読者のサロン
詩
島 太郎
ことづけ
今日面会の持って来たことづけ
誰、彼からと言って
包より一つ一つ取り出したわたしは
その、ことづけの美しさ
背なかで泣いていた、あの面、この面が
瞼をはなれず、涙が先になり
わたしは 何までも その、ことづけを 抱きしめていた。
俳句
キビの秋
食ふよりも作るのが好きで トマト植う
キビの花制繩機音その中に
秋風や、お茶一杯に励まされ
秋野来て帰りたくなきキビの出来
キビの秋草食む馬の肌匂ふ
蒔き残したる大根の種を蒔く
マイマイの幾十のなか芽を間引く
涙だ目に文字も曲れり初便り
甥達の太きかなや冬ぬくし
生きのびて良きこともあり今朝の春