(5)読谷飛行場転用計画の推進
昨年五月一五日、沖縄県は復帰二〇周年を迎え、沖縄振興開発特別措置法が延長され、第三次沖縄振興開発計画の策定と向こう一〇年間の沖縄県における国の施策が決定されました。この第三次沖縄振興開発計画の期間は、読谷飛行場転用計画を実現するための重要な時期だと認識するものであります。
沖縄県においては、第三次沖縄振興開発計画の一環として、返還軍用地の跡地利用を促進するために努力されており、読谷飛行場転用計画の全体計画をベースにして、返還地部分の計画策定に向けて沖縄県と協議を進めているところであります。計画策定にあたって、現地の条件整備の課題として求められていることは、黙認耕作問題の解決と事業主体となる農業生産法人の設立であります。
黙認耕作問題の解決については、管理権限者である那覇防衛施設局、沖縄総合事務局との協議を行うとともに、解決に向けて具体的な作業が出来る方策を検討しております。事業主体となる農業生産法人については、旧地主関係者が自らの問題として、解決に向けての尚一層の努力を望むものであります。
読谷飛行場転用計画の骨格をなす国道五八号嘉手納バイパス事業は、平成四年度県道六号線以南の現地測量業務が行われています。読谷飛行場区域への路線については早期に実現できるよう関係機関へ要請しているところであります。
なお、読谷飛行場全体の転用計画を実現するためには、米軍のパラシュート降下演習場の撤去等の課題もあり、今後とも村民のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
(6)庁舎建設の推進
庁舎建設につきましては、平成三年に庁舎建設基本構想を受け、その具現化に向け取り組んでいるところであります。建設場所については読谷飛行場転用計画の村民センター地区内に位置づけ沖縄県、那覇防衛施設局、沖縄総合事務局、米軍等の関係機関に要請を行ってまいりました。 一方役場内でも準備委員会を組織し、関係課とも調整をしながら基本計画策定に向けた業務を進めてまいりました。庁舎と中央公民館の建設に向け、具体的に調査研究を行い、昨年は「村民センター地区整備基本構想」と「読谷村役場庁舎及び中央公民館建設基本計画」を策定致しました。今年度は、更に関係機関と具体的な用地問題の調整を進めつつ、基本設計を行い建設に向けての必要な諸条件の整備をすすめてまいります。
(7)平和行政の推進
平和は人類共通の願いであり、戦争のない社会、核兵器の脅威から解放された社会こそが人類のめざす社会の理想像であります。こうした理想像を実現するためには、全ての人々が戦争と平和について考え、話し合い、地道な平和運動を推進していかなければなりません。平和は自らの意思と非暴力の闘いでかち取るものなのであります。
本年度も、過去の悲惨な戦争体験を風化させることなく、その教訓を正しく次の世代に伝え、世界の恒久平和の実現に向け、本村の「平和条例」の趣旨に基づき、平和創造展等の平和事業を推進してまいります。
(8)「ノーベル平和賞を夢みる村民基金」収益金事業の推進
本村の歴史・伝統・文化・産業等の特性を活かし、自ら考え、自ら実践する地域づくりをめざし、昭和六三年度にこの基金を設けました。この間、各区の伝統芸能の継承・保存等の文化活動に助成したり、村民のアジア、ヨーロッパ研修や国内研修などの「人づくり」事業、特産品の開発事業、緑の環境づくり事業など一定の成果をあげ喜ばれているところであります。
この助成事業は村民の自主的・主体的・創造的活動を促すことにより、本村の目標とする「人間性豊かな環境・文化村」づくりを進める原動力となるものであります。したがって、村内諸団体、村民のユニークな発想と熱意あふれる地域活動を期待し、継続して助成を行ってまいります。
(9)海外移住者子弟研修生受入事業
沖縄は、戦前、戦後を通して海外に多くの移民を送り出してまいりました。初期の頃の移住地での生活は、苦難の連続であったといいます。苦難苦渋の歴史を経て今日、南米各国や北米など多くの読谷村出身者が活躍中であります。しかしながら、遠く離れていると一世、二世達の思いとは異なり古里「沖縄・読谷」という意識を持って生活する若者たちは次第に少なくなり、移住地と古里をつなぐ心の懸け橋が必要となってまいりました。
