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1972年8月発行 広報よみたん / 6頁

海外移業住団作文コンクール入選作品 私が住んでみたい国 古堅中学 3年 比嘉房江

海外移業住団作文コンクール入選作品 
私が住んでみたい国 古堅中学3年 比嘉房江
 私達は、社会を知り、視野を広げるために社会見学を行なった。その時のことが今なお頭にこびりついて離れられないのが本島北部の農村地帯である。
 延々と広がる、さとうきび畑、山の斜面に植えつけられたパイナップル畑、所どころに広い茶畑、その他いろいろな作物が植えつけられていた。
 基地に囲まれた所で生活している私は、その壮大な光景に今までの農業に対する認識を改めさせられた。
 私達の村にも、さとうきび畑や茶畑はありますが、北部に比べて収穫量が低く半農半漁の、しかも祖先から受け継いだ農耕技術の中で営まれている現状は、ややもすると私達の生活の中から農業が消え去り取り除かれているかのように思われる。その原因は、総面積三十一、五三平方キロの七十二パーセントが軍用地に接収され、働く場所を失なったことにあると思う。農家一戸あたりの耕地面積は、数字にあらわせない程わずかで、土地なくして、どうして農業ができましょう。   これを沖縄全体からとらえてみますと、総面積にしめる耕地面積は、わずか二十八パーセントで、人口密度も三九一人という、世界的にもきわめて高い。
 このような現状で大規模な農業、あるいは、工業の発展は、とうていのぞめないものと思う。
 私達の祖先が、築きあげてきた沖縄の産業が今、しかもこれから社会を背負って立つ若い者の前から忘れ去られようとしている現在、その対策を講ずる必要はないものだろうか。このような時、広い広い土地があったら・・・・・・と空想し、海外移民への夢をもったりした事がたびたびあった。  当山久三先生は、「いざゆかん、我等の国は、五大州」と明治の頃から叫び、私達の先輩は、それにつられて、大きな夢と希望を持って海外へ移民し、南アメリカ大陸だけでも、数多くの国にまたがっている。未開地の荒地に挑む当時は、貧しい苦しい生活だったが、現在では、ほとんどの人達が大事業を成遂げ、安定した生活を送っているという。それらの国々には、まだまだ未開発地域が多く、これから発展していく国として、世界の国々から注目をあびている。
 その中の一国、ブラジルは、日本の二十三倍もの広大な国土であるが、農耕地は、全体の六パーセント足らずで、国土の三分の二以上が原始林におおわれた現状である。また、国民の大半が、農業に従事しておりコーヒーや綿などの農産物は、重要な輸出品で、中でも、コーヒーは世界第一位で、ブラジル経済を支えている大切な作物である。
 沖縄移民の最も多いサンパウロには、早くから日本人移民が行なわれ、コーヒー栽培を中心としたブラジル農業に、大きく貢献し、現在は、六十万人の日系人が、活躍している。
 また、繊維工業を中心とした南米第一の工業国で、地下資源も鉄、石炭、銅と豊富にあり、世界的な工業国としての発展はこれからだと思う。
 南米大陸で、特に興味深く、私達若人に希望がもてる国は、ボリビアでしょう。人口三百八十万人、鉄業が盛んで、すすなどは世界的に多く、これからの開発にまたれている。
 地下資源は、豊富にあるが、それを国内で消費できないことは、まことに残念なことだ。
 その上、農作物も国内需要をみたすことができず、輸入に頼っている。せめて、農作物だけでも、国内産でまかなえるような取り組みがなければならないのではないか。しかし、この国の自然は、ほとんどが高原地帯で、雨が多く暑い。そのため農業には不向きの面もあるが、所によっては土壌のよく肥えた未開地も多い。このような未開の森林を切り開くことから、この国の進むべき道がきまってくると思う。コーヒー、カカオ、小麦などと限られた作物だけにとらわれず、そこの気候、地質にあった、ボリビア独自の農作物を作るというような、多面多角的な農業経営は、望めないものだろうか。
 また鉱業の面では、「地下資源豊富にあれども使い道知らず」といったかの如く、資源の少ない国々に安価で提供しているのだが、国内で十分消費した後に、余力を外国に提供しうることのできる工業が欲しいものだが、現在この国の開発状態をみた場合、無理ではないかと思う。しかし、私達、若者の力を結集して、この国のために貢献すれば「工業化」ということは夢ではないと思う。 この国は、南米で最も文化が低く、日本人移民の脱国もたまたまあるとのこと。
 私達は、とかく安易な道を選びがちだ。なるほど未開発の大自然との生活は、想像つかない苦闘の連続にちがいない。しかし、「若者の前途に道はない。その後に、道あり」。というように、私達には、大きな夢と希望がある。
 これからの社会を、その国を切り開いて行くのだという強い意志と、未来への大きな希望を持ち、農業移民、投術移民として、その国で、自分の全知全能をふり絞って、おもいきり活躍してみたいものだ。

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