1967年度施政方針
一九六七年度の予算審議を要請するにあたり、新しい年度における施政の概要について述べたいと思います。
私は、一八六二年十二月村長に就任し、やがて満四ヶ年を迎えます。その間、市町村自治法の精神に基づき産業の振興、 民生の安定、保健福祉の向上、健全財政の確立、教育文化の向上を村政の基本方針とし、平和な豊かな明るい村づくりをめざして、村政を担当してまいりました。そしてその基本方針を貫ぬくための具体策として、農業振興計画全村水道計画、果樹園造成計画、民芸、花織の再興、保育所建設、役所事務の合理化等その他いろいろの事業に着手して来ましたが、議会及村民各位の建設的な御協力において、いよいよ着実な運営を続けておりますことは感謝に堪えません、そこで残り少ない任期ではありますが、初期の基本方針を貫き、村民福祉増進に向つて、民主的に能率的な村政を担当したいと存じます。
その公約を実行するために一九六七年度予算は、一般会計において三八四、九六四ドル、水道事業特別会計に九六、七五八ルドで、計四八一、七二二ドルを計上し、前年度に比べ一七八、五六九ドルという膨大な予算の増額を示しておりますが、その原因は、地方教育財政再建のために、教育委員会法、市町村税法、市町村交付税法の改正が行われ、教育財政が市町村財政に一本化されたのが主であります。
しかし、躍進を続ける現代社会に対処する本村の財政需用は実に大きく、尚多額の予算を必要とするが、財源の都合により、本年度は重点的に価値の高いもの優先するものを考慮して、新年度予算を編成した次第であります。ではこれから各部門にわたり、本年度の抱負について述べることに致します。
産業振興について
沖繩の農業は近年向上したとはいえ、他産業との格差は依然として大きく、農業をとりまく客観性勢はますますきびしくなりつつあります。特に基幹作物である甘蔗作については、昨年期よりブリツクススライド制が廃止され、良質甘蔗の産地たる本村農家の打撃は実に大きかつたと思いますスライド制がなくなれば従来の品質重点の甘蔗作から重量単位となつて糖業合理化にマイナスになり、良い甘蔗も悪い甘蔗も同一値段では、どうしても納得できないのでスライド制の復活要求に努力すると共に、これからの甘蔗作については耕種基準栽培をすすめ、病害虫駆除の徹底を期して甘蔗作農家の安定を図りたい。
尚本村は一昨年より農業振興計画を樹立し適地適産の事業、生産性の向上 農業経営の合理化について積極的に推進し、特に換金度の高い、馬鈴しよ、マシユルーム、養豚、酪農の主産地にすべく、鋭意努力して来たが、引き続き本年度もこういつた方向で強力に推進していきたい。そのために長年開催されて来た村の産業共進会を試験的にとりやめて、農家及農業関係団体の実施指導を重点に村農協と提携し、部落共進会を奨励して農業振興計画の成果を挙げ、村民経済の振興を図りたい。
又全村民の最大の関心事である村営果樹園事業については、本年四月、第一次果樹園造成計画を策定して全村民に果樹園芸の普及を計ること、村財源を造成すること、産業観光地を造成して、村民に憩の場をつくりたい。
という目的をもつて、果樹園事業を推進中でありますが、現在この地域は軍用地であるために、いろいろの制約を受けているので、一九六九年を目標に軍用地の解放を期して、近い将来本村の名物をつくり、果樹園芸の主産地にしたいと考えております。
建設事業について
土木事業とか、水道事業については、軍及び政府事業に関するものと、村独自の事業がありまして、政府事業に予定したものは、十二号線の巾員拡張と側溝施設、六号線の側溝工事、高志保部落内の排水工事、大湾部落の暗渠、比謝橋の排水施設、渡慶次と高志保の農道工事を申請してあるので、その実現に努力したい。
村営事業としては、昨年実施した村道のタール鋪装工事の成績も良好につき、本年度も引続き大木線のタール鋪装を計画し、併せて高志保線、大木~比謝線の側溝工事を施工し、村道を立派に整備すると共に、座喜味、伊良皆、宇座、三ヶ所の失対事業、波平、渡具知、比謝橋の部落内の排水工事及高志保、楚辺の道路工事を施行したいと計画しております。
水道事業は一昨年の全村水道計画により年次的に推進して来たが、いろいろの事情により、一九六六年度に計画した南部水道が遅れたことは誠に遺憾であります。そこで本年度は南部と北部の水道施設を一度に施工すべく計画しており、本年度を期して全村の水道施設を完成したいと考えております。そのために事業量が増大するので、水道課を新設して水道事業の施設整備と運営に万全を期して推進したい。
教育の振興について
一九六五年八月立法第九九号により教育委員会法が一部改正され、十四年間にわたつて実施された教育税を廃止して、市町村税に一本化されると共にその財源は、市町村交付税によつて市町村の一般財源に含められるようになつた。そして市町村の収入を財源として教育費の負担を市町村議会において決定し、これを区教育委員会に交付するという制度に変りました。しかし、教育区は従来通りであるから、市町村長に全面的な教育の責任はないが、財政権が一本化され、予算の調整権をもち、議会に提出する権限が市町村長に与えられるようになつたので村長にもかなり教育の責任があるものと思います。よつてこの新しい制度により教育委員会の予算見積を調整した結果、学校教育費、総務費、幼稚園費、社会教育費、諸支出金、予備費等の通常経費は勿論のこと、読谷小学校の図書館建設、読谷中学校と喜名小学校給食施設、渡慶次幼稚園舎建築その他各小中学校の基本施設を整備すべく本年度の教育費負担金を七万五千ドル計上いたしました。
ところで今年度より施行された、改正教育委員会法はかなり問題点があつて、その運用についてはいろいろの困難性もあるが、要は教育の民主化、地方分権化教育の機会均等の精神を貫き、財政強化を期して教育の振興を図るために制定された新しい制度であるから教育委員会、村長、議会一体となつて高度の教育効果を挙げるべく努力したいと思います。
尚、教育の成果を挙げるには学校教育は勿論のこと社会教育、家庭教育も重要であり、幼児教育も大切であります。又児童福祉法の精神に基き、保育に欠ける児童の育成のため、更に村民の強い要望に応えて、南部に保育所を建設する計画であります。
それから村体協の要請により、村の中央運動場建設のためにこれまで年次的に補助してきたが、引き続き本年度も実施し、村の中央運動場を整備して、スポーツの振興を図りたい。よつて社会環境浄化を目ざし有害環境を取り除き、青少年の健全育成を期して教育文化向上を図りたい。
行政区の改革について
昨年私は行政区の改革について、その必要性について述べ、村民世論を注目していたが、その気運も高まりつつあると見て本年度から本格的な作業に取りかかりたい。しかし従来の旧