村役場も仕事始めの一月四日午前、新年の取材・第一報を伝える電話のベル(役場内線)が鳴った。
その内容は、『戌年にちなみ、犬(とても芸達者)を連れた来客があるので取材を』とのことであった。早速、話を伺うため階下におりると、その人は、私の顔を見るなり「工~ッ、二ーサン。クヌイングワーヤヨー、ヌークィンナイシナカイ、クトゥバンハナスンドー(ね一お兄さん。この小犬はね、なんでも芸ができ、人間の言葉も話せるよ)」と、一気に語り掛けた。来訪者は村勤労者体育センターの管理人としていつも明るく頑張り、いつも元気印の徳永ヤス子さん(五二歳・座喜味一五九)とその愛犬。名はシロ君でマルチーズ犬の雄二歳。
まずは、お手並み拝犬(見)とばかりに表に出て芸を見せてもらう。芸を披露するため首輪を解き放したものの、当のシロ君、主人の心を知ってか知らずかチョコチョコとあたりを駆けめぐり、芸を見せてもらえるどころか耳をかさない。たまりかねた徳永さん、奥の手とばかりにビスケットを差出し「シロ君、ハイツちょうだいして!コラッ、ちょうだいツ!」。と、半ば脅迫?。これにはシロ君、ビックリ仰天(したかどうか?)。主人のもとに歩み寄り、芸か?、はたまたビスケット欲しさか?。「ワォ~ウ~ッ(ちょうだい?)」と吠え、チョコンと立ち上がり、くるっと一回転して見事にお菓子を食べた。
徳永さん曰く「ネッ、見た!聞いた!”ちょうだい”と言ったでしょ一」。「んっ?・・・・・」。「他にも、お座りや左右のお手、伏せ、待てのおあずけも出来るし寝転んでエアロビクス体操もするんですよ」と徳永さん。
この日のシロ君、観衆が誰もいないせいか?またまた芸の出し惜しみか?、とっておきの特技は遂に、見せてくれませんでした。
それでも、徳永さんの掛ける言葉には可愛らしく小首をかしげながらも、ご主人様の気持ちに「ワンッ」と応えていた。
シロ君の素晴らしい?演技の後、「ね一、聞いて!」-と、続けて徳永さん。「知人からシロ君をもらって四日目に行方不明になったんですよ、方々探し廻っても見つからず、誘拐されたんだと諦めかけていたところ、そしたら体育館の前で私を待っていたんですよ。ネッ、賢い犬でしょう!。私の胸に飛び込んできた時には、それはもう、感動でした」と、まるでわが子の様な可愛いがりよう。
どこに行くにも常に一緒の二匹?。体育館での人気者には間違いないようだ。
ちなみに”シロ”という名は、かつてマスコミ紙上に登場し、映画「マリリンに会いたい」にもなった”シロ”にあやかっての命名という。