ボリビア国からのたより 瀬名波出身 屋良朝昭
この度我々、南米ボリビアに移住している沖縄出身移住者約百六〇名が海洋博見物と親戚知人訪問を兼ねての郷里訪問の為来沖致しましたが、観光団員の中には二〇年振りに里帰りする人達も含まれており、我々のイメージの中にあった一昔前の沖縄の状況と現在の郷土との変り振りに”とまどい”を感じる毎日で、特に道路と建物が立派になっている事に驚異の目を見張っております。
今回、村企画室よりの要望で村民の皆様へ我々ボリビア移住地の現況と将来の展望について簡単に御紹介致します。
我々、沖縄移住者が居住するボリビア国サンタクルス州は、南米大陸の真々中に所在し、州庁の所在地がサンタクルス市で、正確には(SANTA CRUZ DE LA SIERRA)という名称で呼ばれております。
サンタクルスは世界でも珍しい産物の多い処で、石油、ガス資源にも恵まれ、最近沖縄移住地内でも処々で試掘が行なわれております。
又、無限とまでいわれる「ムトウン」の鉄鉱石は世界各国、特に隣邦アルゼンチン、ブラジルの唾涎の的となっており、木材はその種類の多いこと、豊富さで欧米市場は勿論、日本市場へも原木の輸出が行なわれている。
それに我々移住者と最も関係の深い農産物の面では、砂糖、米、大豆、綿花、トウモロコシ、果物などは国内需要のみならず、海外市場への輸出供給の可能性も充分であるが、未だ低開発国の域を脱する事ができず、組織的な国内での供給ルートが確立されていない為生産物の販売面ではまだまだ充分な活動が行なわれていない現況にある。
しかしながら最近では、綿花、木材等が、日本や欧米市場へ輸出され、鉱山物に次ぐボリビアの外貨獲得輸出産物としてのし上って来ており、徐々に農産物の国際市場への輸出面が活発化し将来が期待されている。最近ボリビア政府が招聘した北米、ユタ州立農科大学の教授団によるサンタクルスの農業調査に関する結論の中でも「サンタクルスの土質、豊沃度の卓越した点及び灌漑用水資源を調査した結果、ボリビア東部地域即ちサンタクルス州は全世界における農産業開発上、強力して、かつ重要なちいきである。」と述べている。
サンタクルス州だけの面積でも三七万六二一平方キロメートルより少しばかり大きい面積を有し、人口はほぼ五五万人、一平方キロメートル当りの人口密度は一人半という稀薄さで読谷村の六二一、一人という人口密度からすると想像する事もできないような拡大な土地である。
このような広大な平坦地の中に我々の沖縄移住地が設定され、それぞれ、牧畜や営農を営んでおります。
昨今では移住者達も過去の米作一点張りの営農方針から牧畜と棉作、また大豆キビ作が有望視され、営農携帯も機械化へと移行しつつあります。
はじめにも述べたようにサンタクルスは南米大陸のど真中にあり、それに目をつけた米国航空事業界の資本家はサンタクルスのビルビル地域二、五〇〇町歩に南米国際航空基地が建設されると、サンタクルスは文字通り南米大陸の中心基地となり、豊沃な土地と無限とも言える天然資源や地下資源は、各国の企業家からするどい注目を浴びることになるだろう。
ここ四、五年来のサンタクルスの発展振りは目ざましいものがあり、今後は国土開発、産業開発が協力に進められるのではないかと期待されるものがあります。
十三年ぶりに私が郷里に帰り、最初に直感した事は、なる程沖縄県民の生活文化の向上にはすばらしいものがあるが、その反面、日常生活に必要な野菜、果物類に至るまでの生活必需品一切が全て本土や外国より輸入され、建築物や道路とのアンバランスが沖縄の将来にある種の不安感を得た事で、海洋博終了後、本来の沖縄の姿に立戻った時、最近下火になりつつあった海外への移住熱が再び燃え上がるのではないかと予想されます。
将来に添えて、郷里の若者達が海外への認識を深め諸外国に住む県出身との連携を強力にして、今までの海外移住という何か暗い悲惨なイメージから脱却した安易な気持でカバン一つを手にし、「三日もあればすぐ帰ってこれるのではないか」という明るい若者達の移住を期待したいと思います。