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2007年4月発行 広報よみたん / 13頁

読谷の民俗芸能 25 舞踊(9-1)長者の大主(字波平)

読谷の民俗芸能 25 舞踊(9-1)長者の大主(字波平)
 
地域のムラアシビの舞台で必ずといってよいほどプログラムにある演目が、かぎやで風、長者の大主であります。村の安ねい、子孫繁栄を願う重要な内容を含んでいます。形態も様々ありますが、今回は字波平の「長者の大主」をご紹介します。
 字波平の長者の大主は、今から二七〇年程前に首里から伝わったといわれます。「長者の大主・嘉利吉ハーメー」と称しているように、長者の大主の妻であるハーメーが登場するところに大きな特徴があります。
 全体的な構成は次のとおりです。
① まず長者の大主が孫たちを連れて登場。
② 全員正面に向かい大主の口上がある。
「この村、はお年寄りも若者もなんの災いの声を聞かないことは、この村の風水のよい証である。作物も豊年満作で、平和な日々が巡り巡っている」という内容である。
③ 口上の後、孫たちの扇子舞がある。曲はかぎやで風節であるが通常のかぎやで風とは異なる踊りである。
④ 大主と孫たちが退場し、嘉利吉ハーメーが登場する。大主と同じように、私も孫たちに踊りをさせたい、とマジルーとウトゥを呼び出す。
⑤ マジルーとウトゥは、越来節、早作田節を踊り、「わったーはーめー、嘉利吉ハーメー(私達のおばあさんは福を招くおばあさんよ)」とはやしながら退場。
⑥ 嘉利吉ハーメーは「今日ん嘉利吉、明日ん嘉利吉、来年んくぬぐとぅ遊ばな遊ばな(今日もめでたい。明日もめでたい。来年もこのように踊ろう踊ろう。)といいながら退場。
 
大主の口上は厳粛な雰囲気をかもしだし、ハーメーとマジルー・ウトゥーのやりとりで、マジルー・ウトゥーが同意であることを示す「左に体をひねる」動作は、愛くるしい妙味があります。ハーメーが退場した後、背景幕からいきなり2、3度顔を出すアドリブは観客の笑いを誘い、見どころ満載です。衣装、持ち物など地方色豊かで、ムラアシビの初めを飾るにふさわしい演目であります。
 文・沖縄藝能史研究会会員         長浜 眞勇

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