読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1991年6月発行 広報よみたん / 8頁

【見出し】よみたんの民話読谷村民話資料集より再話 アカナーとウナー

 昔、昔、ある南の島で人々は、畑を耕し、魚を取ったり、みんな仲良く楽しく暮らしていました。
 しかし、この平和な島に恐ろしいことがおこりました。農作物は荒らされ、小さな子供たちがさらわれ、牛や馬や豚がいなくなりました。
 「きっと、山奥に住んでいるあのウナー((鬼)のしわざにちがいない」
と島人たちはささやきあっていました。島の若者、アカナーは、
 「みんなを因らせている悪いウナーをどうにかして退治しなければならない」といろいろ考えました。
 いいことを思いついたアカナーは、ある日、土の舟と木の舟を造りました。木の舟はでこぼこに下手に造り、土の舟はなめらかに上手に造りました。
 そして、山奥ヘウナーを訪ね、
 「おい!ウナーよ、一緒に釣りに行こうではないか。舟が二つある。おまえの好きな舟に乗っていいぞ」と、海へ誘いました。
 ウナーは形のいい、土の舟を選び、アカナーは木の舟に乗って、二人は釣りを始めました。
 しばらくするとアカナーの木の舟は魚でいっぱいになったけれども、ウナーは一匹も釣れません。
 「よう、アカナー、おまえはどんどん釣れるのに、どうしておれには釣れないのか」
 「これにはコツがあるんだよ。知恵を働かせなくちゃダメだ。よく釣れる方法を教えてあげようか」 「たのむよ、早く、早く」
 「舟べりの方にな、おしっこをひっかけて、そこをカイでトントンたたいてごらん。その音で魚がたくさん寄ってきて、きっとうまく釣れるよ」
 「よし!やってみよう」
 ウナーは早速アカナーに言われたとおり、おしっこをかけてカイでトントンたたいてみました。
 すると、みるみるうちに土の舟はまつ二つに割れて、ウナーは海の中でアップアップおぼれてしまいました。
 「悪どいウナーめ!今こそ死ぬがいい。二度と島へ上がってくるんではないよ」と、アカナーは木の舟を力いっぱいこいで、急いで逃げて行きました。
 けれども泳ぎの上手なウナーは島へ泳ぎ着き、目を光らせ、カンカンに怒り、「アカナーの奴め、よくもこのおれを騙したな、絶対に許すもんか」と、アカナーを捜し始めました。
 とうがらし畑に隠れていたアカナーは、とうとう足の早いウナーにつかまってしまいました。今にもアカナーをまる飲みしそうに顔をまっ赤にしてにらんでいました。
 「ちょっと待ってくれ!おれが悪かった。お詫にいいことを教えてあげるからその手を離してくれ」
 「なんだ。いいこととは、また騙すつもりか、今度こそひどい目にあわすぞ。いいか、アカナー」
と言って、やっと手を離しました。
 「ほら、ここにとうがらしがいっぱいあるだろう。それを目にすりこむと、自分が行きたいところが見えるよ」
 「ほんとかい、それはいい、おれは唐の国や大和の国へ行きたいが、ほんとうにそこが見えるんだろうね」
 ウナーは嬉しくなって、これまでの怒りもふっとんで、早速とうがらしを摘んで目に入れ始めました。
 「あっ、痛い!痛い!痛くてたまらない。目が開かないぞう」
 そのすきに、アカナーはどんどん走って逃げました。
 今度は、アカナーは川のところまでやってきて、そばにある大きなユシギーを見つけると、木に登りました。
 一方、目の痛みに耐えられないウナーは、少しでも早く目を洗ってしまおうと、水を求めて川へ来ました。そして、うつむいたとたん、「おや!川の中にアカナーがいるぞ、今度こそ逃がしてやるものか」と、木の上にいるアカナーが写っているとも知らず、川の水をガブガブ飲み始めました。
 ところが、飲んでも飲んでも、アカナーはまだ川の中にいるではありませんか。-その様子を木の上から見ていたアカナーは、おかしくておかしくてたまらなくなり、声をあげて笑ってしまいました。
 木の上で笑っているアカナーを見つけたウナーは、ますます怒って木に登りました。もうダメです。
逃げるところがありません。
 悲しそうな顔で空を見上げたアカナーは「トートーメーさい、トー
トーメー、愛しいのなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いとお思いなら破れたモッコを降ろして下さい」と一生懸命お祈りをしました。すると、空から鉄のモッコが降りてきました。アカナーはす早くモッコに乗って行こうとしたとたん、ウナーがやってきて、アカナーの片方の足をかみ切ってしまいました。
 アカナーの乗ったオーダーは、そのまま空へ上っていきました。
 また、ウナーもそれを真似て、「トートーメーさい、トートーメー、愛しいのなら鉄のモッコを降ろして下さい。憎いのなら破れたモッコを降ろして下さい」と、言うと破れたモッコが降りてきました。「しめた!アカナーに追いつけるぞ」と、喜びいさんでモッコに乗りました。空を高く高く上った頃、モッコのひもがプツリと切れて、ウナーはそのまま落ちて、ユシギーにぶちあたってほんとうに死んでしまいました。
 それから、お月さまに助けられたアカナーは、お月さまと一緒に不自由な片足のアカナーが見えるでしょう。
 また、ユシギにあたって死んだウナーは、その恨みで、蚊になってユシギの実の中に入っているそうです。
※トートーメー(お月さまのこと)
※ユシギ(イスノキ。台風に強く材質も固いので屋敷の防風林や、くし、そろばんのたま、おはしなど に利用されている)

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