読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1994年10月発行 広報よみたん / 7頁

【見出し】よみたんの民話 親の声は神の声

 「アンマーヨーイ」(おかあさんよー)と叫んだことがありますか。
 怪我をしたとき、どうしていいか分からないとき、「アンマーヨーイ」と、むかしの人は叫んだそうです。
 むかし、カマーという男の子が両親といっしょに毎日しあわせにくたしていました。
 ある日、お父とお母が、カマーを呼んで、
 「カマーや、おまえももう十五になったことだし、唐の国でいろんなことを学んでくるがいい」
と言いました。
 カマーはひと月後に大きな夢を胸に抱いて元気よく唐の国へ旅立ちました。
 幾日か過ぎて、船は唐の港に着きました。幸いに着いた日は、とてもいい天気で空は青く晴れわたっていました。高く空を見上げて、「よし!がんばるぞ」と、カマーは目的の地をめざして歩き始めました。
 いくつもの山を越え、谷を越えてもまだまだ着きません。
 すると、今までたいへんいい天気だったのに、突然空が暗くなって大雨が降り出しました。
 「これはたいへんだ、傘も持ってないし、どこに隠れたらいいか」と思案していると、近くに大きな岩かげがあったので、そこで雨宿りをすることにしました。
 雨はだんだんひどくなるばかりで時間もだいぶ経ってきました。
 しまいにはうとうと眠気がして、眠ってしまいました。
 しばらくして、
 「あれ!おかあさんの声がしたようだが、私を呼ぶおかあさんの声が聞こえた」と、びっくりして「アンマーヨーイ」と叫んでそこから飛び出しました。
 出たかと思うと、いなびかりや雷がゴロゴロろ大きな音を出して岩に落ち、ドドードーとくずれ落ちました。カマーはあやうく岩の下敷きになるところでした。
 「そうか、おかあさんの声はその知らせだったのか、おかあさんの声がなかったら私はその岩かげから出なかっただろう。おかげで命拾いをした。『おかあさん』という声ほど大切なものはない」と。
 それから「アンマーヨーイ」ということばが始まったそうです。

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