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2007年9月発行 広報よみたん / 13頁

読谷の民俗芸能30 舞踊(12) 前の浜

読谷の民俗芸能30 舞踊(12) 

前の浜
ムラアシビで演じられた多くの演目は、各字ほとんど同じです。それぞれの演目で各字違いが見られるのは、およそ次のような背景があると考えます。
 まず、戦前までの話ですが、踊りや芝居に長けた人を2、3人首里や那覇の芝居小屋に送り出して覚えて持ち帰るパターン、また、廃藩置県後に御冠船踊りの役者や明治期の芝居役者達が各地に下ていって指導する場合などがありました。戦後も昭和20年初め頃までは、劇団の役者達が盛んに指導しています。
 前月ご紹介した「こてい節」の踊りで微妙に違いがあると説明したのもこれらの理由があるのです。現在の舞踊界の状況でみれば流派の振りの違いも地域に影響を与えたと言えるでしょう。
 「前の浜」は、前の浜節、坂原口説、与那原節の3曲を使用しますが、元は別々に踊られていたのをひとつにまとめたもので、前の浜節は組踊「辺土の大主」で踊られたものを独立させたものといわれています。そして、前の浜節、坂原口説の二曲で踊るようになって、与那原節はその後で付け足したそうです。ちなみに、字渡具知の「与那原サカワイ」という演目は大変興味が湧きます。歌詞についても前の浜節、坂原口説は五・七調、与那原節は八・六調になっています。現在三曲の曲順に出入り(相違)があるのも以上のようなことがあるのでしょう。字宇座、字波平などでは前の浜節、坂原口説、与那原節の順序で踊りますが、字楚辺では、与那原節、前の浜節、坂原口説の順序で踊っていました。
昔は渡地の前の浜から対岸の垣花まで渡し船があったようですが、そのあたりの風景を舞踊化したのが「前の浜」です。「前の浜」は二才踊りの代表格で、道具を持たない手踊りで、空手の要素を取り入れ、こぶしを握ったりキビキビと踊ります。また、船をこぐ様子など写実的な動作が多いのも特徴です。
 読谷村では字渡具知、喜名、波平、楚辺、座喜味、宇座、渡慶次、長浜などに伝承されています。

前の浜(字渡具知)

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