読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

2006年2月発行 広報よみたん / 11頁

読谷の民俗芸能11 組踊(10) 伏山敵討

読谷の民俗芸能11
組踊(10) 伏山敵討

 この組踊の題名は、主役の富盛大主の台詞「野に伏し山に伏し」から付けられたと言われ、珍しい命名となっています。一名「天願の按司」とも称され、「束辺名夜討」「本部大主」などとともに悪役である登場人物の名を題名にしているところも興味を引きます。字瀬名波・喜名・.渡慶次・大湾をはじめ、県内三十余のに地域に伝承されており村芝居でも人気のある組踊です。
 棚原按司は天願の按司に滅ぼされ、家臣富盛大主は、主君の妻と息子二人を伴って落ちのびる。富盛大主は、仇討ちの機会をうかがっているところ、天願の按司が本部山で猪狩りをするとの便りを聞き、本部山にひそむ。一方、棚原の若按司も富盛大主の動向を知り、母親と弟に別れを告げ富盛大主の小屋を尋ねる。猪狩りに来た天願の按司一行は、道中、狩人から富盛大主が待ち伏せしていることを聞きつけ、山小屋に攻め込むが若按司と富盛大主に討たれる、というあらすじです。
 見どころをいくつか挙げますと、若按司の長刀の手並は仇討物によく見られますが、富盛大主の太刀振りは余り例がありません。また、「龍落し」にのせて特殊な足さばきで演じられる「ユシアシ」は躍動感のある場面です。間の者役の狩人が猪をかついで登場する場面は、「クェー、クェー」と猪の鳴き声を発する地域もあり、舞台背景がよく表現されています。
 この組踊りでも、母子の別れの場面で「伊野波節」を使用し、時間をさいて家族の別離の悲しみを演出しています。富盛大主の太刀振りの場面は、現在字瀬名波では、三線の伴奏で演じていますが、台本をみると「笛、太鼓のみで演じる」とト書(説明書きのこと)があり、組踊りの音楽性を考える上で大きな意味を持っています。また、戦いの場面でブラやドラを打ち鳴らすのも地方独特の味わいがあります。
 「伏山敵討」の作者も作られた年代もはっきりしていませんが、字喜名は大正年間に演じられ、字瀬名波では戦前盛んに演じ、戦後昭和五三年に復活し、昭和六一年に再演、昭和六三年には第一四回読谷まつりに出演しています。
  文・村立歴史民俗資料館
         長浜真勇

利用者アンケート サイト継続のために、利用者のご意見を募集しています。