座談会 北海道池田町研修を終えて
二十一世紀の夢とロマンを求める本村のムラづくり計画は、日一日と進められている。ムラづくりの大綱「人間性豊かな環境・文化村づくり」は村民参加のもとに進められ、先のムラおこし講演会・並びに研究集会を機に、村民の心に燃えさかる炎は次第に明るさを増し、一段と大きな炎になりつつある。役場においても先進地研修計画を組むなど「読谷村」の特色ある村づくりをめざし、只今、エンジン全開中である。
広報よみたんでは、先の北海道池田町先進地研修にスポットをあて、報告座談会を開いた。池田町研修には安田助役を団長に六名の研修団が派遣され、数々の研修成果を特ち帰った。
司会=先の北海道池田町研修はお疲かれさまでした。
さて、池田町研修を終え、ここに座談会の席を設けましたが、研修地における各々の研修報告を兼ね、池田町の素顔、そして今後の読谷村の二十一世紀に向けた新しい村づくりについて、ハダで感じたことを語っていただきたいと思います。ところで研修地の池田町は全国でもユニークのまちづくりとして知られているが、今回の研修にあたりその目的について団長の安田慶造助役に総めていただきます。
安田慶造(団長)=池田町は昭和二七年三月の十勝大震災によって倒壊状態の被災を受け、その災害復旧のため、借金財政を余儀なくされた。昭和二九年には職員の給料さえ支給できずとうとう昭和三十一年には財政再建団体の指定を受けるようになった。その池田町がゼロからの出発をめざし、昭和三二年、丸谷金保町長が誕生した。丸谷町長の就任後の初仕事は借金の返済から始まり、以来町政の立て直しを模索する中で丸谷町長は、池田町に山と自生する山ブドウにヒントを得て、ワインの醸造を試み「これはいける」と思いたつや、本格的なブドウ栽培に取り組み、ワイン工場を建設、十勝ワインを市場に送り出した。以来二○年、ワイン工場をはじめとし、ミートバンク、町営レストラン、まきばの家、牛の多頭飼育実験牛舎、大規模草地開発事業など多くの公営事業を営むスーパー自治体に発展していった。昭和五四年の予算をみると、特別会計を含め百十二億円。全国にも類のない町づくりを町当局、町民は一体となってつくり上げ、今では全国的にもユニークな町づくりの実践事例として有名である。
こうした池田町の今日の町づくりに接し、研修することによって、私達がこれからの二十一世紀に向けての、読谷村の新しい村づくりを進めて行く上に、池田町のこれまでの町づくりの貴重な実験・体験・発想・哲学等を学び、読谷における気候・風土・歴史・特性にあうようなムラづくりの糧にするためのねらいで研修を計.画したわけです。
司会=池田町のユニークな町づくりは、先のムラおこし講演会においても具体事例として紹介され、大きな話題を呼んだが早い話が日本の北と南、極端な地理の中で、池田町の姿がなんとなくユートピア的な感じをするが、池田町とはいったいどういう町なのか、その町の姿について話してほしいのだが…。
山内薫(企画課)=まず、人口は一万二千三百六人、世帯数は三、五五二戸(いずれも昭和五〇年国調)、面積は三七二平方キロあり、北海道十勝平野の中央、やや東寄りに位置する。
本村に比較すると人口が約半分、面積がおよそ十一倍といういかにも北海道ダナ~という広大な面積を有した町です。
仲宗根盛和(経済課)=ワインと心のふれ合うところ……そこには若さがあり、恋があり、町民の心のふる里がある。そこが池田町ですね。沖縄との年間平均気温差が十五℃以上もあって、平均気温は約六℃だといいます。
島袋勉(経済課)=池川町の産業構造は第一次産業が主体になり、第二次産業と第三次産業がうまく調和している。就業構造も農林業の三一%を主流にして動き、全山帯の約二〇%が農家です。農林業をとりまく現状は耕地が約三千万坪、林野が七千万坪、乳牛が四千三百頭、肉牛が二千頭飼育され、本村とはすべて桁ちがいです。
大湾近常(税務課)=豊かな町財政が実にうらやましい。一般会計の外に九つの特別会計をもち、百十二億の予算総額でもって、上・下水道、学校施設、社会教育施設が充実している。ことに、チビッ子公園は十四ケ所に設置されていて、こどもたちはのびのびと、たくましく育まれている。
新垣喜一(診療所)=話は共通しますが、池田町には病院が一ケ所、医院が二ケ所、診療所が一ケ所、歯科が二ヶ所あって町民の健康管理がゆき届いているところはさすがだと思いました。また、福祉施設、生活館、母子センター、いきがいセンター、ことに老人クラブ会館は十九ケ所に設置され、やはり豊かな財政なくしては今日の池田町は存在しなかったのではないか。
安田慶造(助役)=ひと昔前は借金に苦しんだ町、今日では他自治体からうらやまれる栄華の町へと、わずか二〇年にして見事な変身を見た池田町、今ある池田町は町政と町民が心をひとつにして町おこしに努力してきたたまものであり、すぐれた町民性は魅力的だ。年間、五○万人以上の観光客が来町するといわれ、観光農業をうまく結びつけた静かな町である。
山内=町づくりの発想にはびっくりしましたね。赤字財政と過疎化にあえぐ貧乏な町であった二○年前、時の町長に就任した丸谷金保氏と氏をとりまく青年仲間が、町全体の六〇%を占める山林に自生する山ブドウを農村らしい風物詩として、庭に植え、町のイメージチェンジを図ろう。というねらいがやがては本格的なブドウ酒の醸造へと発展した。また、肉を預かるミートバンク、やがては町営レストランヘと発展していった。一方、特異中の特異「銀婚式には世界一周を」と題して農業後継者への結婚記念造林の奨励などさまざまな事業を展開し、ユニークな発想から生きづいた町づくりは、今や全国的に有名な町になっていますね。
島袋=池田町に降りたつと何か心に福よかさを感ずるものだ。ワインで造りあげた町にふさわしく、ワイン噴水、ワインカップが町の訪問者を歓迎する。そして、ワイン色に色塗りされたワイン道路を経て静かな街並へ出る。只、闊歩するだけでもロマンを感じる。町の正面には東北海道に誇れるスポーツの殿堂、その周りに結婚記念造林、そして広大なブドウ園に囲まれ、山手にはワイン城が夜の採光を受けて一段と美しく彩る。この町が二○年前の財政再建団体の町だったのかと不思議にさえ思えた。住民参加によって築かれた町のパワーには正直いってびっくりした。我が村も二十一世紀に向けて南国の池田町……の感じがするムラづくりをやってみたいね。
一同=やろうじゃないか、やらなきやならないね(一段と活気がみなぎる)。
司会=池田町の概要については只今の話から、さすがといい