太平洋戦争終結50周年の節目を迎え、去る五月九日、日米両政府代表で構成する合同委員会が開催され、十一日にその結果が発表され、本村の長年の悲願であった「読谷補助飛行場の移設条件づき全面返還」が合意された。

　　経　緯

　読谷補助飛行場は太平洋戦争中の昭和十八年夏、旧日本軍が戦時用飛行場として村民から強制的に接収して建設したものである。
　戦後は米軍が、朝鮮戦争の頃は飛行場として使用。その後は、パラシュートの降下演習場として使用され、今日まで五〇年にわたって軍事基地として接収され続けた。
　一九六〇年四月頃から読谷補助飛行場での空挺訓練(パラシュートによる物資等の投下演習)が実施されるようになり、それに伴って基地被害も続発。
　一九六三年から一九六七年にかけて喜名や座喜味の民家に貨物やコンクリート塊、ジープ、武器などが落下し、絶えず村民の生命・財産を脅かし続ける中、遂に痛ましい人身事故が引き起こされた。
　一九六五年六月十一日、棚原隆子ちゃん(当時喜名小学校五年生)が、自宅の庭先で米軍の投下したトレーラーの下敷きとなり圧殺されるという事故が発生したのである。この悲惨な圧殺事故は、村民はもちろん、県民に大きなショックと怒りを与えた。
　村民の反対の声をよそに、復帰後も読谷補助飛行場でのパラシュート演習は強行され続け、これまでに数多くの事故が引き起こされた。(別表参照)
　事故ある度ごとに読谷村と読谷村議会は、米軍や日本政府(那覇防衛施設局)に対し、パラシュート降下演習の即時中止と読谷補助飛行場の返還を求めてきたのをはじめ、一九七六年二月十四日には「読谷飛行場用地所有権回復地主会」が結成され、演習反対と土地の返還運動が展開される。

長年の返還運動実る!

　読谷村民の日常生活は、米軍のパラシュート降下演習と隣り合わせの中にあり、村民は絶えず演習の恐怖におののき、村行政は常に基地被害と米軍演習の対応に振り回されてきた。
　こうした歴史的背景から、村民が基地を否定し、平和を尊ぶ潜在的意識は”命どう宝”を合い言葉に、村ぐるみで反基地闘争、読谷補助飛行場返還運動へと立ち上がっていく。このような中、一九七九年十一月六日、米軍の夜間パラシュート降下演習が強行され、大添区の民家近くに七㎏の重りをつけたパラシュートが落下するという事故が発生。この事故は村民感情を逆なでし”火に油を注ぐ”結果となり、遂に読谷村民を村ぐるみのパラシュート演習反対行動、基地撤去運動へとふるいたたせるようになった。
　村民の粘り強い闘いの成果は、一九八○年十月九日に開かれた日米合同委員会での「機能移設に合意」を経て、昨年(一九九四年三月十一日)開かれた日米安全保障協議委員会では、フランク・ウィズナー米国防次官が「読谷補助飛行場の返還問題については近い将来進展が期待できる。次回の次官協議の時にはこの問題は議題にならないだろう」と早期返還の意向を表明したのを受け、同年六月の日米合同委員会では「読谷補助飛行場特別作業班を設置する」ことが合意された。そして遂に、五月十一日、日米合同委員会の勧告として「読谷補助飛行場の移設条件づき全面返還」が正式に決定された。
　読谷補助飛行場返還の報せに、山内村長は「村民の願いは演習の廃止と用地返還であった。今回の案は米側の要求をすべてのむという甘やかしであり、県民同士に不必要な心配と対立を生み、不愉快な思いをさせるものでしかない。新たな怒りを感じる」と日米両政府を批判し、「狭い県内に米軍基地の七五%を押しつけるのは政治的、軍事的な差別で断じて許せない。広大な米本国に移設するか、あるいは日米安保を認めるというなら日本全国に平等に基地を分散すべき」と強調。更に「本土の政治家や行政官たちは沖縄の痛みを知らない。小さな沖縄県内で代替地を必要とする状況には心が痛む。戦後五〇年に感動的な喜びを分かち合えないのが残念だ」と語った。　読谷村が返還を求める読谷補助飛行場の問題解決は、これまで長い苦闘の末に得た成果である。読谷村は危険な米軍パラシュート降下演習で事故ある度毎に抗議行動や要請行動を展開し、常に演習の廃止と用地の返還を訴え続けてきた。村や議会では基地の整理縮小、読谷補助飛行場の戦後処理を求めて主体的、継続的に訪米直訴(今年で四回目)を展開。その結果、読谷補助飛行場は今、接収から約五〇年、日米関係機関でパラシュート演習場の機能移設が検討されてから十五年、長い苦難の道程を経てやっと正式に基地から開放される日もそう遠くない。

※表　（読谷補助飛行場における米軍パラシュート演習による事件、事故記録）