読谷の民俗芸能 20 舞踊(5)イリベーシ
「イリベーシ」は字楚辺において、明治の頃からムラアシビ、アカヌクースーギ(旧九月二十日の赤犬子祭)で踊られました。神の降臨を願い、太鼓の音と無手の踊りで座を清める意味があるようです。そのためムラアシビでは、最初に踊られる演目でありました。
音楽は三曲あり、一曲目、二曲目は演奏のみで三線と太鼓のリズム、踊り手のハヤシとともに円陣を組んで演技が進行します。三曲目では「ナーニンブチ(庭念仏)」という念仏歌が歌われます。
地面にこぶしを突く、指をしっかり伸ばして腕を真上に上げる、両手の手のひらを腰に当て前にジャンプする、ハヤシを入れながら上半身を左右に振るなど、独特の動作があります。
衣装は現在、白ズボン、白黒縦縞脚半、白シャツ、読谷山花織のウッチャキ、頭にマンサージ(長巾)を被ります。
古くは、組踊に着ける女踊りの着物を着けていたという言い伝えがあります。このことは「イリベーシ」の特徴を知る上できわめて示唆に富んだ話です。チョンダラー芸人達は紅型のような派手な衣装を着ける場合があったのです。
また、念仏歌が取り入れられていることは、県内各地に見られるチョンダラー(京太郎)芸、エイサーに色濃く残っているニンブチャー(念仏者)芸のにおいを感じます。念仏歌と女踊り用の着物の結びつきは、大変興味が湧きます。
ところで字楚辺には、葬式を取りしきるニンブチャーが住んでいたようですので芸能の面でも色々影響を受けたと思われます。同じく、ニンブチャーがいたと言われる字喜名も、明治四〇年の新聞記事によると「イリベーシ」を演じています。
文・村立歴史民俗資料館 長浜 眞勇