドルの膨大な規模となり、村民一人当り一四ドル五〇セントの予算になりました。
 経費面の主なるものは全村にわたり、年次的に推進中の水道事業費、積極的に近代化農業を進めんとする産業経済費、われわれの村はわれわれの手で円滑な行政を執行するための役所費村民の日常生活を便利にし快適にするための土木事業費、病気をなくし、健康な村をつくる為の保健衛生費等が主なる事業であります
 一方収入財源の面では、先輩為政者により築かれた貴重な財産収入、市町村の健全な運営のために政府から交付される市町村交付税水道料金、所得のある人財産のある人の能力に応じて賦課徴収された市町村税等が主な財源であります。
 納税成績については、先ほど申し上げた審査報告のように、村民税から固定資産税、事業税、不動産取得税、それから教育委員会に交付する教育税等について村内には一人の未納者もなく、納税優良村の美しい伝統を堅持していることは、村民各位と共によろこびに堪えません。
この上は有効適切に予算を執行し、明日の新しい農業をうち立てて、全村民の生活を豊かにし、平和で明るい住みよい村、生活発展する読谷村を築くべく最善の努力を払いたいと存じます
 最後に、これまで当村のために、いろいろと御指導御支援下さいました琉球政府のお方々、歴代先輩の皆様、村議会、村農協、教育関係者、各部落、婦人会、青年会、生改グループ、其の他の団体各位に対し厚く御礼申し上げて式辞といたします。

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