一、はじめに
本日ここに第二六四回読谷村議会定例会の開会に当たり、一九九六年(平成八年)度の予算案をはじめ諸議案の提案説明に先立ち、村政運営の基本姿勢と諸施策の概要を申し上げます。
昨年は、太平洋戦争・沖縄戦終結五十周年の節目の年でありました。村民各位のご協力の下に平和事業が取り組まれました。更に、戦前の役場敷地を追われ、現在の役場敷地を経て、五十年ぶりに二十一世紀へはばたく本格的な自治の殿堂「役場庁舎」の建設が、読谷飛行場の中に鎚音高く開始された歴史的な年でありました。
これもひとえに議会の皆様方をはじめ村民各位の深いご理解とご協力の賜物であり、衷心より敬意を表し、併せて今年度もよろしくご指導、ご鞭捷を賜りますようお願い申し上げます。
さて、国際情勢は冷戦構造の崩壊後、極地的には民族的、宗教的な紛争はありますが、全世界的には人類が共存・共生を理念とする新しい人間社会と環境が重視される国際的認識が進んでまいりました。
日本国内にあっては社会秩序を失い、バブル経済のたどりついたツケが金融、経済界、政界、関係省庁をまきこみ、「住専問題」として大混乱を引き起こし、国民経済、金融システムが歴史上かつて経験したことのない危機に瀕しており、その対応をめぐって国民と政治との信頼関係も大きく揺らぎつつあります。
昨年から今年にかけての沖縄県内の動きは歴史上特筆すべき動きであゆます。戦後五十年、在日米軍基地の七五%を押しつけられ、日常的に基地被害を受けてきた沖縄県民の怒りはついに爆発し、沖縄一揆とも言える戦後第三の島ぐるみの闘争へと発展し、日米両政府を揺り動かすことにたりました。その叫びは県民の「人権・平等・環境」を守る為の米軍基地の撤去の要求であり、「不平等・差別」を許さない闘いであります。この動きは確実に二十一世紀への新しい時代の幕開けの役割を果たしつつあると言っても過言ではありません。
五年後に迫っている二十一世紀を目前にして沖縄県は今、歴史の大きな転換期に入りました。県は四月に開催される日米首脳会談に向け、県民の考え方を反映させる立場から二〇一五年を目標に、計画的かつ段階的に米軍基地の返還を求める「基地返還アクションプログラム」の考え方を政府に提示しました。
米軍基地の跡地利用計画として県は、我が国の南の国際交流拠点の形成を目指す方策として「国際都市整備構想」を策定し、県民、特に「若者が夢と希望のもてる沖縄」をつくることに努力しております。このように沖縄の将来像を県民が希望のもてる「国際都市形成」と位置づけしております。
読谷村もこのようだ沖縄の苦悩・抑圧の歴史から、解放・自立・発展への歴史的変遷、時代の転換期を的確に把握、その動きを視野に入れ二十一世紀、将来像への展望を切り開くことが極めて重要であります。
我々読谷村も、現状の村づくり運動の領域のみに満足するのでなく、今後とも生生発展させるため、自治体としての高い志と展望を主体的、創造的につくり上げる努力が必要であります。
本村の人口の増加、高齢化社会の到来と対応(地域経済の持続的活性化等を考える時、永遠の生命力と将来への発展の要素と可能性を織りまぜ、更に風格ある自治体経営をめざしていくことこそが、国際化時代に対応する新しい道だと思います。県の軍用地跡地利用構想としての国際都市形成の動きの中で、読谷村域を次のような視点で考えることは夢ふくらませるものであります。
即ち、読谷岳を頂点に南北に走る稜線に囲まれた広大な嘉手納弾薬庫地域の持つ多様な可能性、比謝川の南に広がる広大な嘉手納飛行場地域が将来返還された場合、関係地主会を中心に、関係行政機関(国、県、市町村)と経済界、学識経験者等が相提携し、どのようだ跡地利用計画が策定され、展開されていくか、沖縄全体の立場から関心のもたれるところであります。
これらの領域を一団の地域と考えた場合、そこには山あり、川あり、緑あり、平地あり、海があります。豊かな自然につつまれた嘉手納弾薬庫地域の跡地利用構想の試案として、アジア一の亜熱帯植物観光園、日本一の避寒地福祉長寿村、沖縄一の亜熱帯花卉園芸団地、学術的研究施設の整備、若者に夢を与え魅力ある健康的娯楽施設の整備、亜熱帯の地域特性と自然環境を生かした柑橘類、熱帯果樹(マンゴー、パパイヤ等)、水イモ栽培等の産地化の形成が考えられます。更に、嘉手納飛行場をハブ空港化し、その関連産業経済の形成、住宅及ぴ市街化の形成等々を内容とする個性豊かな中堅的都市の構想を将来への夢として、自治体経営論の立場から議論しあうことは有益でありましょう。
これこそ青年達をはじめ、地域の人々に太き次夢となり、希望となるものであります。二十一世紀に向け更に飛躍発展し、輝く自治体になるものと信じております。
この壮大な構想への実践こそ、今に生きている人々の使命であり、後輩後世へ平和な沖縄、豊かな生活基盤、安定した雇用の場の創出につながるものと確信いたします。