読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1979年10月発行 広報よみたん / 3頁

座談会 北海道池田町研修を終えて

〔237号2ページの続き〕

ようがない。発想の転換から生れた町づくり、その姿はまさにユートピアの町といえますね。
 さて、研修の本筋に入りますが、皆さんはそれぞれの分野で調査活動を行ってきたと思います。では、その研修内容等についてそれぞれ総めていただけますか。
 新垣=研修日程二日目から本格的な研修活動に入ったが、大湾君と二人は公営事業部問を担当し調査活動を行った。まず、池田町公営事業会計は町営レストラン帝業、町営牧場事業、町有山林事業、食品製造事業それにまきばの家の事業の五つの事業体を一つにし公営事業会計としている。この会計の今年度予算は約二〇億で、この公営事業からの収益が実に十億七千万円をあげている。特にレストラン利用者が年間七万人を越し、利用者の八○%が町外からの客であり、いかに池田町が全国に知られている町であるかがわかる。
 また、十勝ワインで知られるぶどう酒事業会計においても年間一千百キロリットルのワインを製造し、その売り上げ収益金は十三億八千万円。今日の地方自治体では全く夢のようで、考えられないことです。レストランにしろ、ワイン製造にしろ町の職員でどうしてこれだけの事業がやれるのか不思議でさえ思えました。
 大湾=聴きしに勝るハイパワー自治体です。私も公営事業特別会計部門で調査活動したが、まず、群生する山ブドウからワイン醸造の実験、そして自治体が酒税法の免許を取得して町の公営事業として軌道にのせた。ワイン醸造帝業も模大な利益を生むまでに成長し、利益を町民に還元している公営事業の実情に接することができた。
 公営事業としてのワイン醸造が池田町民に寄与している効果は、利益のみの町民還元でなくその波及効果は、第一次産業から第二次廃業へ、そして第三次産業へと池田町の経済へ寄与する産業として定着している。
 司会=ワイン産業の果たす波及効果というのはどういうことか
 大湾=それは、ブドウ栽培を拡大することにより農家所得の向上を意味し、生産意欲の向上は末利用地への栽培拡大につながる。さらに農家所得は増大する介だ。そしてワイン醸造のフル操業と展開する。顧客の増大は利益の町民還元へと発展する。つまり、顧客の増大はワイン産業のみならず、他産業への発展に結びつき、町全体がうるおうことになる。ワイン産業を中軸とする産業構造のエネルギーが今日の池田町を築きあげてきたことになろう。
 新垣=池田町民の発想の転換豊かな思考力を持ち寄り、努力して実践に結びつける。実にユニークな自治体です。このことが、これからの我が村の産業を興す指針として池田町から学ぶものがあった。
 島袋=私と仲宗根君は農政部門の調査を行った。池田町の基幹権業はいうまでもなく農業です。農業が地域の経済活動を大きく左右し、ユニークな町づくりも、その根源はといえば農業からスタートし、結実している。
 仲宗根=やはり、農業と切り離して今日の池田町は語れませんね。高度経済成長期にあった昭和四〇年代、他自治体があらゆる企業誘致を急ぐ中で、池田町は農業に関係する公害のない企業を基本にして誘致をし、公害のない静かな町として今日の池田町があります。
 司会=すると、池田町のマチづくりの源泉は農業に始まったということですね。
 仲宗根=そうです。農業が池田町の救世王になるし、併せて町民の曲、豊かな思考が大きくプラスされています。
 島袋=池田町の昨年の農業所得は七〇億円といい、読谷村に比して実に十二倍です。これは農家自からの汗の結晶であり、働く程に汗の結晶が実を結ぶことを物語っています。そのことは、農家のみならず、町当局との二人三脚が功を奏したものと思われます。ことに大草地開発事業による町営牧場、乳用雄仔牛、老廃牛等の活用によるミートバンクの設置、それが町民のたんぱく資源の確保と農家の食生活改善に大きく貢献しています。
