厚生文化都市をめざす 読谷村経済開発基本構想(ハ)
読谷村経済開発基本構想について、二回にわたって説明申し上げましたが、今回は二部産業計画の商業育成の基本姿勢について説明致します。
一、商業育成の基本姿勢、
読谷地区内における商機能は地域住民へのサービスを第一とするものであることはいうまでもない。このような視点から現在及び将来の人口分布、交通量を考慮した地区商店街の造成が望まれよう。地区商店街はコミュニティーハイレベルの最品をはじめとするショッピング需要を満たす規模と内容のものでなければならい。したがって、これまで他の市町村に依存していた商品でも一部の需要の低いものを除いて地区商店街で提供することになる。
一九八五年には人口五万人となり、就業人口構成も、レクリェーション産業を柱とした第三次産業が主となる。文化厚生都市の需要を十分処理できるような商機能及び他のコミュニティ機能を集積したコミュニティーショッピングセンターとしての地区商店街の造成を図るものである。
将来読谷村が厚生文化都市として整備されれば、外来者がレジャー客として多数読谷村を訪れるので、これらのし的に小規模の工場が進出してくる事が予想されるが、こういう業種の小規模工場が無秩序に配置されるのは好ましくない。読谷における工業の立地は次の点に留意すべきであろう。
(一)公害型の工業でないこと (二)スプロール化を抑制すること (三)工場や住宅や農地との混在を来たし、環境を劣悪化させないこと。
読谷村及び嘉手納地域内において将来期待される工業立地の可能性としては、むしろ嘉手納空港が民間用に転用された場合の臨空港工業の方が大きい。これは高い航空輸送に耐えうるような高価な製品製造に当るレジャー客に、サービスを提供する商店街を計画しなければならない。 この商店街の造成を図るに際しては、次の事を配慮することが必要である。
(1)対外的に読谷の顔となる
(2)ショッピングが楽しめる
(3)特産物の宣伝と販売を行なう
(4)格調高いカラーを持つ
二、工業育成の基本姿勢
現在読谷地域にある工場は規模が小さく、将来における工業成長の大部分は新しく誘致される工場による生産に起因するものであろう。読谷は大那覇圏の北端にあり、沖縄の主要道路である一号線にあることを考えるといずれ、スプロール工業で組立系の業種を中心としている。精密機器や電子工業がその主なものであるが、消費の高度化にともない、高級衣料品等も航空貨物輸送を利用するようになっている。
現時点では読谷村に誘致すべき工業は厚生文化都市のイメージに相反しないよう業種と立地場所を限定するのがよい。読谷地区への誘致に適当な業種としては電子工業、高級織物、食品加工などが考えられる。
三、観光開発の基本方針
読谷村において、厚生文化都市機能重要な一部としての観光、沖縄本島中央部に位置する地域として沖縄本島の地域分化の中で、特色ある観光地形成を前提として、次の四点を観光開発計画に当っての基本方針とする。
(1)高密度労働社会における個人の知的、肉体的精気の回復を図る保養の場、情報革命時代における研修の場を情澄な自然の中に建設して、観光と教養を結びつける。
(2)観光資源としての自然の保全及び改善に努める。
(3)好ましい文化景観の育成を図る。
(4)高級観光地としてのイメージ作りを志向して観光の行すぎた商業化を防止する。
四、地域経済の将来
(1)産業構成と就業構造
以上各産業の基本方針を検討したが、このようなビジョンやアイデアを生かした産業計画が推進された場合、読谷地域の将来はどのようになるということについて、産業構成や、所得の面から検討してみたい。しかし、地域経済の将来は、条件の変化によって変わりうる要素が強いから計画的に把握しがたいものであるがおうまかに推計すると次のことが言える。
一九七〇年現在の読谷村の産業構造と就業者の面から見ると、
第一次産業二三パーセント
第二次産業一八パーセント
第三次産業五九パーセント
で大体全琉平均の構成と割合と同じである。
琉球政府の策定した「長期経済計画」によると一九八〇年度を計画目標年度としているが、その年度の産業別就業者構成は、
第一次産業一四・六パーセント
第二次産業二八・一パーセント
第三次産業五七・三パーセント
と予測している。
昭和六〇年を計画目標年度とした「新全国総合開発計画」によると、その経済のフレームの頃で、その年度の日本産業別就業構成を
第一次産業九・九パーセント
第二次産業四三・六パーセント
第三次産業四六・五パーセント
と予測している。
以上のような琉球政府と日本政府の計画を参考にし厚生文化都市としてのイメージのもとに一九八五年の読谷の産業別就業者構成を
第一次産業約一〇パーセント
第二次産業二〇パーセント
第三次産業七〇パーセント
と見込んだ。
一見すると、第三次産業に偏重したかに見えるが、観光農業、観光漁業、文化研修センター等、第一次産業と有機的に結合された第三次産業であるのみで、みかけの数字以上に偏った経済構造でなく、産業間の立体的な統合経営が推進されるものであると考える。
(2)所得水準
一九七〇年現在の読谷村と嘉手納村の村民一人当り国民所得を推計すると読谷村六四二ドル、嘉手納村八〇四ドルとなる。これは全琉平均の八三%、一〇四%に当り、総体として、全琉平均より低いものとなっている。政府の「長期経済開発計画」では、昭和五五年度には、現在の県民一人当り所得を二~三倍にした約二、五〇〇ドルを目標としてかかげている。
経済企画庁の「新全国総合開発計画」では、昭和六〇年度の一人当り国民総生産を、三、〇〇〇ドル~三、五〇〇ドルと見込んでいる。
仮りに「新全総」の見込むような水準に読谷経済がレベルアップすると考えると
①人口5万人規模を基準とすると一億七千五百万ドル(GNP)
②予測値では相当の開きが出てくるのが大体一億六千万ドルと見込まれる。