新春を迎えて 村長 古堅宗光
謹んで新年のお祝詞を申し上げます。
村民のみなさん明けましておめでとうございます。
一九七二年の元旦は、祖国の施政権が及ばなかった米国統治最後の元旦でありまた、同時に祖国復帰実現の新らしい沖縄の出発を迎える元日となるでしょう。
一九七二年は、沖縄の歴史が大きく変化する年でありますので、戦後二六年間過してきた元日とは、また別の観点から新春を迎え心新たにしたいものです。
一九七一年は、沖縄にとりまして暮れの沖縄国会に象徴されますように、正に激動の年でありました。
二六年間の変則的米国統治を清算するには、二六年間の時がもたらした禍根は余りにも深く広く、沖縄返還協定で完全に清算することが如何に困難であるか、問題の複雑さを痛感します。しかし、一九七二年中には必ずや祖国復帰は完成するでありましょうから、村民のひとりひとりが、それぞれの立場から、生活が、職業が、家業が、その他身辺がどのように変化するかあるいはまた変化をきたさないものは何か、そして、それらにどういう心がまえをすべきか、どういう対策を準備すべきか、真にみずからの問題として考えていただきたいと思います。
そうした前もっての適切な対策と、心がまえをもって、県民が希望する返還期日(一九七二年四月一日)を不安なく平穏のうちに迎えたいものであります。
読谷村におきましては、一九七一年は国際海洋博覧会の残波岬誘致に始まってとうとう年も暮れてなお最終決定をみないまま新年を迎えましたが、実際に沖縄国際海洋博覧会の会場建設は一九七三年の春頃から開始されるとのことですが、巷で聞かれるように現在軍用地であることが、会場として条件が悪いということにはならないので、沖縄国際海洋博の残波岬地区誘致を今後も強く推進すると共に、日本政府通産省が構想している読谷地区工業公園計画の実現についても、琉球政府御当局と十分連繁を深め、今後さらに努力を重ねて行きたいと思います。
なお、一九七二年は復帰の年になりますので、たくさんの法律、制度等の準備移行、その他復帰対策のため、役所事務はたいへんな量と内容になると予想されます。
また、一九七二年は、読谷村の開発振興の方向(海博・工業公園構想)が左右される重要な年でありますので、村民の深い御理解と御協力を切にお願い申し上げます。
最後に、申請沖縄の門出一九七二年の新春を心からおよろこび申し上げて新年のご挨拶といたします。
新年の挨拶 議会議長 知花平良
内外ともに震撼させた激動の一九七一年も光陰矢の如く夢の間に過ぎ去り、ここに希望に輝き新春を迎えるにあたり、村民各位に謹しんで新年の御挨拶を申し上げます。
村民の皆様明けまして、おめでとうございます。顧りみまするに去る年は全く内外ともに震撼させた激動の年であったと思います。
沖縄県民の願いであった完全無条件復帰は叶えられなく、去る六月一七日に当時の愛知外務大臣、アメリカのロジャーズ国務長官によって調印された返還協定は、われわれ県民の願いには程遠いものであり、必ずしも県民にとって満足するものではないが、その協定が両国の国会において批准されたこと、又アメリカの経済政策としてニクソン大統領のドル引締め、金とドルの交換停止の政策により日本経済の不況、その影響によってドル経済圏内にある沖縄住民の損失、毒ガス撤去問題、本村においてはウトン川の弾薬処理による事故、ジェット訓練機の墜落事故等必ずしも最良の年とは言えない多事多難の年であったと思いますが、禍い転じて福となす、との諺のとうり今年こそ村民にとって最良の年になるよう最良の年になるよう最善の努力をつくさねばならないと心を新にするものであります。
われわれ県民が復帰協定に不満であろうと、なかろうと、両国の国会において批准され、来る四月か七月頃には復帰することになると思いますが、復帰後はいろいろと困難な諸問題がわれわれの目前に到来するものと思慮されます。
例をあげますと、国会において採択された復帰関連法の執行、特に、その中の公用地暫定使用法による軍用地の再契約問題、ドルと円の交換、基地依存の中においての本村の開発、海洋博や、企業誘致問題等、復帰後は勿論本村の進路は多事多難のものであるとおもいますが、この激動する諸情勢に対処して、われわれはおな奮起し、新年頭初から村長を中心に全村民が益々信頼を深く永続させていくことによって、総ての難問題を解決し、希望に満ちた輝かしい夜明けを迎えることができると信ずるものであります。
われわれ議会も復帰後の明るく住みよい村づくりのためには色々の難問題を勇断をもって解決して村民の意思決定機関としての責務を果たすことをお誓い申し上げます。
何卒今年も村民各位の倍旧の御指導と御協力をお願い申し上げます。
常磐なる松の緑も春来れば 今一しほの色まさりけり
ここに希望の新春を迎えるに当たり村民各位の御清福と御繁栄を心から祈念致しまして年頭のご挨拶といたします。