読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1998年11月発行 広報よみたん / 12頁

優秀賞に松田さん-第27回地区大会婦人の主張- (婦人の主張大会優秀賞作品)「心に種まきを」松田政美さん(宇座婦人会) 民間の消防団員誕生

 第27回地区大会婦人の主張(中部地区婦人連合会主催)が8月22日、具志川市復帰記念会館で開かれ、中部の13市町村の代表が、堂々と自らの意見を発表しました。
 審査の結果、優秀賞に読谷村代表の松田政美さん(宇座婦人会)の「心に種まきを」が選ばれました。
 松田さんの「心に種まきを」を全文紹介します。

 「桜が咲いたらお姉ちゃんになるんだよね。」「今度は弟がいいなあ。」
 こんな姉達の会話を聞いていたのでしょうか。桜のつぽみがほころぶ今年2月、次女と5才の開きをもって男の子が生まれました。娘2人はミルクをあげたり、おしめを替えたりと、かいがいしくめんどうをみてくれ、我が家は笑顔が絶えません。
 3名の笑顔を見ながらふと頭によぎったのは9年前の私です。初めての育児で、わからないことばかり。頼みの夫は夜が遅い。で、ストレスがたまり、そのうえ長女は、タ方になると泣き出す始末。
「ねんねんころりよおころりよ…」抱っこをしたり、おんぶをしたり。あやす私も子守歌を歌いながら泣きたくなり、気分がめいる毎日でした。大阪から嫁いで来た私は近くに友達もなく、とても子育てを楽しむというどころではありませんでした。しかし、生後2ヶ月半で引っ越した先では、泣き声を聞き付けて隣の家から、前の家から「代わってあげよう」と駆けつけ、娘を抱き、あやして下さったのです。ストレスで押し潰されそうになっていた心も体もどんなにか助けられたことでしょう。それから親しくさせていただいたおばあさんやおじいさんから、貧しい時代をたくさんの子どもを抱えて必死に生きてきた体験をお聞きしました。戦さ世を生き抜いてきたおばあさんの話には、想像を絶するものがありました。やがて私の子育てストレスが取るに足りないものとなったのは言うまでもありません。貴重な体験談を通して、地域の中で子育てをすることの大切さを学びました。
 昨今、「心の教育」が大切だとか、「生きる力をつけなければならない」と言われます。しかし、心ってどうやって教育するのですか。生きる力って、どのようにしたら身につくのでしょう。私は考えます。これから先、いくら科学が進歩しても、どんなに優れたコンピューターが開発されても、愛や正義、勇気や思いやり、これらを教えてはくれないだろう。体験と本が教えてくれるのではないだろうか、と。
 これまでの暗中模索の私の子育ての道標は、いつの日からか給料日ごとに買い求めてきた本でした。自分のために一冊、子供達それぞれに一冊。本は私の心配を軽くしてくれただけでなく、「語り聞かせ」や「読み聞かせ」という我が家の大切なひとときを生んでくれました。
 次女は、四肢に障害がある女の子のお話『さっちゃんのまほうのて』を読むことをこれまで何回せがんだことでしょう。いじめにあった女の子が死んでしまう。『わたしのいもうと』は、「今まで読んだ本の中で一番悲しい話。」と言っています。長女はファントム機が墜落して兄弟が亡くなる『パパママバイバイ』を、胸を詰まらせて読む父の隣で、頬に涙を伝わらせて聞いていましたが、やがて泣くのを押さえ切れず、その夜は枕までぬらしていました。
 息子に2ヶ月頃から赤ちゃん絵本を見せています。
 「犬のお母さんと赤ちゃん。かわいいね。」よそを向いていようがおかまいなしです。「聴覚は、母親の胎内にいる8ヶ月頃から発達する。」という説があります。子ども達は胎内でじっと家族の声を、私の声を聞いて過ごしてきたわけです。元気で産まれて嬉しかった。初めてお乳を飲ませた時ドキドキした。これら母親にしか味わえない感動を大切にしたいから、たくさん抱きしめて、たくさん語ってやりたいのです。
 この思いは、『おばあちゃんがいるといいのにな』という本の一節と重なります。男の子の大好きなおばあちゃんが乳ガンでなくなります。孫は語りかけます。「ぼくは忘れない。おばあちゃんのおちち。ひざのなかで覚えている。おちちにはさまって本を読んでもらったの…。」親のひざは、親子の信頼を育み、湿かい絆となるのではないでしょうか。こういう体験が心を耕し、他人を思いやること、命を大切にすることの伏線になることを願ってやみません。
 では、地域ではどうでしょう。娘2人がお世話になった保育所、そして通っている幼稚園でも絵本や本との出会いを大切にして下さり、絵本大好き、保育所、幼稚園大好き、先生・お友達大好きという生活を過ごしてきました。長女の通う学校にも、私の勤める学校でも読書会が行われてい
て、母親達が工夫を凝らして語ったり、読み聞かせるその声は、それはそれは愛情に満ちあふれていて、感動します。夏休みには、ラジオ体操の後に子ども会主催で「読み聞かせ会」が行われました。私達親子はできる限り参加し、私は時々読み手として参加させていただいています。そこで見えてきたのは、「本好きにしたい」という親の思いは一つだけれど、親達の参加は今ーつだということです。読書会に子どもと一緒に参加し、集団の中で我が子が本を楽しんでいる様子を見、親子で楽しみながらかかわっていく。このような地域ぐるみの活動が今一番必要とされているのではないでしょうか。物は豊かだけれど、心が飢えていると言われる日本の子ども達、だからこそ親達は手をつなぎ、共に育てなければならないのではないでしょうか。
 共に育てる場として、児童館や児童センター、公立の図書館や地域の文庫でもいいのです。母親や帰宅後の子ども達が気軽に足を運べるところがほしい。そこには赤ちゃん絵本や子どもの夢を乗せた本をたくさん並べてほしい。そこは、母親達のリフレッシュの場。子育ての悩みを分かち合ったり、交流する場。このような場が私はほしいのです。
 子ども達3名。これから親子で悩み、向き合わねばならないことが数々あるでしょう。そんな時、ひざを重ねた思い出や本を通してのコミュニケーションや信頼が幼な心にまいた種として支えてくれることを願っています。

 8月1日、役場村長室で読谷村消防団伊波寛市団長より儀間重隆さん(37歳・長浜135)と比嘉力さん(26歳・楚辺1950) の二人に辞令が交付されました。
 2人は、漁業に従事していて、読谷村漁業協同組合(古堅宗達組合長)の推薦を受けて、民間の団員誕生となりました。
 安田慶造村長は「海の安全思想への普及に尽くして下さい」と2人を激励しました。

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