紅いも特産品の開発を柱に、むらおこし事業の中核を担ってきた読谷村商工会(大城勝哲会長)は、新たな飛躍の原動力となる資源を探るため、これまでさまざまなイベントを開催し、二十一世紀をにらんだ村づくりに向け積極的な活動を展開してきた。
商工会の設立二十周年を機に行われた記念事業では、子供たちの視点で読谷村の未来を語らせようと昨年十二月十一日に開かれた「子供シンポジウム”21世紀の読谷村”」(青年部)、今年の二月二十五日には、本村の小売業者の今後の在り方を行政、消費者、各種団体などが村ぐるみで考える「夢のあるマチづくりシンポジウム」を開催し、商工会設立20周年記念大会・祝賀会(三月八日)へとつなげた
その記念事業には、商工会20周年の歩みを綴った「記念誌”階”」の発刊と併せ、残波岬に記念モニュメントを建造。また、「ユンタンザむらおこし物産展」を前にした三月二十五日には北海道から鹿児島県までの芋の専門家らを招いて「全国甘藷(いも)シンポジウム」を催した。
「全国甘藷シンポジウム」 活発に意見交換
「甘藷(いも)二十一世紀の主役の座を求めて」をテーマにしたシンポジウムは村総合福祉センターにて開催され、会場には県外からの芋の専門家らに加え、村内外の各地で芋を中心に地域活性化を担う人々(百二十人余)が参加し、活発に意見を交換した。
シンポジウムでの開会セレモニーでは、主催者を代表して大城会長が全国甘藷シンポジウムの開催趣旨と意義が唱えられた後に、「基調講演」「全体会議」へと会議が進められ、基調講演では北海道農業試験場の梅村芳樹研究室長が「甘藷に託す夢と可能性について」と題して講演。引き続き生産・加工・流通の見地からの事例報告が行われ、熊本県大津町JA菊池大津中央支所の式森幹男営農課長が「大津町からの唐いも生産の状況について」、鹿児島経済連食品総合研究所の藤本滋生所長が「サツマイモの完全利用法」、鹿児島県山形屋産業開発の有島孝秋社長が「サツマイモの加工流通事業の開拓・拡大について」、むらおこし会社ユンタンザの松田昌彦社長が「紅いもによるむらおこし(地域づくり)」をテーマにそれぞれの事例を紹介した。
梅村室長は、芋の歴史や日本へ伝わった時期などについてふれた後「芋には他の野菜と比べてけた違いにビタミンEが多く含まれるほか、カロチンやアントシアン(赤紫色素)は抗酸化力が強く、抗がん作用や老化防止に効く成分が含まれている」と指摘した上で、「甘藷は無農薬、少肥料栽培が可能で、ナチュラル(自然)、ヘルシー(健康)、ファッショナブル(流行)な食品で環境にやさしい作物。消費増加は間違いなく、必死になって頑張れる人材を見つけ出し、本気で取り組めば夢のような食品素材が生まれるだろう。二十一世紀の主役になれる素材である」と強調。
事例報告では、①生産の立場から式森課長が「苗の品質改善や品種の一本化を図り、自然を活用した貯蔵方法で甘藷栽培が安定し農業経営の柱になっている」ことを紹介。②加工では、藤本所長が「サツマイモから水分を取り除く方法(四種類)を考えた。最も好ましい結果が出たのが凍結処理法で、芋をいったん凍らせて解凍すると組織が壊れてスポンジ状になり汁やでんぷん、食物繊維に分けられ完全利用ができる。パンやうどんに加えたり、コロッケにも利用でき用途が拡大する」と提起。③琉津では、有島社長が「消費者が好んで食べることを基本に据え、煮る、焼く、蒸すなど五つの加工法で芋に付加価値をつけて商品化したところ所得が十年そこそこで四倍近くも伸びた。流通(商品販売)は難しいが努力すれば成功するもの。量と加工、販売方法を学び、読谷村を訪れる人々はもちろん、沖縄に来た観光客がどこに行っても紅いも商品を買えるようにするという、販売テクニックが必要だ」と強調。また、むらおこし会社ユンタンザの松田社長は、紅芋にこだわった商工会の取り組みの経緯と課題などを報告した。
その後、参加者らは分科会「第一・生産」「第二・加工」「第三・流通」に分かれて活発に意見交換。その討議の結果は、全体会議でそれぞれの座長から報告を行い、甘藷シンポジウムを閉じた。