③ 文化財の保護並びに文化創造運動の展開
「文化」は人間の優れた営みの中から創造された成果の開花現象であります。私達はこれを正しく受け継ぎ、新しい文化創造の礎にしていかなければなりません。また、文化は豊かな社会を形成する培養体であり、地方自治の確立につながるものであります。
先人の遺した貴重な文化遺産は、村民の絶大なる御協力と関係者の努力によって、歴史民俗資料館を中心に収集、発掘調査が実施されてまいりました。歴史民俗資料館は昭和五〇年、県内初の村立資料館として文化村づくりの一翼を担って開館され、郷土の歴史、民俗、考古学等の調査、研究、資料収集、保存等を行い、広く内外の人々に紹介されてまいりました。調査収集した資料は年々増え続け、現施設は狭隘となり、行き詰まりの状況であります。そのため、歴史民俗資料館の整備事業を実施し、その機能を充実させるとともに、美術作品の鑑賞の場をも設け社会教育の一層の充実をはかってまいります。
村民の文化創造活動の総合的な発表の場である「読谷まつり」は、琉球三味線音楽の始祖「赤犬子」にちなんだ赤犬子琉球古典音楽大演奏会をはじめ一四世紀後半に朝貢貿易の使者となった「泰期」を称えた創作「進貢船」を中心に、読谷文化の発表の機会としてさまざまなプログラムが、村民総参加のもと繰り広げられてきました。今年もひきつづきこの一大イベントをムラおこし運動としてさらに発展させてまいります。
村史編集事業につきましては、これまで「戦前新聞集成」上下巻の発刊、昭和六二年度は「文献編」の発刊作業が行われ、今年度は「民俗編」の調査執筆、「芸能、歌謡、言語編」と「戦争編」の調査を実施してまいります。
読谷における美術、工芸等の創作活動の発表の場である第八回「アンデパンダン展」をはじめ、多くの村民や児童生徒が日本の秀作絵画を鑑賞できる「動く美術館」を継続して開催いたします。 また、先人の進取の気性をたたえ、その魂を受け継ぎ限りない村民の飛躍と幸せを願って建造された「残波大獅子」は、大勢の人々の善意で創られ、今では県下の名物となりました。この残波大獅子と呼応して「残波大獅子太鼓」という若人の情熱あふれる太鼓グループが誕生し、今では、県内外で躍動感あふれる演奏会を催すなど活躍しております。さらに、読谷まつりにみられるように各学校における児童生徒の三味線クラブや地域における子ども会の文化活動が展開されております。このような文化性、村民性、が県内外で多くの期待と関心の的になっております。人歩けば道となり、その道はやがて文化となります。村民一人一人が文化の担い手という認識をもち、より実践することで「二一世紀の歴史の批判に耐え得る村」が実現できるのであります。
したがいまして、今後も地域文化の創造運動を積極的に展開してまいります。
(2)産業・経済の振興に関する施策
わが国における経済は高度経済成長期から低成長時代に入っております。このような経済・社会構造の中にあって、国際化、情報化、高齢化の三化時代といわれて久しいのであります。地域における産業経済につきましては村づくりのもっとも基本的な下部構造でありますので、その時代に相応した施策を展開しなければなりません。それは地場産業の拡充と新たな地域産業の創出に努めることが基本となります。
すなわち、国際化、情報化、高齢化の時代に相応した地域主義の実践が大切となり、地域に根ざした資源、人材、技術、資本などを十分活用し産業としての体質、体力の強化をはかり底力のある産業づくりを推し進めていくことであります。
また、沖縄の特異な経済構造は個別の産業での発展は厳しいものが予想されますので、各産業間の連携を強めるとともに異業種間交流などを深める中から発想の転換、新たな産業を創り出す努力が必要であります。
そこで、今年度において亜熱帯特有の好条件を活かした農水産業の展開、地域特性を活かした商工観光の展開など次のような施策を実施してまいります。
① 農業生産基盤の整備
本村の農業は、広大な返還軍用地等での土地改良事業等を精力的に進めてまいりまして、農業生産基盤の整備とともに農業生産物は増加してきております。作目は依然としてサトウキビが中心でありますが、近年、亜熱帯の気候を活かした野菜、花卉生産などが伸長し農業の展望が開けてきております。
これからの課題としては、国際競争に耐え得る足腰の強い農業をめざしていかなければなりません。
