非行 何が彼らそうさせるか 中学生をお持ちのご両親へ 両親-最後のトリデ
中学生年齢は、悩み多き年代、心身の成長過程の中で、いちばん難しい時期にあるといえます。”大ども”あるいは”小どな”などといわれるように、肉体的にも精神的にも子供から大人への、いわば移行期にあります。小学生時代の”児童の心”を残しながら、一方で大人としての意識を持ち始めるアンバランスな状態が目立つ年齢です。具体的には、思春期といわれる第二反抗期の真っただ中にあって、進学・就職という進路問題で自己決定をせまられます。
親の目から見ると、学校の勉強はアッという間に片付けて、あとはマンガを読み、テレビにかじりついて何となく頼りな<思えるかも知れません。チャラチャラと底の浅い生き方をしていると映るかも知れません。しかし、心の中では、自らの課題に直面し、それぞれに悩みを抱いていることが圧倒的に多いのです。
ご両親の中には"今まで特に問題もなく順調に育ってきたのだから悩みなどないはず"と高をくくっている方もおられるようです。でも、順調に育ったからこそ、一人の人間としての目覚めが、新たな悩みを生んでいるともいえるのです。親が考える以上に純粋に物事を見ています。
大人の社会は、言わばホンネとタテマエを上手に使い分けることで動いている面があります。ところが、中学生は、よりホンネの部分で反応します。妥協を許さない一途な考え方に立てば立つほど、大人の世界との摩擦も大きく、それだけ悩みも深くなるのです。
■反抗を受け止めるだけの心の広がりを
わが子が具体的な問題で悩んでいるとき、親はそれを読み取れるかどうか、そして心に響く口のきき方、励まし方ができるかどうかが、極めて重要です。といって、ふだん全身全霊を傾けて子供のことを考えてほしいというのではありません。
子供が反抗的な態度に出たとき、どう受けとめるか親の度量が問われるときです。ふだん使ったことのない乱暴な言葉遣いで子供が反抗してきたとき、こちらも感情で受けてそのまま返すと、そのやりとりだけが異様にふ<らんで、どんどん違う方向に話が行ってしまうことがあります。そうならないためには、その反抗を素直に受けとめてやるくらいの心の広がりを持ち続けたいものです。
■非行への瀬戸際で、問われる親の子育ての姿勢
子供が、非行に向かうか踏みとどまれるかの一つのキー・ポイントは、瀬戸際に立たされた時、親の顔がチラッと浮かぶかどうかです。周囲が自分のことをいつも温かい目で見ていてくれる、という思いが子供にあれば、それが非行に対するブレーキとなっていきます。親ばかりではありません。友達や先輩など子供をとりまく人間関係、つまり"応援団"がどれだけいるか、そして、彼らの助言、励ましを受け入れるだけの心の広がりを子供が持っているかどうかにかかっているのです。それは"自分が好き""人間が信じられる"という気持ちを持てるよう、子供を育てたかどうかという親の姿勢が問われることを意味しています。