むかし、あるところに おばあさんがひとりで住んでおりました。
おばあさんは、毎日、山へ薪になる木を切りに行き、それを売って生活をしていました。
ある日、いつもより上等な薪を束ね、軒下に積んで、
「あしたの朝は早起きして売ってこよう。やれやれ」
と、寝床に入りました。
あくる朝、ガラリと雨戸を開けて驚きました。軒下には、きのう取ってきたばかりの薪一束もありませんでした。
「だれが、こんなばあさんの薪を盗むのだろうか」
と、考えましたが、思いあたることがありません。
せっかく難儀して取ってきた薪を盗まれたばあさんは、腹が立つやら、情なくなるやら。
「よし!きょうはずっと起きていて、盗人を捕まえないといけない」
と、一晩中、軒下のすみっこの方に身をかがめていました。夜もふけて、しだいにうとうとしてくると、いつのまにかスーツと吸いとられるように天に引きあげられてしまいました。
またたくうちに、天まできたばあさんは、びっくりして、
「ここはどこだ。ここはどこだ」
と叫びました。
すると、あたりにひびきわたるような大きな声で、
「ここは天なんだ」
と、聞こえてきました。
周辺を見まわすと、小さく積みあげられた山、大きく積みあげられた山、さまざまな山がありました。
めずらしそうにながめて、
「これは何ですか」
と、聞くと、
「これは人の果報だよ」
と、神様は言われました。
小さな山、大きな山、ばあさんは目をまるくして、
「あそこのいちばん大きく積まれた山はだれのものですか」
と、尋ねると、
「あれはジョンカニーの果報なんだよ」
神様は答えました。
「ジョンカニー?いったいその人はどこにいるのですか」
「ジョンカニーはまだ生まれていないが、その人の果報だよ」
と言うと、ばあさんは、
「それなら、その人が生まれるまで、わたしに借して下さいませんか」
と頼みました。
神様は心よくジョンカニーの果報をばあさんに貸して下さいました。喜んでいるうちに、ばあさんは、またいつのまにか自分の家へ戻っていました。
そして、ばあさんは、そのときからどんどん金持ちになり、りっぱな家を建て、鉄の門を作りました。
それから、しばらくして、その門のところで、みすぼらしい乞食のような女が、赤ちゃんを産みました。
オギャー、オギャーと泣く赤ちゃんの声で外へとびだしたばあさんは、
「まあ、あなたは、わたしの門のところで、その子を産んだんだね。それで、その子の名前はなんとつけたのかい」
と、聞きました。
「この子はあなたの門の下で産まれたので、ジョンカニーと名付けました」
と、答えると、
「なるほど、そうだったのか」と
ばあさんはひとり言を言い、
「そうかい、でもあなたは、こんな姿だし、子どもを育てるのもたいへんでしょうから、その子はわたしがりっぱに育ててあげるのでわたしの養子にくれないか」
と、お願いをしました。
女はしばらく考えると、小さな声で、
「ではよろしくお願いします」
と言って、子どもをばあさんに預けると、立ち去って行きました。
それから、ジョンカニーはすくすく成長し、ばあさんの家もますます栄え、ふたりは幸せにくらしたということです。