一ぴきの蠅がブーンと、王様のところへ飛んできて言いました。
「王様、あの雀というやつは、あなた様がまだ召しあがらないうちに、田圃へ行って、初苗を先に取って食べていますよ」
王様は
「そうか。これは許してはならない、ここへ連れてこい」
と言いました。
蠅は、
「これはいいことを言ったぞ」
と、喜んで家へ帰りました。
そして、雀は王様の前へ呼ばれました。
「おまえは、私たちが食べないうちに、田圃へ行って、稲の穂をつついて食べているそうだな、それはほんとうか」
「いえいえ、とんでもありません、主人が稲を刈りた後に、落ちている稲を食べているのです。決して王様より先には食べていません」
「ほんとうか。となとこれは蠅が嘘をついているのか」
「あゝ大きな嘘ですよ」
と、雀は堂々と言いました。
「まず、私の話を聞いて下さい。この蠅というやつは、素足で、あなたあの御飯の上やら茶碗の上や、どこもかも止まります。便所や汚い所から歩いて来て、すぐ素足のままで止まっていますよ」
「そういえば確かにおまえの言うとおりだ。これは許してはならん」
と、王様は怒りました。こんどは蠅が王様の前へ呼ばれました。
「おまえは、あの雀が話していたが、便所やあっちこっちから歩いてきて、素足のままで、私の御飯の上に止まるけど、おまえはそれでいいと思っているのか」
と言われ、蠅はもう驚いて、
「悪うございました。これからはもうしません」
とあやまりました。
それから、蠅は「ごめんなさい」と、いつも二本の前足をあわせる格好をするようになったということです。