特集 法律は幸せな暮らしの後ろ盾
民法の改正 昭和五十六年一月一日から施行
遺産を子供とともに相続する場合、配偶者の相続分が三分の一から二分の一に引き上げられるなど、「民法及び家事審判法」の一部が五月九日改正されました。昭和五十六年一月一日から適用されますが、わたしたちの暮らしに関係の深い主な改正点についてご紹介しましょう。
配偶者の相続が引き上げられました
配偶者の相続分が、子とともに相続するときは遺産の二分の一(今までは三分の一)、被相続人(死亡した人)の直系尊属(両親)とともに相続するときは三分の二(同二分の一)、被相続人の兄弟姉妹とともに相続するときは四分の三(同三分の二)に、それぞれ引き上げられました(民法第九〇〇条)。
同時に、配偶者に対する相続税についても、その相続額が遺産の二分の一以下(今までは三分の一以下)または四千万円以下の場合は、課税されないことになりました(相続税法第一九条の二)。
遺産の分割を適正にするため「寄与分制度」が新しく設けられました
寄与分制度とは、亡くなった人の財産を維持したり増やしたりするのに努力した相続人に対し、その分を”ご苦労賃”として上積みして相続させることを認めようとするものです。
例えば、農家や商店などで、長年、父を助けて家業を続けてきた息子が、父の遺産を相続する場合、寄与分制度が適用されます。
寄与分の額は、相続人全員の話し合いで定めることになっていますが、折り合いがっかないときは、寄与した相続人の請求(申立て)によって、家庭裁判所が寄与分を定めます(民法第九〇四条の二)。
兄弟姉妹の代襲相続に制限が設けられました
これまでは、代襲相続人(相続人が死亡などによって相続することができなくなった場合、代わりに相続する人)の範囲が決められていませんでした。これが、今回の改正によって、被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合の代襲相続人は、兄弟姉妹の子(被相続人のおい、めい)に制限されることになりました(民法第九〇一条第二項)。
「遺留分」が引き上げられました
「遺留分」とは、相続人が取得することを認められる最低限度の財産のことです。
これまで、遺留分は、直系卑属(子や孫)のみが相続人の場合、及び直系卑属と配偶者が相続人の場合は相続財産の二分の一、その他の場合は相続財産の三分の一と定められていました。
今回の改正では、このうち「相続財産の三分の一」とされている「その他の場合」の中で、①配偶者のみが相続人のとき、②配偶者及び直系尊属が相続人のとき、または③配偶者及び兄弟姉妹が相続人のときの遺留分が、相続財産の二分の一に引き上げられました。
これは、配偶者の相続分が引き上げられたことに伴い、遺留分についても、相続人中に配偶者が含まれる場合は、すべて二分の一に引き上げられたものです(民法第一〇二八条)
★……法まもる心が築くよい社会-法律は、わたしたちが日常の社会生活を秩序正しく営んでいくためになくてはならないものです。同時に、安全で幸せな生活を実現していくための”後ろ盾”になってくれるのも法律です。そのためには、まず法律をよく知ることが大切です。
なお、遺産相続のときの相続人同士のトラブルを防ぐために「遺言」を作っておくと便利です。
自分で書くことが難しい場合は、もよりの公証人役場で公証人に自分の意思を述べ「公正証書」という形の遺言を作ることもできますので、ご利用ください。
※イラストは原本参照