村民の皆様!
明けましておめでとうございます。謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
光陰矢の如し、歳月人を待たず。
昔からよくいわれたことでありますが、年月の経つのは、あまりにも早いものであります。
村民の皆様方には、希望にもえ、新たな気持で、新年をお迎えになられたことと存じます。
一九八九年の年頭に当り、村民各位のご多幸とご活躍、ご発展を心からお祈り申し上げます。
昨年も激動の一年でありましたが、村民各位の暖かいご理解とご協力により、一年を無事に乗り越えることが出来ました。
ここに哀心より敬意と感謝を申し上げ、あわせて新しい年が、皆様方にとりまして幸せな充実した年になりますよう、心から祈念申し上げる次第であります。
村民の皆様!
志は高く、視野は広く、実践はたくましく今年も頑張りましょう。
一年の動きを顧みますと、国際政治は米ソの平和へのデタントの歩みが寄り見られ、国内的には、日本の民主主義の成熟度が問われかねない異常なほどの自粛ムード、更にリクルート(株)の構造汚職、消費税等の旋風の巻き起った年でありました。
沖縄県内を見ますと、復帰後、これほど米軍演習の激化した年はありません。正に戦場の島であり、米軍は常軌を逸しております。
その背景には、沖縄に対する日米支配層の露骨な、アンポアンポの差別構造を見せつけられた一年でもありました。
このように厳しい状況下にあって、読谷村民は力を合わせ、平和を目指し、地元にあっては反基地、反演習の闘いを具体的に取り組むと共に、日米関係機関に敢然と訴え主張し、闘ってきた一年でありました。
村民の皆様!
過去(歴史)を知ることは、輝やかしい未来を築くためである。
我々人間の命は有限である。ところが、自治体(市町村)の生命力は無限であります。
したがって、読谷村の村づくりの実践は、今後もその可能性と地域特性を求めて、続いていくのであります。
ここで、新年を迎え、更に前進する為に、過ぎた一年の村政の主な動きを通して、地域の変化や村民の心意気を垣間見ることにする。
▼年度始めの頃までは、村民の間にもやや国体疲れの感もありましたが、それも徐々に回復に向つた。この時期に我々は、歴史的視点とか、民主主義的発想というものの大事さを、あらためて体験した。
▼ほぼ一年を通して、米軍演習の激化した年でもあった。パラシュート降下演習は過去九年分を上まわり、新たに滑走路損壊査定訓練が加わってきた。敵国によって核兵器、化学兵器、生物兵器が撃ち込まれたという想定のもとに行われる物騒な訓練であり、戦場の村と云われた。
村民は一年間に二回(八月、九月)も村民大会を開催し、村民の怒り、村民の要求を日本政府と米軍当局に突きつける、厳しい闘いの一年であった。村民は自主、主体的に果敢に闘った。
▼長年の懸案であった歴史民俗資料館の新増築事業に着手、その二階に村立美術館の位置づけが実現した意義は大きい。
▼中断されていた長浜ダム本体工事の再開。▼新規波平地区土地改良事業が県営としてスタートする。▼第七回アンデパンダン展の開催。▼第七回動く美術館の開催。▼第七回北海道池田町との児童交流事業の開催。▼村営瀬名波団地二期工事。▼古堅南小学校プール着工。▼古堅中学校格技場着工。▼沖縄残波岬ロイヤルホテルオープン、読谷村の村づくりの一環として誘致する。地域経済活性化と高齢化社会に向け、地元に働く場を創出する為である。▼第四回残波まつりの開催。第五回(独自事業としては第一回)健康づくり村民のつどいを開催。自らの健康は自ら守る、という意識啓発と村民ぐるみ運動への第一歩である。第十四回よみたんまつり開催。全国的に(沖縄も含めて)自粛と称して、まつり、催しもの、行事等が中止されていった。理由は天皇陛下の病気のご快癒を願うと言うことである。まつり実行委員会は全会一致で、まつりは中止すべきではなく、予定通り実施すべきである、と決定した。まつりをするから、人間の病気の快復を願わないという村民はいないであろう。
村民の深いご理解とご協力の下に開催ができ、盛会裡に終了することができ感謝している。
今回のまつり開催を通して感じたことは、読谷村民の間に、憲法的発想と言いますか、或は、地域民主主義的発想と言いますか、要するに、物事をクール(冷静な、理知的な)に眺めうる目が、生きづいていることを実感したことである。
それは又、別の見方をすれば、村民自らが、自分の住んでいる読谷村を愛し、今日まで盛り上げてきた手づくりの、よみたんまつりを大事にしたい、と言う証なのかも知れない。
▼第一回平和創造展が十二月八日から十一日までの四日間、中央公民館で開催された。予想をはるかに上まわる出来ばえの内容であった。準備にあたった職員、資料物品等でご協力、ご指導いただいた皆様方に心から敬意と感謝を申し上げます。
アーチ門の左手には、超一トン爆弾が置かれ、参観者の度胆を抜いた。
展示場に入り順路に従って進むと最初に、バシルホールから「琉球は武器のない国」「戦争をしない国」と聞いてびっくりしたと云 申すまでもなく、戦前の役場は、国策としての戦争遂行の為の業務を命ぜられた。現在の役場は、平和憲法の精神に立って、村民の生命と財産を守ることが、第一義的任務である。
このように戦前と戦後では大きな違いがあり、市町村役場が、平和創造の為に、日常的に活動を展開することは当然であります。
アーチ門に「戦争を起すのも人間である。しかし、同時に戦争を拒み平和な社会を創り得るのも、又人間である。」と印象深い教訓があった。
こうして読谷村民の一年間の歩みの足跡を顧みると、厳しい多忙な年ではあったが、例年の諸行事に加えて、人間の幸せの原点とも云うべき、健康問題と平和の問題を具体的に取り組んだ意義は大きく、特筆すべきことだと思う。
こうして一年が過ぎ、又、新しい年を迎えることになる。
新年の御来光が地上に燦然と輝くごとく、今年は更に、村民の皆様の上に、輝ける幸せが訪ずれますよう、心から祈念を申し上げ、新年のご挨拶といたします。