 大湾=町おこしの源泉は農業であることには変りないが、農業企業に係わる発想が実に偉大だ。ワイン醸造をはじめ、ミートバンク、大草地開発事業による町営牧場だ。これは、夏場の農繁期に農家所有の乳牛、肉用牛を町営牧場に預けるシステムで、大草地でのんびりと緑草を食いばんでいる牛の群れは実に壮観だ。
 島袋=将来計画では乳牛一万頭、肉用牛五千頭の計画ですね。
 安田=先の話に続くが、農繁期に農家の牛を役場が預かる。いらなくなった牛を仕上げ、その余った肉をミートバンクに預ける。実にユニークな発想から生きづいた事業体であり、それらの要求を実現できる池田町政職員の努力は並々ならぬ奮闘があると思うな。
 島袋=役場独自でも肉用牛を飼育し、自然交配をやりながら繁殖素牛の生産をやっている。現在、畜産基地の建設も進められている。
 仲宗根=より豊かな農家経済の確立をめざし、一戸当り二百頭以上の多頭飼育化を試みる「省力化実験牛舎」の運営も参考になるものがありましたね。
 司会=先程から牛にまつわる話が多いようだが聞きなれないミートバンクとはどういうものですか。
 島袋=ひと口にいって肉の銀行です。酪農家ではこれまで乳用雄仔牛、老廃牛は安い価格で販売されていた。町には牛が数多いが、自ら仕上げた牛は食べない風習があって、その食改善にと昭和四三年にミートバンクなるものが設立された。これは農家が牛をミートバンクに預け農家は肉を食べたい時にいつでも肉の払い戻しを受けることが出来る仕組みで、しかも肉製品の利息がついて帰りてくるというシステムです。と殺料、保管料は一切無料で、その代り町が牛の臓物をもらい受け、学校給食や町営レストランでスープとして利用されている。結局、ミートバンクは農家の食生活改善、より豊かなタンパク供給源になり、余肉は町民の台所、町営レストラン、町営まきばの家へと流れ、町産のワインを飲みながらステーキ料理に舌つづみを打つことに町営レストランには年間七万人の客が利用するといわれています。
 司会=役場でレストランを経営しているのですか、実にユニークですね。ところで耕種農業についてはどうなっているのでしょうか。
 仲宗根=町の基幹産業は農業だが、農業は耕種部門と畜産部門の二枚看板である。ことに耕種部門は約三千万坪の畑から米麦・大豆・小豆・てん菜など四十四億円の租生産額があり、町全体の農業租生産額が七〇億円だというから耕種部門が農業の主流といえますね。畜産部門は第二次・第三次産業との流通係わりが深く話題の焦点になりがちですね。
 安田=本土には米の減反補償制度なるものがあって、池田町の稲作農家には七億円の補償金が支払いされている。その額は本村の農業生巌総額を上廻るものであり、一戸当り農家の年間租生産額は一千万円を越す。わが沖縄の農家と比べいかにスケールが大きいことか。だが農業をとりまく自然条件は沖縄の方がはるかに有利だと受けとめたのだが……。
 仲宗根=耕種部門での流通機構もかなり整備されていますね。三つの農協をはじめ、野菜冷凍加工場なるものを設置し、野菜の市場価格の変動に関係なく安定供給を図っている。
 大湾=これは、中間流通機構を経ず、消費者への直結で、いつでも安定した価格で野菜の供給が出来るシステムですね。
 山内=流通機構の完備は目を見張りますね。野菜冷凍加工場は町内の小規模経営農家に生産性の高い町菜づくりを奨励し、農業経営の安定を計るために設立されたもので、町内の三つの農協、民間会社の共同出資によって設立され、株式会社「十勝オーケー」と呼ばれている。
 大湾=池田町の企業操作の機構は複雑ですね。特に十勝オーケー社に関しては役場・農協・企業が加担している。また、職員の一例をみると、株式会社十勝オーケーの専務は銀行から役場へ出向し、さらに役場から会社へ出向する。そういうことも出来るんですね。
 新垣=池田町には年間五○万

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