としよりの日に寄せて
村長 古堅宗光
「としよりの日」を老いてますます、身も心も健やかに迎えられましたことを心からおよろこび申し上げます。
特に、今年は去る五月十五日に願望の祖国復帰の実現をみて、いよいよ他県と同様、名実ともに「としよりの日」を迎えるに当り、お年寄りの皆様にとりましては、誠に感慨深いものがあると思います。
即ち、明治、大正、昭和の時代を風雪に耐えて、現在の発展の基礎を築いて下さいましたお年寄りの逞しさや、心意気に敬服するものであります。
それだけに去る沖縄敗戦により、昭和二〇年から西暦一九四五年と呼ばれるようになった、沖縄の米軍統治のアメリカ世は、皆様の誇りを、心意気をいたく傷つけたものであったでしょう。
二八年目にして、ようやく再び昭和と呼ばれる復帰の実現は、皆様にとっては何かしら心の安らぎをもたらしたものと思います。
沖縄は他県に比べて、長寿者が多いといわれます。しかも去る沖縄激戦で未曾有の死戦を越えてきたにも拘わらず、なお、長寿者が多いということは、皆様の体の健康と、精神の強さ、心の豊かさによるものでありましょう。御健康とおしあわせを切に願ってやみません。
老齢福祉年金額の引き上げや、来年一月から七〇才以上のお年寄りの医療費の無料、その他、老人福祉施設等、老人福祉対策はだんだん充実してまいります。
また、お年寄りをいたわり、うやまう運動や、催しものが盛んに行われるようになり、老人福祉問題は老人だけのことではないという認識のもとで、みんなの身近な問題として、考えるようになりつつあります。
しかし、このように将来年金額は増え、福祉施設は完備し、また周囲や他人からいたわりを受け、うやまわれ、大事にされるだけでお年寄りは、もうこれでしあわせであるのか、と思うとき、真に生きがいや、心の感動を覚えるのだろうか、なにかしら侘びしさが残るのではないだろうかと思います。
このような意味で、読谷村老人クラブが毎年実施するお年寄りの農産物、手工芸品の作品展示は、正に読谷村老人の心意気の現われであり、あの出展された労作品に私はお年寄りの誇りと、よろこびを感ずるものであります。
最後にお年寄りの皆様がより御健康で、与えられるしあわせよりも、みずから、しあわせを求める心で楽しい日々を送って下さいますよう、お祈り申し上げまして、ごあいさつといたします。