そこで、南米各国等から海外移住者の子弟を研修生として受け入れ、技術の習得や村民との交流を通して社会の発展に寄与する人材の育成と移住国と読谷村の友好親善に資するため本事業を実施することに致しました。
昨年八月に実施要綱の決定以来、南米各国へ推薦依頼を申し上げたところでありますが、現時点までにまだ研修生の応募はありませんので今後応募のありしだい対応してまいります。
(10)行政区改善の推進
本村における行政区は、生活共同体あるいは地域共同体的な性格を有し、自主的組織として活発にコミュニティー活動が行われております。その行政区も終戦後の軍用地接収等の問題で従来の集落形態が歪められ、また宅地開発等の進展で一定地域に新たな住宅地域が形成されるなど既存の行政区では包括できない状況があります。このような状況に対処するため鋭意努力しているところでありますが、どうしても既存の行政区に加入できない地域は行政事務連絡員を設置し行政運営が円滑に行えるよう努力しております。ちなみに、昨年度は一二地域、一、五六九世帯について業務委託をしてまいりました。本年度も引き続き行政事務連絡員制度を継続してまいります。
行政区は村民一人びとりが主体的に参画し、自らの地域づくりをはかろうとする社会組織であり、協力と信頼の村づくりのために今後とも頑張ってまいります。
(11)緑化及び美化運動の推進
近年、地球的規模で緑が喪失し、それに関連して窒素酸化物等の増加による生態系の破壊など世界的に緑の重要性が叫ばれております。
本村では、平成四年度に「足もとから緑を増やそう!」をテーマに村民による植樹祭を開催し、村民一人一人が緑豊かな郷土づくりに参加する運動を展開してまいりました。また、平成三年度から進めてまいりました新沖縄林業振興特別対策事業は親志砂良原に緑化用苗畑を造成し、昨年度は樹苗生産用温室の設置と作業用建物兼管理室を建設してまいりました。今年度は長期的な視点での読谷村緑化計画を策定し、村民ぐるみで緑づくりに励み、快適な環境づくりに努力してまいります。
美化運動につきましては、昨年より空き地や花壇の登録制を手掛け、花の苗の無料配布を行ってまいりました。特に婦人会を中心に公共施設やバス停留所周辺その他の空き地に四季の草花が植えられるなど美化運動が繰り広げられております。
今年度はこれを更に発展させていく為、先進的農業地域活動支援事業の一環として「花のむらづくり推進事業」を導入し、花を活用した潤いのある豊かな地域社会づくりを地域ぐるみで取り組んでまいります。
(12)職員の増員について
多様化する行政サービスと新しい行政需要の増大は、もはや現在の陣容では対処しきれない状況となっており、村民福祉を増進するためには必要最小限の増員を余儀なくされております。そこで、厚生課に二名、税務課に一名、社会教育課に一名、出納室に一名の増員を計画しております。
厚生課については、福祉八法の改正に伴う措置事務の町村への移譲による対応であります。社会教育課については社会体育を中心に社会教育全般の一層の充実をはかるためであり、税務課については課税客体等、業務量の増大によるものであります。出納室については予算規模、業務量等の増大による増員を必要と致しております。
五、おわりに
一九九三年(平成五年)度予算につきましては、これまで申し上げました諸施策を中心に次のように編成致しました。
一般会計
七、二五五、八八八千円
診療所特別会計
一六九、七六六千円
国民健康保険特別会計
一、九一〇、三八六千円
老人保健特別会計
一、四六六、四六四千円
水道事業会計
六八八、七四三千円
以上の五会計で一一、四九一、二四七千円となり、対前年度伸び率は七、五%になっております。さらに、今議会は議案十三件を提案してありますが、このほかにも数件の議案を追加提提案する予定でございます。
最後に、本村がかかえております諸問題の解決にあたっては、職員一体となって取り組んでまいります。議会議員をはじめ村民各位の一層のご協力、ご指導をお願い申し上げ、施政方針といたします。
一九九三年三月一一日
読谷村長 山内徳信