村立歴史民俗資料館の織物資料を展示した平成四年度企画展「読谷の織物」が十一月七日から同資料館で開かれている。十二月二十六日まで。
沖縄各地には優れた多彩な工芸があるが、なかでも、南島の自然や風土の中で長い経験の積み重ねと創造力によって築かれた織物文化には目を見張るものがある。
読谷においても古くは、読谷山花織、芭蕉布、木綿布が織られ、特に庶民の着物としてのバサージン(芭蕉着物)やムミンジン(木綿着物)は、戦前まで盛んに織られていた。
会場には、読谷の織物の歴史を作ってきた織手五人の「私と織物」のエピソードを写真入パネルで紹介、「織りの道具」「織りと染料」「織物の素材」「絣」で構成され、染織に使われた藍やシャリンバイ福木などの実物資料、標本などが展示されている。
また、展示室着物コーナーには、資料館がこれまで十七年間にわたって収集してきた、バサージン、ムミンジン、イトウジン(絹着物)など五百点余が所狭しと展示されているのは圧巻である。
縦縞や格子、緋、型付などの技法を取り入れて織られた着物一枚一枚に織る人の心がこめられ、その息づかいが聞こえてくるようである。
戦前まで、男女、大人子どもが着けたバサージンやムミンジンに昔をしのぶ人、また、「昔の人はこんなふうにして着物を作って着けたのか」と感動する戦後っ子、「織物の心」にふれることができる秋にふさわしい展示会である。