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1981年9月発行 広報よみたん / 11頁

よみたんの民話 №2 たこかマジムンか 喜名区 話者松田ミヨ

よみたんの民話 No.2 たこかマジムンか 喜名区 話者・松田ミヨ
 ある所にガチマヤー(食いしん坊)の男がいたそうだ。また、その隣には賢い人が住んでいたんだって。
 ある日のこと、ガチマヤーが海で取ってきたタコを食べようとすると、ハガマ(鍋)がない。それで隣からハガマを借りてきてタコを煮たそうだ。
 ところで、タコというものは煮立ってくると、手が上の方でひっくり返りハガマにくっつくそうだ。そのことを知っている隣の賢い人が、タコが煮立っている頃を見計らってガチマヤーのところにきて「私は今、ハガマを使うのでハガマを返してくれないか。」と言って、ハガマにくっついているタコをガチマヤーに見られないように煮汁だけをこぼして、ハガマを持って行った。それを見ていたガチマヤーは驚いたのなんのって。タコを捕ってきて自分一人で食べようとしてね煮ていたはずのタコが消えてなくなり、煮汁だけしかなかったんですから。
 「あれは本当にタコだったのか。それとも化物(マジムン)だったのか。」
 「タコを洗って、火を燃やして煮た。あのタコは化物だったのか。タコだったのか。」とくり返しつぶやいているのを隣で聞いている賢い人は、おかしくてたまらない。しまいにはこらえることができずふき出してしまった。
 そうして、とうとうハガマにくっついているたこを持ってきて、「男のくせに欲張って一人で食べようとするから、私がからかってみただけだ。タコは化物でもなんでもない。タコというものは煮立ってくると、手をひっくり返してハガマにくっつくんだよ。はい、君のタコを返す。」と言って渡したそうだ。
 「ああ、そうだったのか。私は、これは本物のタコだったのか。それとも化物だったのかと思っていたんですよ。」と安心したそうだ。

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