婦人主張大会より 学校結食にもっと関心を 当間明子 (長浜婦人会)
私は、読谷中学校に在職しています。村立共同調理場で、おいしい給食作りを目指して毎日頑張っている調理員の一人です。今、学校給食は「民間委託化」という大きな問題を抱えています。その事で、私は、何度か「学校給食を考える集会」に参加し、数多くの仲間や子ども達の「給食をなくさないでほしい」という声を聞く度に、私にも「何かできる事はないだろうかと常々考えていました。
そこへ「今度、婦人の主張大会に参加してみませんか。」という声がきっかけになり、皆様の前で話す機会を得ました。皆様にもっと学校給食に関心を持って頂き、私達の仕事を理解して頂く事が民間委託化阻止への第一歩であり、一番大きな力となるものと考えています。
幸いな事に、私達は行政面でも大変恵まれた環境にあり、その中で栄養士を中心に、一致団結して給食向上の為に努力しています。
私が「民間委託阻止」を訴える動機になったのは、自分の仕事を誇りに思い、学校給食という素晴らしいものを守り、もっと発展させていきたいと思ったからです。
一口に学校給食と申しますが、大多数の方々には、「子ども達が学校で食べているお昼ご飯の事」だという程の認識で、それがどの様な内容で、どんな状況の中で作られているのかご存知ないだろうと思います。なぜなら、父母参観等で学級にはみえても、給食室を見に来られた方を私はまだ見たことがないからです。
朝食抜きで登校する子ども達が増えている今日、子ども達の最も基盤になる健康な体作りの半分を任せているのですから、皆様にはもっと学校給食を知る義務があるのです。そこで私達は、父母の方々に少しでも学校給食を知ってもらう意味で、父母と子ども達が一緒に試食してもらう機会をつくり、実行してみました所、家庭ではあまりみられない上手な配膳の仕方や、和やか楽しい給食風景を見ることができました。父母からは、「本当においしい食事だった。」等、いろいろな嬉しい反響を得ました。
私達はこのような努力を重ねていく中で、皆様と学校給食に携わる者との間に信頼関係が生まれ、それが学校給食の未来を明るくしていぐものと信じています。
そこで、もう少し調理場での仕事内容等を話してみたいと思います。先ず、調理場の一日は、山と積まれた肉や野菜等の下準備から始まります。野菜は風呂おけ程もある大きなシンクの中でたっぷりの流し水で、四、五回程洗われ、殺菌された包丁、まな板で切る段階を経て、調理されていきます。そのとき配慮していることは、化学調味料等の添加物を殆ど使用しないことです。脂味の少ない上質なお肉やしいたけや、その他の天然のだしをたっぷり使用しています。スープの場合などは、チキンネックで、じっくりと時間をかけて取っただし汁を使用しています。
このように、調理員の愛情が一杯こめられた「安全で、おいしく、栄養のある給食」が熱風消毒された衛生的な食器とともに、子ども達の所へと届きます。
学校給食によって、子ども達は、栄養の知識を得、家庭では味わえない食品や料理を食べるので、偏食をなくすこともできます。また、教師や友人と一緒に同じ釜のめしを楽しむ中から豊かな人間関係を作り出し、食事作法や衛生的なよい習慣を身につけ、心身共に健全な子に育っていきます。このようなことが学校給食の本質ではないでしょうか。
学校給食は、教育の一環として「学校給食法」に定められ、守られているから成せる業なのです。私達は現在、約千八百食の給食を作っているのですが、作る上で一番配慮していることは、衛生面であります。千八百人の子ども達の中には、特異体質の子や、極度に抵抗力の弱い子などいろんな子ども達がいます。そのような子ども達に、いい加減な衛生管理で給食作りをしますと、食中毒を起こす危険性があります。食中毒とは恐ろしいもので、生命を奪われる事さえあるのです。食中毒の中には、ねずみやゴキブリ、ハエ等の害虫による細菌性中毒、農薬や添加物による化学混入食中毒、じゃが芋の芽のように、天然に含まれた自然毒による食中毒等があります。このような中毒を防ぐために私達は細心の注意を払っています。常に手を清潔に保ち食器や調理器具等は、熱湯消毒や熱風消毒をし、じゃが芋も念入りに取り除き、農薬付着が心配される野菜は勿論、バナナ等の果物は一つ一つ洗った上で配食しています。
私は現在、調理員をしながら年間七千万近くになる給食会計を兼務しているのですが、栄養のバランスを考え、献立作成をして下さる栄養士との共同作業で予算を枠一杯に使い、有効に子ども達に環元することを目標に努力しています。
私達が給食費を惜しみなく有効に使えるのは、「もうけを考える必要がない」からです。
しかし、若しそれが民間委託されますと、どうでしょう。お肉など金のかかるものが減らされ、その補いを化学調味料に求め、質の低下した安上りな給食になることが予想されます。今、巷では炭酸飲料や、インスタント食品が氾濫していますが、化学調味料や食品添加物の多く入った加工食品を取り過ぎると「情緒不安定」になるという事が新聞等でクローズアップされています。家庭内暴力や校内暴力が多くなったのも、それらの食生活の乱れと無関係ではないとの報告書も出ています。
子ども達の中には、病気で休んでいても、「きょうはメロンが出る日だったのに」等と献立表をのぞきこむ子がいると父母の方が笑って話されるのを聞いたことがあります。それほど子ども達にとって給食とは楽しみなものなのです。
しかしながら、子ども達は、民間委託に対して何の抵抗も出来ない弱い立場なのです。だからこそ私達良識ある大人が守ってあげなければならないのです。子ども達の健康な体や心をむしばむ民間委託化はすぐそこまで来ています。
もはや私達学校給食に携わる者だけではどうすることもできない情勢になっています。「安い給食」のキャッチフレーズにまどわされることなく、今こそ皆様一人一人が学校給食の重大さを認識して頂き、「安全で、おいしく、栄養のある豊かで楽しい給食」を守る運動を展開し、学校給食をおしすすめていこうではありませんか。