読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

2003年3月発行 広報よみたん / 15頁

読谷の自然82 トンボ類の生息地の保護と保全

読谷の自然82
トンボ類の生息地の保護と保全

これまで十一回にわたって紹介してきたように、村内には数多くのトンボ類が生息しています。これまでの私たちの調査では三四種ものトンボ類が確認されました。
 本村で生息が確認されたトンボ類の中で特筆すべきことは、沖縄島の固有亜種で、沖縄県版のレッドデータブックに掲載され、絶滅のおそれがあり、保護が必要とされる「希少種」としての、リュウキュウルリモントンボ、リュウキュウハグロトンボ、カラスヤンマ、リュウキュウトンボの四種の生息確認されたことが上げられます。これらのトンボ類は水質のきれいな渓流性のトンボ類で、これらの種の主たる生息地は、イタジイ林の広がる沖縄島北部地域(国頭地域)です。こうした種が本村でも生息していることは、本村がイタジイ林の南限地であり、そこに生息するトンボ類も南限的にかろうじて生息している状況が伺えます。
 また、本村には伊良皆の「サシジャーガー」に代表されるような池や沼地が見られ、沖縄島で見られる止水系のトンボ類の大部分が生息していることです。この「サシジャーガー」では、オオシオカラトンボやホソミシオカラトンボ、オオメトンボなど中南部地域で見る機会の少ないトンボ類の生息が確認され、これらの種の重要な生息地となっていました。
 中南部地域では人為的な開発に伴う埋め立て等により湿地環境は年々減少し、それに伴いトンボ類を含む水性生物の減少が顕著です。したがって、本村ではこうしたトンボ類が生息できる池や沼地など湿地環境がまだ幾分残されていることが理解されます。
 最近中南部では都市化がすすむ中、市街地の公園整備や学校の学習環境整備等の中で、多様な生物の生息できる人工的な自然環境創出としての「ビオトープ」づくりが盛んです。しかしながら、人工的に自然の生態系を復元や再生を図るのは至難の業であり、またそれに投じる資金も膨大なものになります。したがって、今ある自然環境をできるだけそのまま残し、生態系の維持を図りながら、学校教育における環境教育や、自然に親しむ野外活動としての自然観察会等に大切に利用することのほうがより賢明な活用であると考えます。
文・写真 嵩原建二(沖縄県立博物館)

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