保育の窓 九
子供の力を信じて
園庭の緑が色濃く光る季節。木漏れ日の間を蝶が舞い、小鳥がさえずり、枝から枝へ飛び交うのどかなひととき。
芝生の上で三輪車を乗り回し、ボール遊びに興ずる子供たち。明るい笑い声からは四月初めのあの緊張した姿を想像することはできません。入園から二か月近くたった今、各部屋から聞こえていた涙のメロディーも、今では笑顔のリズムに変わり、元気一杯に園生活を楽しんでいる子供たち…。お父さん、お母さんにとっても胸をなでおろす日がやっと訪れました。
「バイバイ」と背を向け、駆け出す我が子の姿に、たくましさを感じつつ、親としてはちょっぴり寂しさも合わせ持つ複雑な心境に陥るのもこの時期。でも、しっかりと親子の絆が結ばれているからこそ子供たちは安心して新しい生活に飛び込んで行けるのです。
『一人で歩いてきたー』と、自慢気に保育士に伝える子供の後方には、しっかりと我が子を見守るお母さんの姿があるのに気付かず、いかにも「すごいだろう」と言わんばかりの表情を見せる子供たちが可愛くてたまりません。
わずか数メートルの距離でも、つないでいた手をほどき、一人で歩けた喜びは次への成長のステップとして大きな自信につながることでしょう。
まだ少し、朝の別れを悲しむ子もいますが、今にきっと「バイバイ」「行っていらっしゃい」「がんばってねー」と笑顔で送り出せる日が必ずやってきます。
子供の内なる力を信じて、お父さん、お母さん、共に楽しく子育てしましょう。
(文・喜名保育園 石嶺元子)