琉球の歴史において政治・経済活動の拠点であった城(グシク)は、人々の生活を豊かに演出する文化創造、祈りの空間であった。
それはまさしく、祖先の魂が躍動する歴史ドラマの舞台であり、めぐり来る時のなかで私達は、祖先との対話を果たすため座喜味城を天と地が一体となる野外劇場と設定し、アジアから世界に視野を広げ、読谷の大地を土台にして羽ばたき、読谷・沖縄の文化と世界の文化が出会い、世界の人々の心がふれあう平和的なイベントにしたいという企画のもとに「城フェスティバルin座喜味」が九月二十三日~二十五日の三日間、座喜味城跡にて催され、多彩なプログラムが展開されました。
名画「月光の夏」に感涙
「新風の目会」-「城フェスティバルin座喜味」の初日は、ユンタンザむらおこし塾第一期生「新風の目会」(玉城国二会長)主催による「月光の夏」の映画会が、午後二時に総合福祉センターで、夕方には座喜味城と二回にわたり上映。城跡での野外上映会では、特設の大型スクリーン(横五、四㍍・縦三、六㍍)に写し出される映像・物語が、訪れた約三百人の人々に大きな感動を与え、涙を誘っていた。
昨年に続き、今回で二回目の名画観賞会を開いた玉城会長は「かつて軍用地であった城を護り、正しく保存する中で城を活用し、文化遺産を見直すことや、むらおこしの観点から映画観賞会を行っている。現在はテレビ化の時代になり家族のコミュニケーションが少なくなっている。野外映画の観賞を通して家族の話題となり、文化財を大切にする心が育まれてくるものと思う。城フェスティバルに併せ、今後とも毎年続けていきたい」と語った。
オペラ「リゴレット」に喝采
城フェスティバルの二日目は、城跡を舞台に、伝統的なイタリアオペラ劇を公演。会場には村内外から約千六百人余の人々が詰め掛け、城内は超満員の観衆で膨れ、熱気に包まれた。
物語は、父と娘の感動的な愛のドラマで第一幕は「華やかな舞踏会」の場面に始まり、第二幕「恋の告白」、第三幕「宮殿にのり込む父」、第四幕「復讐と娘の死」の場面からなり、城に夕闇が迫つ、城壁に月光が降りそそぐ頃、ドラの音を合図にステージの幕が華やかに開いた。
ピアノやシンセサイザーの奏でるメロディーと併せ、オペラの歌声が高らかに城内に響き、ステージで繰り広げられる幽玄なオペラ劇は、観賞した人々の心を揺さり、幕間や劇のハイライトシーンでは「ブラボー!ブラボー!」の歓声が飛び交い、大きな喝采が城を包んでいた。
今回演じられた「城劇・オペラリゴレット」は、今年の県芸術祭(芸能・写真・美術など十二月まで県内各地で開催)の開幕をつげる公演であり、しかも城でオペラ歌劇が上演されるのは画期的なことで県内では初めての試み。
公演は、県と読谷村とで共催し、沖縄オペラ協会の翁長剛代表が総監督を務め制作にあたった。
盛況を極めた公演に対し、二十八日午前、翁長夫妻が役場を訪ねて山内村長と会談。席上、翁長代表は「城でのオペラ上演は十二年来の夢であった。今回のオペラは質的にも高く、全国にも誇れる自信をもっている。プロ以上の仕事ができたものと喜んでおり、読谷村の協力に心から感謝している。このままではなく(一回きりの公演で終わらせることなく)、今後二十年間は城での公演を継続していきたい」と情熱を燃やし、城演劇の魅力を高く評価した。
これに、山内村長は「文化財は活用してこそ初めて生きてくる。城跡の隅々に響きわたる素晴らしいオペラ劇に感激した。城でのオペラの公演は県内をはじめ、日本国内でもおそらく初めてではないだろうか。翁長監督の熱意に感謝します」と述べていた。
なお、公演に先立っては、城でオペラ歌劇が上演されるという本村のユニークな試みに、村内外の関心も高く、入場整理券の配布開始から数日でチケットは出尽くし、また、公演終了後の帰り際には「城でオペラを見ることが出来るなんて夢みたい」の声と共に「すごく感動した。さすが読谷村」や「城でオペラを公演できる読谷村は素晴らしい」との話し声が聞こえてきた。
「ユンタンザ ムラアシビ」
-各字の伝統芸能を一堂に-
”心豊かなムラアシビを再現しよう”--と、城フェスティバルの最終日(二十五日)には、村内の各字に伝わる伝統芸能を一堂に集めた「第二回ユンタンザムラアシビ」が催され、訪れた三百人余の観衆を魅了した。
ムラアシビは、一九八五年に村内二十三番目の区として誕生し、伝統を築きつつある大添区の婦人らによる優雅な「鷲ヌ鳥」の舞いでオープニング。続いて、主催者を代表して伊波清安教育長が「各字が独特の伝統芸能を築き、昔から親しまれてきた芸能が座喜味城で披露される。それぞれの素晴らしい演技を、月を眺めながら見て頂きたい」とあいさつ。その後、民俗芸能プログラムヘと移り、舞台では、渡慶次の「若衆特牛節」や現代歌劇「悪魔狂」、高志保の「天川」、伊良皆の「久志の若安司道行の場」、大湾の「蝶牡丹」、楚辺の「松竹梅」の芸能が次々に披露され、訪れた観衆の目を奪っていた。
今回、演出された「悪魔狂」は四十三年ぶりに復活し、また、「天川」は三十五年ぶりに名優コンビでの共演。「蝶牡丹」は終戦直後以来の上演とあって、主催者の期待に応える催しとなり、関係者をおおいに喜ばせた。
ムラアシビは、昔からあった本村の各字に伝わる民俗芸能を掘り起こすことをねらいに、文化振興課を中心として昨年から「城フェスティバルin座喜味」と銘打って開催されている。主催者は、その意義を次のように唱えている。
-ユンタンザ ムラアシビ-
ムラの神を中心にして助け合って生活をともにしてきた村人たち。その村人たちが、神と村人たち、そして村人たち自身のつながりを確かめ、深めていく芸能の世界があった。ムラアシビである。村人たちはサンシンと太鼓の響きに胸をおどらせ、村の広場に展開される芸能の数々に、生きている喜びを実感し、明日を生きぬくエネルギーを再生していったのである。
※写真。