一、はじめに
本日ここに、第二四三回読谷村議会定例会の開会にあたり、一九九四年(平成六年)度の予算案をはじめ諸議案の説明に先立ち、村政運営の基本姿勢と所信の表明を行います。本年度も議会議員をはじめ村民各位の深いご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
顧みますと昨年も、読谷村民は各々の分野で活躍し、着実にその結果をあげてまいりました。世界的規模で環境問題が叫ばれる時代を迎え、本村での第二回全国環境自治体会議の開催・大田県知事を団長とする第二回沖縄基地問題訪米要請団への参加・NHK大河ドラマ「琉球の風」の放映を機に、併せて「読谷紅イモ」を素材とした地域活性化・第十九回読谷まつりは、村民総参加の手づくりのまつりとして好評を博し、国内外からの参加者も年々増加してまいりました。高齢化社会を迎え、その対応のための計画づくりや施設づくりの方向性ができた意義ある年でありました。
また、村内各小中高の児童生徒も師弟一体となって学習面、体育面、文化面で「読谷村ここにあり!」と輝かしい成果をあげた年でもありました。一方、地域環境保全のための下水道事業も楚辺地内で急ピッチに展開・ゴミ問題への対応として比謝川行政事務組合の設立協議が整うなど、読谷村の社会資本の設備や高齢化社会に迎えてソフト的条件設備、等々、一段と前進することができましたのも、村民各位のご支援ご協力の賜であり厚く感謝申し上げます。
さて、時代は「変革と創造」を求め、人類の共存・共生を理念とする新しい平和秩序を模索する時代へと変わってまいりました。
国際社会にあっては、民族的、宗教的関係による地域紛争に対し、国連の名の下に多国籍軍が対応するという図式に変わってまいりました。二十世紀の米ソ対立の「負の遺産」として人類に残された大きな課題は南北問題、環境問題、核廃絶の問題などで深刻であります。
国内にあっても意識の変化は表れ始め、腐敗した政治の土俵の中から、変化と創造の動きが国民の声に押されて台頭してまいりました。連立細川政権は正しくこのような時代背景の中から生まれたのであります。しかし、その動きは必ずしも国民の期待に充分に応えているとは言えない状況であります。政治改革の問題、選挙制度の問題、農産物の輸入問題、日米の経済的対立、等々、深刻であり、戦後体制が時代を経て崩壊または変化している姿は、正に歴史の発展法則を目の当たりにする思いであります。
内閣の一員として入閣した上原康助沖縄開発庁長官(北海道開発庁長官、国土庁長官兼務)は、県民の期待を一身に受け、戦後沖縄県民の抱えてきた困難な諸問題解決のために満身の力を発揮しておられる姿は正に敬意に値するものであります。
ここで、今年度の特筆すべきものをいくつか申し上げたいと思います。
我々読谷村民は「村は生きもの・誇れる村・輝く村・共に創ろう」を合言葉にして、今年度も諸施設を展開してまいりますが、その一つ目は「女性政策」担当を設置することであります。それは女性が十分に社会で活躍できるようにするためには、これまでの男女の固定的な役割分担意識をはじめ、社会の制度、慣行、習慣等を見直し、男女共同参画型の社会を実現することが必要であるからであります。人権の視点からの男女平等は明治以来の女性解放運動家達が訴え続けてきた課題であり、その実現へ向け、今、男性側の理解と協力が必要であります。同時に女性側の一層のご活躍を期待するものであります。
二つ目は、「読谷村環境美化推進条例の特定」であります。制定の趣旨は、住む人にとっては「我が村は美しいと誇りを感じ」、訪れる人々には「美しい村だ、ここに住んでみたい」という印象を与えるような生活環境を創ることが目的であります。読谷村のめざす「人間性豊かな環境・文化村」づくりの基盤として、児童生徒をはじめ村民運動として展開してまいります。それはまた、身近なところからの環境問題への一歩踏み込んだ実践をめざすものであります。
