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2007年5月発行 広報よみたん / 17頁

読谷の民俗芸能 26 舞踊(9-2)字喜名の長者の大主

読谷の民俗芸能 26 舞踊(9-2)字喜名の長者の大主

 字喜名の長者の大主がいつ頃から演じられたかはっきりしていません。字喜名でもムラアシビでは常に最初に演じられました。
 大主の口上に「百年になたる」「子孫ぬ達引ち連りてぃ」とあるように長寿、子孫繁栄が根底となっています。また、口説囃子で孝の道をとくとく説いているあたりは村内の他の長者の大主では例を見ません。目上の人を大切にする思想が色濃く反映されているといえます。
口説の歌詞は次のとおりです。

○サササ サッサ サササ サッサ(ハヤシ次男)
親に孝行忘れるな 神や仏も
お見守りて 孝の積りて宝なり

○サササ サッサ サササ サッサ(ハヤシ三男)
親に孝行忘れるな 人のお科や凌ぐとも
天のお科や 凌がれぬ  全体的な構成は、長者の大主の口上と、子・孫たちの踊りの二部構成となっており、長者の大主の口上、長男の舞踊「かぎやで風」、次男・三男の口説囃子、四男のカチャーシー、孫達の舞踊「かぎやで風」という組み立てです。
 特徴を上げるとまず、舞踊「かぎやで風」が二回踊られていることです。地方の長者の大主における舞踊「かぎやで風」は、若衆(孫達)が踊るのが一般的であることを考えますと、長男が「かぎやで風」を踊ることは特殊でしょう。一方、孫達の舞踊「かぎやで風」の歌詞は鶴亀節の踊りに使用される歌詞です。舞踊「かぎやで風」を二回演じるための歌詞のみの採用であるのか、あるいは、鶴亀節の踊りがかつて踊られていたのか興味深いです。
 二つ目はカチャーシーが踊られることです。舞台にふくらみを出すための工夫ではないかと思われます。この場面もあまり見られない設定です。
 演技は拍子木の音で始まります。こてい節の手事(ティグト・曲のみの演奏のこと)で長者の大主が杖をつき、右手にクバオージを持って下手奥より登場し、左袖を長男、右袖を次男が持ちます。三人の後に三男、四男、孫達の順序で手拍子を打ちながら続きます。

 長者の大主を見ると、後輩は先輩を敬慕し、先輩は後輩を慈しみ育む世代の結びつきによって、家族も社会も成り立っていることを感じます。
 文・沖縄藝能史研究会会員         長浜 眞勇

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