池原玄夫区長を団長に「まつりインハワイ」出演には、楚辺区の先輩方を含め、青年男女の総勢七十五名のエイサー隊を編成。十六日に旅立ったエイサー隊の一行は十九時間の時間差をものともせずに元気にハワイ・ホノルル空港に降りたち県人会の方々の暖かい出迎えを受けて一路、市内観光へ。また、池原団長ら五人の代表団は中途、ハワイ州知事への表敬訪問を実施。知事公舎では沖縄出身のウチマ・ジョン補佐官が面会に応じ「まつりへ参加下さりありがとう。皆さんのハワイ訪問を心から歓迎します」とあいさつ。これに応え池原団長は「ハワイには、移住した多くの楚辺区民の方々がお世話になっている。まつりへの参加のためにきましたが、今後とも末長く交流を深めて頂きたい」と述べ、本村の伝統工芸『読谷山花織』が州知事へと贈呈された。
勇壮にエイサーを披露
ハワイ観光で英気を補った楚辺青年会の男女は十八日の「盆踊り大会」に出演。ハワイの方々をはじめ、北海道や富山県、石川県など日本各地から参加した芸能集団が一堂にカピオラニ公園に集い、国際色も豊かに芸能フェスティバルが賑やかに繰り広げられた。
まつり広場に設けられたやぐらを中心に、各地の「盆踊り」「太鼓」「リズミカルダンス」などのプログラムが次々に展開される中かの有名な山・ダイヤモンドヘッドのシルエットが夜空に浮かぶ頃、ミス沖縄(翁長孝枝嬢)の紹介を受けていよいよ「楚辺エイサー」が登場。読谷山花織のウッチャキ姿も凛凛しい男性と浴衣姿の可憐な女性らが「エンヤーサーサッ」「ハーイアッ」の掛け声とともにエイサーの演技が開始されると、まつり会場も一段と盛り上がりを見せ雰囲気も一変。打ち鳴らす大太鼓、小太鼓の勇壮・ダイナミックな響き、エネルギッシュで優雅な舞いは、会場を取り巻く多くの観衆を圧倒。演技に魅せられエイサーの輪の中へ飛び入り踊る人々、「オーワンダフル!」と拍手を送る人など、楚辺エイサーの演舞は一際多くのフラッシュを浴び、まつり気分は最高潮に達していた。
パレードの勇姿に歓声
まつりインハワイの目玉は、十九日に行なわれる「まつりパレード」。この日の午前、出発地点のアラモアナ公園にはパレードに参加する約二十団体が集結。国際色豊かに趣向を懲らした参加者らが出発の時を待つ。
ハワイ州旗を先頭に、午前十時の時報を合図に壮観なまつりパレードが始まった。地元ハワイのブラスバンド隊やカラフルなコスチュームをまとったチャーミングなチアガール達、オープンカーからにこやかに手を振る各国代表のミス嬢や著名なゲストらに加え、日本各地から参加した郷土芸能の踊り手や戦国大名行列、民族衣装の人々など、数千人の行列がホノルル市のメインストリート(カラカウア大通り約ニマイルの道程)を練り歩く姿は実に圧巻。
このパレードの中にあって、三味線の音に合わせてリズミカルに太鼓を連打。掛け声も勇ましく揃いの衣装で華やかに踊る楚辺エイサー隊の勇姿には、沿道を埋め尽くした観衆の注目を一心に集め、大きな歓声が沸き起こっていた。
【手作り料理で労をねぎらう】
二時間余のハレードを終えた終点(カビオラニ公園)では、楚辺エイサー隊一行の労をねぎらおうと、多くの県人会の方々が家族連れで待ち受け一行を歓待。公園広場にテントを設営し、みんなで持ち寄ったという手作り料理や飲み物類などの数々を準備してエイサー隊を接待。懇切丁寧な県人会のもてなしは、よリ一層エイサー隊を感激させ勇気を与えた。
交流会の場でローレイン金城・県人会副会長は通訳を通して「みなさんをお迎えして県人会のみんなが喜び、明日の踊り(芸能交流)を楽しみに待ち望んでいる。みんなで作ったおいしいご馳走で心から皆さんを歓迎します」とあいさつ。これに応え、池原玄夫団長は「多くの県人会の皆さんが私達のために素晴らしいご馳走を準備して頂き感謝します。皆さんが読谷を訪れる時には私達が歓迎しますので一度は是非、芸能の読谷、三味線の始祖・赤犬子のある楚辺に来て下さい。今日は皆さんと十分に交流を深めていきたい」とお礼を述べ、その後、交流会場では日本語を話せない二世、三世らの方々や本村出身の方々とが、言葉は話せないまでも身振り手振りで語らう微笑ましい光景が見られ、和やかに交流が深められた。
なごり惜しい交流会の時間も迫り、一行は、県人会の心暖まる歓迎へのお礼を込め、県人会の前で再度、エイサーや楚辺区の伝統芸能「イリベーシ」を披露して交流会場を後にした。
琉舞に感動の拍手と涙
二十日には「沖縄郷土芸能フェスティバル」をハワイ沖縄センターにて開催。第十四回を数えるハワイまつりの中でも、県人会との交流を目的に郷土芸能の披露を行なったのは楚辺区が初めて。
それだけに、県人会の役員の方々も「初めての経験なだけに参加者の人数把握に気がきでなかった」という。ところが、役員らの心配をよそに会場には続々と人々が集い、準備した椅子が足りない状況となって関係者は嬉しい非鳴。
満員の観衆(四百人余)を前にしてステージが開幕。踊り手らは楚辺区に伝わる芸能「松竹梅」「加那ヨー天川」「万才」など、十三演目の琉舞を熱演。大勢の観衆は、地域の伝統芸能がそのまま青年らに受け継がれている姿に感動。フィナーレのエイサーでは観衆も総立ちで拍手を送り、カチャーシーでは舞台と観衆とが一体となった踊りの人波が広がり、会場は熱気に包まれ、人々は感激の涙を流して喜んだ。
一方、楚辺区ではハワイに派遣する団員に字誌編集委員(池原昌徳委員長)らをメンバーに加え、同区出身のハワイ移民者の調査を実施。滞在期間中、編集委員は精力的な活動を行なって多くの関係資料を収集し実りある成果を収めた。また、今回のまつりではハワイの日本語ラジオ番組(宇良恵子アナウンサー)が楚辺エイサー隊の活躍ぶりを連日にわたって取材し放送。その模様はハワイ州全土をはじめ、沖縄でも放送されるなど内外に大きな反響を呼び起こし好評を博しました。
本村の楚辺区が、初の海外エイサー出演での成功を収めた陰には、参加者から「ハワイ在住の沖縄人が肝心の支えとなって楚辺エイサー隊に勇気を与えてくれたことが大きな成果につながった」と県人会や村人会らの全面的な協力を高く評価。また、ハワイ在住の方々からは「将来を担う若い青年らが地域の伝統文化に情熱を傾け継承している姿は、多くのハワイ在住の人々にも感動を与えてくれました」と称賛、そして、ハワイでのエイサー出演の大役を成し遂げて帰国した青年男女の表情には自信と誇りがみなぎっていた。