読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1979年10月発行 広報よみたん / 5頁

座談会 北海道池田町研修を終えて

〔237号2~4ページの続き〕

考えますと残波岬は自然に恵まれたところであり、海を利用することによって、さらに開発の可能性がある。次に、産業おこしはまずは「人づくり」から始めるべきだ、池田町の場合、ワインぶどう酒事業を始める頃、遠くはヨーロッパまで視察研修をさせたが、我が村でも広い視点に立って先進地における視察研修を進め知識を広めることが大事である。そこから発想の転換が生れ、すばらしいアイディアが出るであろう。
 仲宗根=池田町のユニークな事業実施は長期的計画によりできたものだが、池田の町のもつ方針「走る」というスピイデイな基調により成り立ってきたものだ。そして、発想から展開へと連続的に発展してきたものであり、これらのことは、町民による十分な論議がかもし出されたあとのことである。
 現在読谷村の農業はさとうきびを中心として養豚との複合経営にあるが「農業を中心とした村おこし」が必要だと考える。それには村民と行政とのコンセンサスがより重要であり、少ない面積で生産性の高い品目を選び、流通の安定化、さらに、二次的加工の可能性を考える必要がある。村おこしについては長期的な計画により実施すべきことであり、村内の各層の意見を十分に聴き、論議し、そこから生まれる「主題」は必らず村民パワーのエネルギーとして集約されるものと思う。そのことが池田町には他自治体より先んじていることであり、大いに参考にすべきことではないか。
 大湾=将来は、職場も学校教育も週休二日制の時代が予想されるので、学校外での自主的な教育実践が望まれるところであろう。そこで読谷村の海岸線を青少年野外活動の場として教育実践公園として整備を図るのも良いのではないか。さらに渡具知から残波岬までサイクリング道路を建設し、タイムチェックポイントを随所に配置する。また、適当な場所においては赤犬子広場、ソベポーポーの実習施設、農産物即売コーナー、伝統工芸即売コーナー、埋蔵文化財太陽熱利用、その他教育的視点に立ったアイディアを出し合って、海岸線を教育的立場から開発利用する必要があろう。海岸線は公共用地として未来の村民への財産として残す必要がある。
 次に、沖縄の県花デイゴを読谷村の海岸線に植栽する。いかにも南国らしいイメージを造り真紅の花は常夏沖縄を象徴するものだ。また、枝はキクラゲのほだ木として利用、幹は家具材料として利用研究をはかる。キクラゲの利用、加工研究を実践して、その他、デイゴの効能を調査してみる必要があろう。
 仲宗根=池田町の地域に根ざした発想でもって、ユニークな事業が発展して行くプロセス(過程)をみることができた。池田町の人達が若い時は苦しくとも、希望をもって働き、老後には生きがいを感ずる町づくりを皆で力を合せていくための条件づくりを行政が果たしていく姿は地方自治のあるべき姿だと教えられたし、結果をみるより、努力し、実践した体験のプロセスを尊ぶものとして受け止めたいものだ。
 安田=まず、池田町の今日の繁栄をみるには過去の長い苦難の歴史を知らなければ今日の池田町の姿は理解できない。池田町は山ブドウから世界的なワインに名声を高めるまで、二〇年余の歳月をかけた。失敗をくり返しながらも、町民の前向きな協力態勢、即ち、住民のコンセンサスがあったからこそ現在の池田町の繁栄があるといえよう。
 そのことから推して、読谷村でどのような産業があるかという事以前に、全村民が村政に関心を持ち、皆んなで考え、皆んなで行動し、皆んなで責任をもつ。つまり、池田町方式から明日の読谷のムラづくりは生れて来るものではないか。私たちの代表として選ばれた方だけにすべてを委任するのでなく、全村民が行政に参加し、村政に提言をし、その中から光明を見出して行く。そのことが村政の基本であり、ムラおこしもそこから始まって行くものでなければならない。
 司会=今回の池田町研修はかなりの成果があったことと見受け致します。最後になりますが今回の研修のまとめを安田団長にお願いし、座談会を閉めたいと思います。
 安田=ほんとにごくろう様でした。まず、池田町当局に大変忙しい中を親身になってお世話をしていただき、町長はじを職員各位に心から感謝したい。地理的に池田と読谷は北と南の両極端に位置し、気候・風土・自然環境の異なる中で生きている者同志が、初対面でありながらも、長い年の友人のように接し合い、気軽に見たり聞いたり、話し合い、私達にとって実りのある研修をすることができました。
 そこで、研修の結果を総めるとすると、この座談会でもいろいろな話が出ましたが、これを端的に集約するとすれば、
 ①住民との対話によるコンセンサスづくり。
 ②農業生産の向上が商工業の発展につながり、ひいては雇用の拡大につながる。
 ③企業の誘致に当っても、単なる土地の提供者でなく、行政と村民が参加し、地域の産業と係わりのある企業が結果としては村民の利益につながる。
 ④地方自治体に働く者も自治体の経営的な感覚でもって、首長を中心にして事に対処しなければならない。
 以上のことが、今回の池田町研修において集約される事項であり、それぞれ分野での調査研修活動は実に実りある密度の高い研修だったことをここに総めておきたい。
 司会=今般「広報よみたん」の特別企画、題して「北海道・池田町研修を終えて」は村民広報としてかなりの反響があるものと思います。皆さんには、いろいろな話をもつと話されたいことでしょうが、広報スペースの関係もあり、一端はこの辺で活字を閉めたいと思います。
 だが、尊い体験をなされた皆さん方のその輝きをより多くの村民にひと声を投じ、ムラづくりの住民コンセンサス運動の糧とし展開することを希望し、座談会をここで終りたいと思います。
 長い時間にわたりありがとうございました。

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