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2006年4月発行 広報よみたん / 3頁

憲法は、権力者を縛るための規範

憲法は、権力者を縛るための規範

 読谷村平和行政推進事業の一環として「憲法講演会 ~憲法改正議論から憲法について考える」(主催・読谷村、共催・沖縄タイムス社)を3月15日、村文化センター鳳ホールで開催しました。村内外から多くの人が駆けつけ、「憲法とは何であるか」ということを学び、熱心に議論を見守りました。

 講演会の第1部は、一般の人から見た憲法を題材に村民の代表2人が意見発表を行った。
 講演では、自称「護憲的改憲論者」の小林節氏が「憲法改正 国の動き」と題して、自民党の憲法改正草案とその狙いについて講演を行い、護憲派の水島朝穂氏が「国民にとっての憲法」と題して講演を行いました。
 第2部は、沖縄タイムス論説委員の中根学氏の進行により、小林・水島両先生に、村民代表2人を交え、会場からの質問に答える形で議論が展開され、憲法というものの本質について学ぶ機会となりました。

憲法と言えば9条というイメージがある
         玉城信人
 憲法は学校で習ったが、深く考えることがない。沖縄戦で上陸地点となった読谷村に住んでいることもあり、憲法と言えば9条というイメージがある。先輩方から戦争体験を聞くと、平和というものが当たり前に感じている自分たちは平和ボケしているのではと思う。
 改正については、正直に言って、イメージが出来ない。この講演会を通じて憲法について学び、青年団の仲間に伝えていくようにしたい。

私たちの生活は憲法の理念で守られている
         西銘誓子
 学生時代に「憲法は自分の心の中にある」と言われ、感激したことがある。
 良心の自由、結婚の自由、職業選択の自由など、私たちの生活は憲法の理念で守られている。本当にすばらしいことだと思う。
 「改正=9条=悪」というイメージがあるが、どこに着眼し、どう考えればよいか。市民レベルで何ができるのかが知りたい。

愛国心を押し付ける自民党案 「戦争できる国へ」が本心         小林節氏
 自民党の改憲草案には知る権利や環境権をちりばめているが、プロの見方をすれば「9条さえ変えられれば良し」というのが自民党の本心だ。9条以外ならば、いくらでも妥協するだろう。つまり、今動き始めている改憲の唯一の論点は9条である。
 現在の憲法は戦争をしたくても出来ないという内容だが、戦争をしようと思えば出来る国になろうというのが自民党の改憲案である。私が気になっているのは、「国民は愛情を持って国を愛する責務がある」という部分。これは無教養かつ危険なことである。愛情は魅力で口説き落とすものであって、暴力で得るものではない。国を愛してほしければ、権力者が善い政治を行えばいい。そうすれば自然と愛情は生まれるだろう。
 国民が権力者をフライングさせないために縛ることが憲法の役割である。それなのに権力者が国を愛せと憲法に書いてしまえば、国民に踏絵を踏ませるような愛国心検査法などをつくれてしまう。そうした危険性を含んでいる。
 最後に国民投票法案について、憲法96条に憲法改正は可能と書いてあるならば、その手続き法はあってしかるべきだ。しかし、現在の状況は国会で改憲派が多数を占めているときに、自分たちの改憲が通りやすいように法の制定が進んでいる。国民に対し、「プライバシー権、環境権、知る権利などの新しい人権が必要ですよね、ついでに9条も変えたいんですがいかがでしょう」と言い、「考える時間はありません、改憲はマルかバツで答えてください。何も答えない場合はマルにします」と言っている。そのようないいかげんな方法は取るべきではない。堂々と新しい人権、9条を別の項目にしてそれぞれ判断させるべきだ。公平な手続きを踏まえ、国民が飽きるくらいに議論して決められるようにしなければならないだろう。

ムード先行の改憲論
9条2項の削除に危機感
        水島朝穂氏
 9条と99条の三つの9は憲法に基づく平和のつくり方ともかかわる。99条は、国民に憲法尊重義務があるとは書いていない。国民が憲法尊重義務を負わず、だれが負うのか。それは権力者だ。「憲法は、権力者に守らせるもの」なのだ。憲法改正を踏まえるには99条を踏まえる必要がある。
 一般的にいえば、96条(改正条項)がある以上、改憲自体が悪いわけではない。国民の側から、どうしても改正が必要だと提起があり、憲法改正以外に方法がないときは検討の余地がある。問題は、具体的に憲法のどの条文をどのように変えるのかということである。9条改憲の動きは、具体的な選択をぼかして「とにかく古いし、一度も変えられていないのでこの際変えてみよう」といった改憲ムードが先行していないか。
 そもそも憲法とは権力者に守らせるものであり、権力者が「権力にやさしい憲法」を求めてきたときは疑ってかかるべきだ。環境保護やプライバシーという一般受けする条文をちらつかせながら、本当に狙っているのは9条2項の削除だ。世界規模での米軍再編に関連し、日本が海外で武力行使できる国になる。これが最大のポイントだ。この流れの中では、憲法改正をいったん待ってみようと考えることがまともな人の感覚だ。
 9条2項削除を最大の狙いとする現在の改正論議には反対だし、その手段として、この時期に出てくる憲法改正国民投票法制定には反対である。
 私たちの生活にどのように憲法を生かすか。その意識を持つことが大切だ。そして、あまり遠くない将来、国民が憲法改正について決断を迫られたとき、一人一人が「憲法とは何か」を踏まえた上で「私にとって憲法はどんな意味があるのか」をしっかり考えて投票することが大切だろう。
 憲法改正は人ごとでは決してない。「大切な一票、だから行こう、私のために」である。

 読谷村としては、今回の講演会を通し、「平和な国づくり」の切なる願いを理念に込めた憲法を見つめ直し、後の世代へと引き継いでいくことが大切だと考えます。
 みなさんもこの機会にじっくり、「日本国憲法」に目を通し、考えて見てください。
       (企画財政課)

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