歳末特集 飲酒運転の防止
十二月は、忘年会など何かと酒を飲む機会が多く、酒酔い運転や酒気帯び運転による交通事故がふえます。
「あまり酔っていないと思ったので」
「少ししか飲んでいないから」
「ひと休みして酔いがさめたと思たから」
これが、酒酔いおよび酒気帯び運転者の”自己弁護”の主なものですが、自分勝手な甘い判断は大変危険です。
酒を飲むと、運転操作にどんな影響をおよぼすか-みんなで考えてみましょう。
ほろ酔い時の運転実験 運転技能ガタ落ち
「つき合いだから、まあ一杯だけ……」とすすめられ、その程度ならと、つい飲んでしまう。
この”一杯だけ”が交通事故につながることが多いのです。
「ほろ酔い時が危ない」とよく言われるのもそのためで、自分はまだ酔っていないとか、この程度では車の運転に影響ないと思いがちなためです。
そればかりか、少し酒を飲んだ方が動作が活発になって、自動車の運転には、むしろ好都合であると思っている人さえいます。-ここに酒酔い・酒気帯び運転の”落とし穴”があるのです。
日本大学医学部の上野佐教授は、崎玉県警察本部交通指導課と共同で「酒百八十ミリリットル(一合)-ほろ酔い時の運転実験」を行いました。
この実験は、運転免許を持つ二十~三十代の男性の中から酒百八十ミリリットルでほろ酔い気分になる程度の人三十人を選んで、空腹時三十分間に日本酒百八十ミリリットルを飲んでもらい、自動車教習所内のコースを実地に運転させたものです。
その結果、飲酒後三十分で、運転技能に対する影響が最も強くあらわれ、以後、徐々に回復しましたが、二時間後でもまだ飲酒前の状態に完全には回復しませんでした。
具体的な実験結果は次の通りです。
ブレーキの踏み方
酔いはじめの飲酒後三十分が極度に悪く、踏み遅れがめだったほか、脚部の動作があらあらしく乱暴になりました。その後、徐々に回復の傾向を示しましたが、二時間たってもまだ飲酒前の状態に回復しませんでした。
アクセル・クラッチの踏み方
踏み方が粗暴になり、急発進、エンスト、変速チェンジなど、運転の的確性を欠き、なかでも脚部の運動機能の低下がみられました。
スピード
スピードの出し過ぎがめだちました。その上、通行区分を無視したり、交差点では方向指示器の出し忘れが多くなり、さらに安全の確認がおろそかになりました。
また、停止位置できちんと止まれないといった不安定な状態が見られ、全般的に注意力が散漫になりました。
ハンドル操作
酔いはじめは、ふらつき運転や、歩道に乗り上げたり反対車線に入るなどの”脱輪”が多く見られました。
その後は、徐々に回復し、ハンドル操作が大胆になって危険になるほど腕の運転技能の抵下を示しました。
以上の実験結果からもおわかりのように”ちょっと一杯”のほろ酔い時でも注意力が散漫になるのに加えて、腕と脚部の運動機能が抵下し、乱暴で、きわめて危険な運転をしています。
飲酒は事故に結びつく可能性が大きいので、「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」の原則は絶対守るようにしたいものですね。