むかし、むかしのことです。受水走水というところに一本の大きな木がありました。ひとつの折れかかった木の枝のくぼみに雀の巣がありました。
雀は、毎日そこへやってきて、えさをついばんでは羽をひと休みさせていました。
雀は正直者だったので、
「おまえは米を食べて生きなさい」と言われていました。そうして、この雀はいつも人の作った米を食べて育ち、余った米は自分の巣に運んでいました。
ある日、雀はそこの水を飲むと、パタパタともがき、フラフラ、ヨレヨレ木から落ちてしまいました。 これを見たある人が、
「ふしぎなことだ。雀が水を飲んでいる様子だったが、どうしたのだろう。死んでいるのかな」
と、羽をさすって水をすこし飲ますと元気になって飛んで行きました。
「これは何かあるな」
と、木に登ってみました。
すると、木のくぼみに米粒があり、水が溜っていました。指を入れてなめると、変な味がしたので二回、三回と飲んでいるうちに、たいへんいい気持ちになりました。
「あゝひょっとすると、これを飲んで、雀は酔ってパタパタしたんだな」
と、思いました。
雀が毎日ついばんでいた米の食べ残しに雨が降って水が溜り、発酵してもろみになっていたのです。
人間はこれをヒントにして酒を作りました。
また、その側に御穂田という田んぼがありました。鳥が米をくわえてきて、この田んぼに落とし、それから稲が生え始めたということです。田んぼの稲を刈りて、神様に供えたことからウマチーは始まりました。
今でも沖縄では、旧暦二月、三月、五月、六月にウマチーをやっています。
注 受水走水
アガリウマーイの拝所の一つで、玉城村百名の水田地帯にあり、御穂田と称する神田に注ぐ 水源地。岩間から泉が湧き出ている。
ウマチー
沖縄諸島で稲妻にかかわる四つの祭り。二月、三月、五月、六月におこなわれる。王府より日 を選んで村々におこなわせたが、明治以後は旧暦十五日に定日化した。