そのためには、特殊病害虫の駆除はもとより自然条件を活かした収益性の高い作目への転換、土地生産性の向上対策などが望まれているところでございます。
村としては、これらの課題に対処すべく先ず農業生産基盤の整備として座喜味、渡具知、西部連道、渡慶次、浜屋、荻川の六地区で土地改良総合整備事業を精力的に進め、座喜味、渡具知地区で圃場整備をすでに完了させております。昭和六二年度までに待望の西部連道、渡慶次、浜屋地区で実に一一七ヘクタールが新たな圃場として整備完了し、一大農場がひらけ農業の展望が広がってまいりました。このことは、正に二一世紀の新しい読谷村の農業の展開が可能になることを示しているものであります。
今年度は西部連道、渡慶次、浜屋地区の残事業と荻川地区の継続分、波平地区の新規着工、宇座地区の新規採択の推進、さらに県営かんがい排水事業(長浜川ダム)を推進してまいります。 また、国の農政は価格政策と構造政策の二本が柱になっておりますが、価格政策においてかなり硬直化している現状にあり、構造改善対策や地域農政推進対策も併せて実施してまいります。
イ、西部連道地区土地改良総合整備事業
本地区の土地改良総合整備事業については、昭和五五年度の事業採択以来、年次的にこの整備事業が進められ今年度で九年目を迎えます。この間七九、二ヘクタールの圃場整備と幹線農道一九七八メートル、排水路二四〇メートルが整備されました。
今年度は、幹線農道の舗装と沈砂池の安全棚を設置してまいります。
ロ、渡慶次地区土地改良総合整備事業
本地区の土地改良総合整備事業については、昭和六二年度までに面整備の分、二四ヘクタールの圃場整備が完了いたしました。
本年度は、残された支線農道と排水路の整備を実施してまいります。
ハ、浜屋地区土地改良総合整備事業
本地区の土地改良総合整備事業については、昭和六二年度で面整備の分、一四ヘクタールの圃場整備が完了しており、本年度は残事業の幹線農道整備と併せて換地処分登記を実施し、全ての事業を終了させてまいります。
二、荻川地区土地改良総合整備事業
本地区は、四年目を迎えております。昭和六二年度までに六、八ヘクタールの圃場が整備されました。
今年度も引き続き九、五ヘクタールの圃場整備を実施してまいります。
ホ、県営波平地区畑地帯総合土地改良事業
波平地区土地改良事業については、県営事業で実施してまいりますが、昭和六二年度に事業採択されておりますので、今年度から具体的な事業として四ヘクタールの圃場整備と七四五メートルの支線農道の整備が予定されております。
へ、宇座地区土地改良事業の推進
本地区については、三一、六ヘクタールの農用地に土地改良事業を導入するための昭和六二年度に地元の事業推進委員会を発足させ事業実施のための同意作業を進めてまいりました。その結果九七パーセントの地権者の同意を得ることができましたので、今年度は事業の採択に向け推進してまいります。
② 県営灌漑排水事業(長浜川ダム)
昭和五七年度から始められた長浜川ダムの建設工事は、これまで水没地の用地取得と工事用道路、仮排水トンネル、及び切り替えトンネル工事が実施されてまいりました。今年度も引き続き事業目標年次の完成に向けて精力的に促進してまいります。
③ 農業構造改善及び地域農政の推進
沖縄の農業は、地理的、自然的条件の制約や生産基盤整備の立ち遅れなどから本土農業との格差は大きいものがあります。そこで格差是正、自立的発展の条件整備のため、農林漁業構造改善緊急対策事業(一次構)、農業構造改善緊急対策事業(二次構)、農業構造改善モデル地区特別対策事業(モデル農構)が制度化され生産基盤の整備、近代化施設の整備、生活環境の整備など様々な事業が実施され、農業の素地づくりとして一定の成果をあげてまいりました。一次構、二次構の成果と反省を踏まえ、地域農業の再編に向け、亜熱帯気候の特性を活かした新しい農業の展開をめざし、沖縄新農業構造改善緊急対策事業(新農構)が新たに制度化されております。読谷村は、昭和六二年度に新農構の実施のための地区指定を受けることができましたので、今年度は、事業計画認定への取り組みと推進活動事業を実施してまいります。
また、地域農政推進対策の一環としての推進活動をはじめ農用地経営規模拡大促進、農地流動化斡旋なども推し進め、地域農業の発展に努めてまいります。
※続く。