切り倒された老松 -波平アガリジョー大松-
老松哀れ-永年、波平区民に親しまれ、三世紀余にわたる歴史の変せんを見届けてきた老松、波平アガリジョーの大松は枯花の浮目にあい、去る三月十四日大往生した。
この老松、樹高二〇メートル、樹径三メートル。往年の緑ゆたかな五枝は区民の目を楽しませシンボル的存在だった。なかでも旧暦八月十五夜、区民総参加の観月会には青々とした五枝から垣間見る満月は区民の心に郷愁を呼ぶものだった。
老松、数ケ年前にも枯花の寸前にあったとか。だが、蘇生カンフル剤を注入し、何とか往年の姿をとり戻したとのこと。しかし、昨年猛威をふるったマツクイムシ禍にあい、なすすべもなく無抵抗の中で大往生した。
惜しまれて枯花した老松は昨年六月急に茶かっ色に変色し、区民を慌てさせた。下枝を切り落し何とか蘇生をと、いちるの望みを託したのもっかの間、人様でいう老衰、併せてガンには勝てなかった。老松は県森林組合によって切り倒された。チェンソーを高鳴らせた作業員は容赦なく丘枝をきりきざみ、区民をア然とさせた。何事かと散々吾々に集まった区民は”無念”とひと言。多くの区民に見守られた老松はお昼前大往生した。切り倒された老松の幹はホッカリと大きな穴が開いていた。
三世紀余りの風節に耐えた老松、区民のシンボルだった老松、とかく区民の嘆きは大きく二世松の植栽をと呼びかける声は日増しに高まっている。
※写真は原本参照