三つ目は、読谷飛行場の問題解決に向けた大きな動きがあったことであります。日本政府がついに米国政府と外交交渉に立ち上がり、防衛施設庁米山市朗長官を団長とした交渉団が二月二十六日米国に赴きました。そして、米国政府関係機関との交渉結果の概要が新聞紙上(三月二日)に掲載されており、それは「返還の方向について検討」ということでありました。
これは長年にわたって苦闘してきた村民にとっては大きな朗報であり、村民一同に代わり喜びと感謝の意を込めて打電し、今後一層のご努力をお伝え申し上げたとことであります。このように議会の皆さんや地主会の皆様、読谷村職員等、広く読谷村民が今日まで傾注した努力は、県の基地問題に対する精力的な動きとも呼応し、安保体制の中で腰の重かった日本政府をも逆に動かすことになったのであります。これは正しく読谷村民の読谷飛行場問題解決への執念と情熱、主体的、創造的、継続的な闘いの成果であり、二十一世紀への読谷村の黄金の花咲く村づくりへの夢の実現への一歩前進するものであり、誠に感慨深いことであります。
二、村政に対する基本施政
読谷村政の基本施政は、毎年申し上げておりますように、日本国憲法に謳われております「主権在民」「平和主義」「基本的人権の尊重」「地方自治の本旨」を基本に据え、それらの理念を踏まえて制定された「教育基本法」を尊重しつつ、村政運営に当たるものであります。
私が今日まで一貫して地方自治にあって「憲法の理念」「教育基本法の精神」を訴え続けてまいりましたのは、歴史の必然性を我が国の憲法が謳っているからであり、戦争の放棄、戦力の不保持を謳った平和憲法は、世界で唯一日本国憲法以外にはないからであります。
戦争の世紀であった二十世紀は間もなく終わり、二十一世紀は人類の共存・共生の時代をめざしております。二十一世紀の人々に希望を与え、戦争の無い平和な社会にするための道標となり得る我が国憲法の理念に立脚し、今年も「非核宣言」 の村民意思を体して、自衛官募集業務、自衛隊の海外派遣等を容認せず、内外に声高らかに「平和宣言」をするものであります。
一、われわれは、自衛隊の海外派遣等に反対し、憲法を軸にした日本の主体的外交の展開を求 めます。
一、われわれは、反戦・反核を貫き、核汚染のない地球環境と平和を守り、人類存続と文化創造 のため奮闘します。
一、われわれは、我々と我々の子孫の幸せと繁栄をめざし、平和な社会を築くため奮闘します。
一、われわれは、読谷村民の住みよい生活環境の確保をめざし、基地公害を拒否するため奮闘し ます。
一、われわれは、読谷飛行場内の米軍落下傘演習場の早期撤去を求め、転用計画実現のため 村民の知恵と力を結集して奮闘します。
以上のことを強く村民に訴えるものであります。
さらに、村づくりの目標である「人間性豊かな環境・文化村」づくりを推進するための実践項目として、
一、平和と民主主義、人間尊重の村政をめざします。
一、民主的な学校教育及び生涯学習の充実をはかり、地域の歴史、文化の継承発展をめざしま す。
一、地域産業、経済の発展向上をはかり、活力ある地域づくりをまざします。
一、高齢化社会を迎え、一層の村民福祉の増進をめざします。
一、自然環境と人間との調和ある村づくりをめざします。
一、明るく住みよい健康な村づくりをめざします。
一、自治と分権、地域民主主義の視点に立った村づくりをめざします。
以上の七項目を基調として村政を進めてまいります。
三、本年度の重点事項
一九九四年(平成六年)度の重点事項は次ぎのとおりであります。
一、教育及び文化の向上
一、産業経済の振興
一、保健・医療及び社会福祉の充実
一、生活環境の整備
一、平和行政の推進
一、主要プロジェクトの推進
・読谷飛行場の解決促進
・国道58号バイパスの建設促進
・庁舎建設事業の推進
・比謝川行政事務組合の設立
・都市基本計画の策定
・営農基本計画の策定
・下水道整備事業の推進
・緑化事業の推進
・環境保全・美化の推進
※続く