渡慶次野菜生産組合に 朝日農業賞 近代的農業の発展と創意工夫の経営実績を高く評価
朝日新聞社の昭和五三年度「沖縄県朝日農業賞」に渡慶次野菜生産組合(安田慶善組合長)が決まり、晴れの受賞伝達式が去る四月十八日午前十一時から県庁農林水産部長室にて行われた。
伝達式には安田組合長と新垣次郎氏が出席。藤森朝日新聞那覇支局長から「朝日農業賞」が伝達された。同時に記念の楯も伝達された。
朝日農業賞は昭和三八年に創設され「農業者の地域的・集団的活動が農業と農村の近代的発展に不可決であるとの認識のもとに立ち、そこに働く農業者自身の創意工夫をおこし、日本農業の振興に寄与する」ことを目的として創設されたもの。今回の渡慶次野菜生産組合の受賞は「集団的農業経営の努力と創意工夫により、困難な諸条件を克服して地域の農業振興に尽力した」として、その業績が高く評価されたものである。過去においては国頭郡と竹富町波照間が受賞、それに続くものである。
受賞者一行はさっそく役場を訪問し、受賞の報告を行った。安田慶造助役は「栄誉ある朝日農業賞の受賞誠におめでとうございます。今回の受賞を契機に更にご尽力下さい」。と労をねぎらっていた。
渡慶次野菜生産組合は安田慶善組合長を中心に十二名で発足した農業法人。字渡慶次、中前原一帯の米軍変換施設跡地(メースB基地区域)に造成されている。当初は昭和四二年に設立された農研クラブ活動を足がかりとして、昭和四七年に現在の名称に替えて新たに発足した。
昭和四九年以降、積極的な事業導入と栽培技術体系の確立をはかり、施設野菜団地を造成した。約六、○○○坪のビニールハウス群の中には、ピーマン、キュウリ、スイカなどを栽培し昭和五二年度における生産販売額は三、五○○万円にも達している。特にピーマンについては「読谷名産ピーマン」として出荷され消費市場での人気を独占する程である。
同団地に参画している農家の一戸当りビニールハウス保有面積は約五○○坪。養豚、さとうきびなどを加えた複合経営である。構成員は農業経験豊かな人が多く、中には二○代の若い農業後継者も四名参画している。当初、それらの若い農業後継者は農業未経験者であったが、農業に対する熱意と意欲的な農業への取り組みが功を奏し、栽培技術の向上をめざし、時には営農指導に当る県農業改良普及所、役場、農協の職員をあきれさせる程に積極的に研究会を開くなどしてきた。このことは年配組合員にも良い刺戟となり、計画的生産性を確立。市場の動向を見て出荷調整するなど、正にもうかる農業、考える農業の礎を築き上げてきた。その成果が今回の受賞にも続がり、村内外の農家にも波及。昨今の農業に対する考え方を刷新させた。
ことに施設園芸の面積は県下随一を誇るという。また、同団地のもう一つの特徴は、かんがい用水施設の確立である。このことは施設園芸に欠くことのできない水の問題をいち早く解決したこと。現在のかんがい施設は座喜味城跡裏手にある米軍払い下げタンクを利用し、長浜川の豊富な水をポンプアップし、団地内を網の目のように配管。充分な水利確保も生産性を高める要因としてあげられている。
とかく本村は第一次産業を振興する上から今回の同団地組合の「朝日農業賞」の輝かしい受賞は、今後の農業振興を図る中で意義深いものがあり、単に同組合のみの栄誉としてとらえることなく、村内すべての農家で、村民で、その輝かしい受賞を祝福したいものです。
尚、本村では「より豊かな農村づくり」を目指し、今年度予算において農心水産業費に三億三千八百九十八万二千円を計上し、より一層第一次産業の振興を計ることにしている。
とくに今年度の農業関係の大きな事業は「渡具知地区土地改良総合整備事業」「楚辺共同畜舎」「座喜味地区農村基盤総合整備事業(継続)」及び「ボーロー飛行場南地区土地改良事業(調査)」などが予定されている。
※写真「朝日農業賞の受賞のよろこびをかみしめる安田、新垣の両氏」は原本参照