読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1996年7月発行 広報よみたん / 18頁

【見出し】”悪魔の部隊”出て行け! 抗議のシュプレヒコール 読谷村長ら150人 創隊式を糾弾(読谷村楚辺) 特殊作戦部隊 ”戦争のプロ”集団 第3世界への介入準備

【読谷】米特殊作戦部隊の創隊式典は会場のトリイ通信施設ゲート前に詰めかけた抗議団の声をよそに十九日午前、予定通り行われた。「残念だ。しかし、部隊撤去まで長い闘いを団結して頑張り抜こう」と伊波栄徳村議会議長。この日集結した約百五十人の抗議団はお互いの意志を確認、山内徳信村長の音頭でガンバロー三唱などを行った。また、式典を終えてゲートから車両で出てくるグリーンベレー兵士や米軍関係者などにこぶしを突き上げ抗議の声を浴びせた。ゲート内では施設管理責任者のグリーンフィールド少佐や特殊部隊兵士などが遠巻きにして抗議団を見やっており、緊迫した雰囲気に包まれていた。
 読谷村の楚辺ビーチ拡張並びに特殊作戦部隊阻止実行委員会(山内徳信委員長)は十八日夕の村民大会に続き、十九日も午前八時すぎからトリイ通信施設ゲート前で抗議行動を展開した。村内外からの抗議団にまじり、地元楚辺区のお年寄り多数も詰めかけ、厳しい表情で集会を見守った。また、上原康助衆議院議員も現場を訪れ、抗議団を激励した。
 冒頭、山内委員長は「外務大臣がなぜ、この時期に沖縄を訪れ、あえて特殊部隊を認める発言をするのか。村民の闘いの歴史の中で断じて許せるものではなく、厳しく糾弾しておきたい」などと、強い口調で述べた。このあと、比嘉正喜楚辺区長、伊波栄徳議会議長、支援労組代表らが次々とあいさつに立ち、今後も粘り強い闘いを継続することを誓った。
 午前八時半すぎ、式典会場には米軍ヘリ二機が到着したほか、在沖米総領事館、那覇防衛施設局、米軍の各関係者らは車でゲートから会場入り。抗議団は再三にわたってシュプレヒコールを浴びせた。また、上原衆議院議員は「県民の心情を逆なでする米軍、日本政府一体となったやり口に憤りを禁じ得ない。反戦平和を願う県民に対する挑戦で、今後も院内外で撤去を求めていく」などと抗議団を激励した。抗議行動は式典終了後も続けられ、午前十時、山内委員長のガンバロー三唱で締めくくった。

 昨年、一九八四年十月十九日、在沖米陸軍の特殊作戦部隊(通称グリーンベレー)が読谷村のトリイ基地で創隊式を行った。グリーンベレーはベトナム戦争当時、沖縄に配備されたが、一九七四年に駐屯部隊が解散して以来、十年ぶりの再配備である。昨年三月に先進隊が到着し、七月十五日までに一個大隊(約三百人)の配備が完了した。司令官はジェームス・イースチップ中佐。報道陣は創隊式典の取材要請を何度も行ったが拒否され、隊員百十五人とごく内輪の招待客だけが参列して非公開で行われた。訓練はもちろん、形式的な式典さえも公開されないところに、グリーンベレーの秘密部隊としての性格をうかがわせている。
 ワシントン・ポスト紙(昨年六月十日付)は、レーガン政権下の軍拡は第三世界軍事介入能力の増強が新たな焦点になっていると報じた。同紙は沖縄へのグリーンベレー配備もその具体例の一つとして挙げている。ベトナム戦争の教訓から、レーガン政権は①米軍の戦闘参加は避ける②同時に必要な場合の軍事介入は必ず成功させるーとの基本認識を持っている。第三世界軍事介入能力増強の特徴は、米軍”特別■■■■”の新設、軍事装備および海外軍事基地網の拡大、外国軍の訓練、第三世界向け武器輸出増大などであるという。統合参謀本部は昨年初め、四軍から選抜される特別奇襲部隊を指揮する「総合特殊作戦局を設置している。
 グリーンベレーは少数精鋭で、将校二人、下士官十人の計十二人で作戦班(Aチーム)を編成。破壊、武器、通信、医療、情報をマスターし、外国語にも■■しているといわれる。Aチーム十二人で、通常部隊の五十人に匹敵する”戦争のプロ”である。敵陣に秘密裏に侵入、心理戦、ゲリラ戦、後方かく乱の特殊任務を遂行する。■兵隊機関誌「オキナワ・マリン」(昨年八月十日付)は伊江島で特殊効果訓練を実施したグリーンベレーを初めて紹介した。
 高い上空から降下して低空で開傘する極めて熟練度を要するパラシュート訓練である。第一特殊部隊群第一大隊B中隊の指揮官ジャック・ダムス陸軍大尉が「この低空開傘降下(HALO)は非通常戦ににおける潜入手段である」と述べている。パラシュートが開いてわずか一分ないし一分半で隊員の足は地上に着いたという。
 沖縄の第一特殊作戦部隊は外国軍とも既に演習を実施している。昨年七月二日から八月十日までシャム湾で行われた米・タイ合同軍事演習「コブラ・ゴールド84」に参加した。タイ陸軍特殊部隊とジャングル地帯でのサバイバル訓練を実施したという。在沖米陸軍報道部はタイ以外でも訓練を実施したことを明らかにしたが、韓国ではないかと見られている。軍事拠点の沖縄基地を足場に第三世界への介入準備は着々と進められているといっていい。
 昨年十一月、レバノンの米大使館に爆弾テロの可能性があるとして、米軍は二十四時間のアラート(厳重警戒)態勢を敷いた。攻撃を受けたら直ちに報復する方針で、十月には米■■特殊作戦部隊をレバノン市内にひそかに送り込み、報復地点の特定作業を行ったという。在沖米陸軍報道部は「沖縄の部隊はレバノンには派遣されていない」と否定しているが、あらゆる軍事情勢に対応すべく日夜訓練しているのがグリーンベレーだ。将来は陸上自衛隊空挺団との共同演習も行われる可能性が強い。トリイ基地での特殊作戦部隊創隊式で、第二九六米陸軍音楽隊(座間)が日本の「軍艦マーチ」を演奏して周囲を驚かせたが、これもアメリカ流の”ラブコール”と受け取れないこともない。

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