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1981年6月発行 広報よみたん / 6頁

診療所だより№5塩見祐一 僕の伯父さんへの手紙

診療所だより No.5 塩見祐一 僕の伯父さんへの手紙
 清ベェもとうとう糖尿病か?親父さん(従って僕の祖父)が糖尿病だったので心配していたけれど。糖尿病、特に成人になってからのは遺伝傾向が強いからね。十年前ものすごく太っていた時から糖尿病はあったんじゃないかな。
 それが急に体重はやせてきてのどが乾き水を一日何lも飲み、夜十数回もおしっこに起きる。そして食べてもやせる。典型的な糖尿病の臨床症状だね。
 だから、近くのお医者さんに行って恐らく血糖と尿糖を検査したんだろう?ケトン体も出ていただろう?そうじゃないとすぐ入院を勧められないよ。そして、しばらくインスリン注射をしていたんだね。まあ、糖尿病は胃の裏側にある膵臓の疲れからくるのだから分泌不足のインスリンを補っているんだよ。
 だけど、膵臓の疲れが段々無くなってくると、インスリンの量も減ってくる。ここで主治医の先生は清ベェのものぐさぶりを見抜いたんじゃないかな?。こいつは絶対に毎日インスリンを打つような性格ではないとね。そして飲み薬に変えたんだよ。生理的にはインスリンがいいんだけどね。どちらかにしても血糖を下げるのだからこれからは低血糖に注意しなければいけない。腹ぺこの時のふるえ、頭痛、動悸、冷汗、脱力感があれば、砂糖などをなめること。
 入院中に教えられたと思うけれど糖尿病の治療の基本は食事療法なんだ。そして体重を標準体重に維持するんだよ。標準体重は(身長-一○○)×0.9±5kgが目安。運動療法は合併症のかねあいで主治医の先生の指示を聞くこと。
 合併症と言えば、糖尿病で一番恐いものがこれ!!インスリンが発見されて以来糖尿病性昏睡は少なくなったからね。糖尿病の合併症は大きく分けて動脈硬化性の血管障害と細小血管障害がある。清ベェの親父さんは脳血栓で亡くなったが、これは動脈硬化から来たものだね。この他に心筋梗塞もよくおこすよ。後の方の糖尿病に特徴的な細小血管症には糖尿病性網膜症とか糖尿病性腎症があって恐いよ。
 また、この両者によると考えられている合併症に糖尿病性神経障害がある。これだと神経が鈍くなっているからちょっとした傷がもとでそこが化膿して、糖尿病性の壊疸になることもある。皆恐いよね。
 本当に糖尿病で外来通院をする目的は血糖をコントロールすると共に合併症を進ませないことになるんだよ。血のつながった伯父さんは清ベェしかいないのだからくれぐれも注意して主治医の先生の言われることをちゃんと聞くんだよ。

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