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2007年3月発行 広報よみたん / 13頁

読谷の民俗芸能 24 舞踊(8)万歳口説べージ

読谷の民俗芸能 24 舞踊(8)万歳口説べージ
 
近世において本土で流行した口説は、遊行の万歳芸人らによって沖縄にも伝えられた、と考えられています。沖縄では、同じく門付芸人でチョンダラーと呼ばれた人々によって各地に広められた、と言われています。一方、琉球王府では、屋嘉比朝寄(一七一六~一七七五)が『屋嘉比工工四』を作成しており、早口説、揚口解、口解の三曲がおさめられています。「口解」は口説のことです。
 口説は、七五調の三句あるいは四句で構成され、歌詞をくり返しながら物語るという内容です。歌と歌の間に囃子が入ることも大きな特徴のひとつです。
 
字楚辺には「万歳口説ベーシ」が伝承されています。チーグシの先につけた鈴を前後に振って鳴らし、踊り手が「チンチロリン・チンチロリン」とはやしながら幕にはいるところから、一名「チロリン節」とも呼んでいます。歌は、初めて組踊にチョンダラー芸能を取り入れた組踊『万歳敵討』の口説の歌詞を五番まで使用し、歌の間にハヤシを入れます。
1番のハヤシは、馬をあつかう内容で「くかるぎ 馬小や 潟原出じゃちょて 引ちゃいゆるちゃい しみびち しみびちしみとて むらんとまとて しーちょんちょん サッサ」が入っています。また3番目に「念佛はんそう」、5番目に「鉦鼓」があり、チョンダラー・ニンブチャー芸能との関連がうかがえます。
 同じく5番目の「チンチロリン」のハヤシは、組踊「義臣物語」に登場する国吉の比屋が身をやつした場面の、道輪口説「ほろろん ほろろん ほろほろ ほっと」のハヤシにイメージを重ねたくなります。こうみると、組踊『万歳敵討』の口説にハヤシが組み込まれた意味がうなづけます。
 2番、3番、4番目は全体を通して、豊年満作、景色を愛でる内容となっています。この部分についても、チョンダラー・ニンブチャー達が念願した祝福の言葉と考えられなくもありません。
 踊りは素手で踊り、小道具は飾りふさと鈴の付いたチーグーシを持ちます。衣装は、白のシャツ、ズボンに読谷山花織のウッチャキを着け、白黒脚半を巻き、頭には手ぬぐいを結びます。
「万歳口説ベーシ」は、ムラアシビの舞台に初めて立つ年少の若者が踊る舞踊でした。
文・歴史民俗資料館         長浜 眞勇

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